15.わたしドラゴン。しょうらいのゆめはおかしやさん!
移動して現在名も無き森の中。
いや、生まれ育った森じゃないよ?
流石にそんなブーメラン出戻りする程図太くない。
私が今いるのは森から出た直後に見つけた道を反対側に辿り、そこからちょっと外れたところで見つけた小さな森だ。
何故町に降りると決めたのに森にいるのかって?
だって私服無いし。
私服無いとかそういうレベルじゃなくてマジで着られる服が無い。
思い返してみてほしい。
前に人化した時、私はマッパだった。
漫画とかでたまに見る、龍が人に化けるとなんか知らんけど服を着てるとかそういうのはなかった。
まさか花も恥じらう乙女たる私がマッパで人前に出るわけにもいくまい。
誰だ花も鼻で笑うとか言った奴。
串刺しにしてやるからちょっとこっち来い。
冗談は置いといて、服が必要なら追い剥ぎすればよくね? ってなったわけである。
この世界にはどうやら定番通りに冒険者がいるらしいし、それならそういう人達から服を奪った方が手っ取り早いからね。
こういう考えが自然に出るあたり、私だいぶ人間やめちゃってるな。
別にいいんだけど。
こうして森の中にいれば魔物的な何かを倒すために向こうから来てくれるだろうしね。
引き篭ってると物を届けてくれるとか、それなんて通信販売。
丁度森の中だしひょっとしてゾンアマでも来るんじゃなかろうか。
印鑑でも作ろうかしら。
暇だし作っちゃお。
とても無駄な事をやろうと人化して適度な太さの枝を探す。
しっかし右手ないって人化してるとホント不便だよね。
龍の時なら翼腕が腕の代わりになるし特に困らないんだけど。
あ、ちなみに空間魔法による座標指定はまだ継続しております。
三日坊主の私がよく続けられてるもんだよ。
あ、これ良さそう。
あとはこれを折って長さをいい感じにしてと。
まだ印鑑って言うには長いけど持ちやすさ重視ね。
彫ったらまた折ればいいし。
さて、彫る道具がない。
てってれーん、そういう時に翼爪さんの出番ですよ。
右の翼腕だけ龍に戻せば、ほら、道具準備完了ー。
こんな事に使われる爪可哀想…やってるの私だけどな!
さて、なんて彫ろう。
私名前無いからなー。
謎男は付けてやろうかとか言ってたけど、よく知らんやつに名前付けられるのとか嫌すぎる。
しかも名前の必要性が感じられないというね。
野生に生きる身としては名無しでも十分。
ま、適当に黒とでも彫るか。
私黒いし。
龍でいいかなとも思ったけど、画数多いから私みたいな印鑑初心者には厳し過ぎる。
いや印鑑初心者ってなんやねん。
で、それから数分後。
できたー!
文字が浮き出るようなのは流石に難しいので、文字の形に削った物だ。
にしても指先で削るって道具使うより普通に楽だわ。
思い返すは中学時代。
美術の時間に柔らかい石に名前を彫ろうって授業があった。
あの時の作品たるや散々なもの過ぎて泣けてくる。
ああいう時の先生のちょっとよく分からない気遣いって結構響く。
それがどうよ!この出来栄え!
木に直接彫ってるのがいい味出してると思うんですが!
ま、どう控えめに見ても印鑑ってサイズじゃないんだけど。
どちらかと言えばハンコ。
しかも賞状とかに押してあるような大きめのやつ。
しかしそれはあくまで見た目の話。
印鑑ってのは使った時の綺麗さが大事だと思うんですよ、私は。
んで、朱肉の代わりになるようなもの……血?
いやなにそれ怖すぎる。
ああなるほど!
朱い肉で血肉ってか!
やかましいわ。
動物見つければできるけど、血で押された印とかどう考えても呪いの類いになりそうだからやめておこう。
この世界魔法とかあるしマジで呪いありそうだよね。
そうなると……やっぱり木の実かなあ。
一瞬ラピスラズリとか思ったけどどうやればいいねんって話。
そもそも見つかるのか?
某箱庭ゲーなら洞窟探索すれば結構な量取れるけど。
実はラピスラズリって現実でも染料に使われた事もあったんだぜ?
これ豆な。
じゃあ適当な実でも探しますか。
ハンコなんだし赤いのがあればいいなー。
木いちご的な。
できれば食べられそうなやつがいい。
故郷の森にはその手の実があったりしたんだよね。
結構美味しかった。
んで、歩き回って探してる訳だけどこの辺には無さそう。
ちょっと移動してみるか。
ついでに人の体を慣らしておこう。
しばらく龍の体でいたせいでちょっと不安だ。
人間、足を怪我すると治っても怪我してる時の歩き方が染み付いたりするからね。
私人間じゃないけど。
飛んだり跳ねたり、たまに手頃な木に登ったり。
こうしてて思ったけどこの体、結構身体能力高いな。
いや流石に龍の時よりは落ちるんだけど。
前軽く検証して力弱すぎってなったけど、前世の私と比べたらかなり軽快だ。
まあ私引き篭りだったからな!
100メートル何秒とかじゃなくて30メートル走ったあたりで息切れするレベルの引き篭もり。
立ち幅跳びとか何センチだったかな…メートルは確実に行ってない。
それに比べ、今の私はクラスで一番運動神経のいい男子と同じかそれ以上って感じ。
龍玉食べた事も関係して前よりも若干身体能力が上がってるのかもね。
ちなみにどことは言わないけど跳ねても揺れない。
あ、木の実発見。
うんうん、赤いね。
早速何個か摘み取って、同じく毟った木の葉の上に乗せる。
さて、なんか平たい石でもあるかな…無さそうだね。まあいいや。
適当な小石で拾ってすり潰そう。
葉っぱに穴を開けないように慎重に。
うーん、ちょっと水っぽいかな。
もうちょい粘り気があった方がいい気がするけど……ひとまず結果を見るか。
印鑑のさきっぽを押し付け、押すものがなかったので手の甲に押してみる。
丁度白いし。
で、出来栄えは…ドキドキワクワク。
あ……?
しくった!
文字が! 逆!
oh......なんてこったい。
そうだわな。
印鑑だもんな。
鏡文字で彫らないとダメじゃん。
あ〜やらかした〜。
別に使わないんだからそこまで拘らなくてもよくない?、ってのはわかる。
ただなんかこう、単純にミスったってのがね。
結構響く。
まあいいや。
燃やしちゃおう。
ポイッと宙に放り投げ、火魔法で着火。
一瞬で消し炭にしてやった。
汚物は消毒だァ〜!
どちらかと言うと汚点である。
まそれはほっといて。
今はこの木いちご的な木の実の方が気になる。
木いちごって確かラズベリーだよね。
ブルーベリーとかいちごとかあるならベリージャムにするのとか良さそう。
あ、ベリーのタルトとか食べたい。
それはまた今後の課題かなぁ。
少なくとも今そんなことしてる余裕はない。
で、味の方はと……うむ、美味い! 甘い!
この体は肉食べてればなんの問題もない、完全な肉食獣の体だけど、やっぱり中身はJKですし。
JKですし。
大事な事なので((ry。
やっぱり甘いもの食べないとやってけないよねー
そういう意味ではケーキとか食べたい。
あと私、結構プリンとか好きである。
プッチンするあれも、少しお高いやつもどっちも好き。
いいよね、プリン。
尚今は食べられない模様。
はあ……まあ作り方はなんとなく知ってるんだけどさぁ。
まず材料無いし。
てか作ったことないし。
簡単って聞いたことはあるから教わればいけると思うんだよなあ。
しかし現在、人類の敵まっしぐらコースである。
いいし。
全部終わったら森の奥で勝手にスイーツ作りまくってやるわ。
材料?
我龍ぞ?
人類の敵たる龍ぞ?
まあ言わなくてもわかるよね。
さって、木いちごは思う存分堪能したし、そろそろ狩りでも行くか。
生ってるのはほとんど食い尽くしたけど気にしない気にしない。
時間は、うん、夕飯には丁度いい頃合かな。
人化を解いて本来の龍の姿に戻る。
はー、やっぱりこっちの方がいいわー。
私なんだかんだ言って龍だからね。
人化してると肩が凝る。
おかしい。
大したものぶら下げてないのに。
そういえば狩りをするって言っても、この森何がいるんだろ。
今の今まで特に野生動物は見てないな。
それなりに大きいのがいればいいんだけど。
地球にいたのと同じような狐とか狸程度じゃ、何匹捕まえればいいのかわからん。
ひとまず翼を広げ、羽ばたいて空に飛ぶ。
何をするにしても高いところから見た方がいいってもんよ。
そのまま獲物を探してぐるぐる回ってたら、なんかカラスが近づいてきた。
おやつ代わりにパクリ。
うん。
全然腹にたまんね。
やっぱ鳥じゃダメかー。
人化して食べればわんちゃん、とか思ったけどめんどくさいからいいや。
やっぱり鹿とか熊サイズじゃないとなー。
と思いつつ眼下を見渡していること数分。
なんか動物見っけた。
えと、あれは山羊……?
うん、ちょっと待って。
山羊ってなんだっけ。
そう疑いたくなるくらいあれは私の知ってる山羊から外れている。
だってさ、私が知ってる山羊って頭2個無いんだよ。
なんだ双頭の山羊って。
化け物か?
化け物なんだろうなぁ……。
あれでしょ?
いわゆる魔物とかモンスターって呼ばれるやつ。
まあそれ以外は大きさくらいしか違わないんだけどさ……包み隠さず言うならキモい、てか怖い。
想像してみ?
牛みたいなサイズの双頭山羊ってどうよ?
そしてまたその頭が凶悪そうな表情してる。
あれは山羊界のヤッさん。
いや待て、冷静に考えよう。
山羊肉って確か人間も食べるよね?
私は食べたことないけど、どっかの外国じゃ食べるらしい。
ふむ、なるほど。
食うか。
そうと決まれば早速捕獲。
一頭しかいないけど、今夜くらいなら十分。
さあ、大人しく食われろ!
そう決めて急降下。
一瞬で地上5メートルくらいの高さまで降り、地面に衝突しないように翼を広げる。
いつもならその勢いのままやるけど、もしかしたら山羊強いかもしれないし様子見しよう。
見た感じまんま山羊だけど、念の為ね。
熊より鹿が強かったりする世界だし。
「メェェェェェ!」
こっちに気づいた山羊が鳴いて威嚇してきた。
まあこの距離で気づかないようじゃ草食動物失格だわなー。
とりあえず闇魔法の槍発射。
これを避けられたら大体鹿と同じかそれ以上って感じだけど……。
「ヴェェェ…」
あー、うん。
なんかごめん。
魔法使う必要なかったわ。
山羊は山羊。
君は今は懐かしい普通の草食動物だったんだね。
イノシシとか鹿とか無駄に強いから警戒しちゃったわ。
いや見た目普通じゃないけど。
そこでバランス取ってんの?
あの森にいたのって見た目は普通だったからね。
見た目厳ついやつほど弱い法則。
そしたら私雑魚中の雑魚やんけ。
ないな。
まーアホな考えは置いといてさっさと食べよう。
今回は別に捌かなくてもいいや。
という訳で頂こう。
ふう、ごちそうさまでした。
味?
なんかこう、大味。
別に不味くもないんだけどね。
私だから食べてるけど、普通の人間なら食わんでもいいんじゃない?
まあ分からないけどね。
焼いたら美味しいかもしれないし。
ま、食事も摂ったし寝るかなあ。
まだちょっと早いけど、関係ない関係ない。
寝るとなったらすぐ寝られるのが私。
んじゃおやすみー。
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