14.そろそろ龍捌き職人とか名乗れそう
年老いた岩龍が死んだ。
最後に若き龍に忠告を残して。
問題はその若き龍がそれを全く聞く気がないってことね。
ちなみに私のことなんだけど。
まあね、言いたいことがわからんでもない。
よく言うじゃん?復讐は何も生まないって。
岩龍本人もそういう経験があるからこその言葉なんだろうなーってのはわかる。
ただ私、ただの自己満足でやってるんで。
誰かの為とか、何がしたいとかじゃなくて、ムカついたから殺す。
残念ながらそんな理由なんすわ。
殺してスッキリ、あとは普段通りの生活へ〜ってやるつもりだから何もかも失ったように、とはならない。
そもそもこれだけ緩く復讐しようなんて言ってるのに遂げたら燃え尽きるってのはちょっと想像つかない。
ま、色々言ったけどやめる気はないってことで。
さて、それはいいとしてさっさと岩龍の龍玉をほじくり出そう。
風龍の時と同じ位置にあればいいんだけど、これが奥の方にあったら話は変わってくる。
だって見てこれ。
こいつ木生えてるもん。
これ倒さないように解体なんて無理。
脇腹だったら、まあ何とか頑張ればできないことはないかな?って感じだけど、中心とかにあったらまず不可能。
そうなったら木伐採するのもやむ無しかなー。
多分龍を養分にしてるからだと思うけど、この木意味わからないくらい一瞬で生長したからそれも結構大変なんだけど。
まあいざとなっら焼き払えばいいから大丈夫か。
魔法って便利。
さー、じゃあ捌きますか。
じゃあまずこの見るからに硬そうな外殻から。
やっぱり岩だよね。
死んでから更に岩っぽさが増してる。
ひとまず翼腕パンチ。
いったぁ!?
思いっきり殴ってみたら、絶対生き物が出しちゃ行けないでしょって金属質な音がした。
しかも痛い。
とんでもなく痛い。
これ岩に見えるなにかだわ。
うーん、力だけで割るのは無理くさい。
ヒビ一つ入ってないし。
そうなると……道具とか?
ピック的な何かでぶっ叩けばわんちゃん?
じゃあ尖ったものか…闇魔法の槍とか。
てな訳で早速構築、しようとしたんだけど、なんかいつもより構築が遅い。
むむ? なんだこれ?
なんか構築した所から崩されてくみたいな……ええい、邪魔がなんだ! そんなもの、構築力で押し出してやる!
ゴリ押し! 完成! 発射ァ!
そんな感じに無理矢理撃った魔法だけど、私が魔力を流し込むのをやめた途端急に崩れ始めて、岩龍までの僅かな間だけで小石くらいのサイズになった。
そりゃあそんな小石ぶつけた所で何の傷もつきませんでしたとも、ええ。
わっつ? いやこの場合ほわい? だわ。
いやそうじゃなくて。
魔法が崩された?
待って。
それどっかで見たような……あの、なんかかなり腹立つやつ……あ、イケオジの盾だ!
へーほーふーん。
じゃああの対魔力EX付いてそうな盾ってこれから作られてたのかな?
まあそれがわかったところでって話なんだけど。
ふむ、なるほど。
よし。
じゃあこれ、ちょっと拝借してこうかな。
これに乱されないような魔法が撃てるようになったらあの盾の防御を無視できるってことでしょ?
やったぜ。
思わぬ形で自分の魔法力を測れるアイテムをゲットした。
まあそもそもこれ割れたらの話だけどな!
物理も魔法も駄目となったら何すりゃいいんだろう。
あれ?
いや待てよ。
これと同じ硬さの物ぶつけたらどうなるんだ?
岩龍の死体、ところどころに結構大きめの突起が生えてる。
これの手頃なやつを拝借してぶっ叩くなり杭みたいにするなりすれば割れるんじゃない?
よし、そうと決まれば善は急げ、一番握りやすい太さの突起を翼腕で握る。
んで、ここに全体重をかけてへし折る。
幸い今の私結構な重さあるからね。
多分トンは行ってるんじゃないかな。
って違うから!私太ってるとかじゃないから!龍になれば誰でも体重トン超えるよやったね!
まあ今の私ちょっとしたバス並みのサイズだからなあ。
わんちゃんバスよりでかいんじゃない?
客観的に見れないからわかんないや。
その全体重プラス全力の力を合わせた負荷に耐えられず、甲高い音を立てて突起が折れた。
よしよし、丁度いいサイズ感。
いっそのこと武器になりそうなレベル。
その突起の先端を岩龍の甲殻に思いっきり振り下ろす。
ひえぇぇぇえ……ガーンって来た。
めっちゃ手痺れる。
甲殻の方はと。
うーん、傷はついてる。
けど、これで割るのはちょーっと厳しいかなー。
なら当てて思いっきりぶっ叩いてみたらどうだ?
突起の先端を脇腹の薄そうなところに当てがい、後ろに引いた翼腕で思いっきり殴りつける。
龍人空手!鮫肌〇底!私龍人じゃないけど!
当たった瞬間、岩龍の死体が浮いた。
マジで。
この見るからに重そうな岩龍が。
うっそーん。
私の力強すぎ……?
んで、それが当たった岩龍と言えば、甲殻に小さなヒビが入ってた。
お、行けそう。
あと何回か繰り返せば砕けそうだね。
よーし、こう目に見えて変化があると俄然やる気が出ると言うものよ。
ファイトー! いっぱーつ!
またゴーンと打ち込む。
それから5分かそこらくらい。
心の中で掛け声を掛けながら休まず続けてたら、ようやく突起の先端が殻を突き破った。
はー、やっとだ。
いい加減右の翼腕が痺れてきたわ。
げ、突起だいぶヒビ割れてるじゃん。
あと何回か続けてたら逆にこっちが割れてたかもね。
まあ先に殻が割れたんだから良しとしよう。
さーて、じゃあ殻剥がしますか。
うん、肉は外側程固くない。
まあそりゃそうだって話だけど。
外殻とくっついてる部分は翼爪で切り離しつつ、殻は力任せに剥がしていく。
うんうん、一部が崩れるとあとは割かし簡単に割れるね。
と言っても硬いことに代わりないんだけど。
まあ翼腕突っ込んで中漁れるくらいの穴が作れればいいから、そんなに拡げなくていいしね。
バキンバキンと金属質な音を響かせながら殻を剥がしていくと、ようやく脇腹全体の殻が剥がれた。
これくらい広ければいいか。
もし同じところになかったら?
木伐採して全身剥く。
はっはっは。良いではないか良いではないか。
相手はあーれーとか言ってくれないし、なんならくるくる回して取れるほどヤワじゃないんだよなぁ。
ちょっとめんどくさい。
まあ言ってても仕方ないしさっさと漁りますか。
見えている内側の筋肉に翼爪をたて、横一直線に切り裂く。
前も思ったけど翼腕の爪めちゃくちゃ斬れ味いいな…スパスパ切れる。
で、それを何回か繰り返して厚い筋肉の層を突破、片方の翼腕で穴を抑えつつ、もう片方の翼腕を中に突っ込んで漁る。
どこかなどこかな、ゴー〇ド。早く、早く食べたいゴール〇〜。
あ、これか?
漁ってるうちに翼腕に触れた何かを鷲掴みにし、強引に引っこ抜く。
んー、うん、これだわ。
灰色に鈍く光る龍玉。
岩龍の天玉を手に入れました。
天殻ではない。
早速食べる。
一瞬口の中に広がる土臭さ。
続いてお腹の中からじんわり温まるような力を感じた。
おー。
風龍よりは強いっぽい。
で、早速試したいんだけど…目の前に丁度いいのがあるんだよなあ。
この対魔力EXの岩龍の外殻、これの前で魔法を使うと、なんかいつもみたいにすんなり使えない。
私が本当に強くなってるのなら、その引っかかりも弱くなるはず。
その時の感覚で強くなったのかわかるって寸法よ。
私ってもしかして天才なのでは?
じゃ早速構築開始。
む? むむむ……よし、大体わかった。
魔法は危ないから殻に撃ち込んどこ。
でだ。
どのくらい強くなったのかと言えば、骨刀が鉄刀になったくらい。
こう言うと微妙だな。
まあ簡単に言えば強くなったけど、別に超強化って程ではないよって感じ。
ふーむ…この岩龍って700年くらい生きたんだっけ?
今生きてる龍が1000年も生きてないって事はこれでも結構長生きした方って事だ。
それで上がり幅がこれだけか。
これじゃあのイケオジに勝てるようになるまでどのくらいかかるんだろ?
10年20年単位な気がするぞ。
実際の所私自体既に限界まで育ってて、今やってるのは限界突破の裏技みたいな感じらしいけど、それにしたって上がり幅が小さい。
まあ悩んでたって仕方ないか。
現状これしか方法が無いわけだし。
それにただ長生きしてる龍程力の上がり幅が大きいとは限らないしね。
大事なのは経験値よ、経験値。
穏やかに一生を終えた龍よりも波乱万丈な一生を過ごしてる龍の方が経験値高そうだし。
そういうことにしておこう。
さーて、じゃあ次の龍を探しますか。
と思ったけど、そういえば岩龍に他の龍の場所聞くの忘れてた。
失敗したー。
さて、どうするかな。
1、闇雲に飛び回って探す。
却下。
効率悪いし、そもそもいかにここが親龍王国とかいう龍が多い国だとしてもそうそう龍がいるとは思えない。
もし雑魚モンスター並にスポーンしてたら人類とっくに滅びてる。
魔力探知で頑張るって手もあるけど、実際あれってそこまで使い勝手良くないんだよね。
私が未熟なせいもあると思うんだけど、範囲が広いって訳でもない。
せいぜい2、3キロ先がわかるくらい。
それを頼りにするんじゃあねー。
どの辺にいるのかが分かれば別だけど、どこにいるのか分からないのを探すのは辛い。
2、知ってそうな人に聞く。
帝国、だっけ?
あっちでひと暴れした時、冒険者らしき集団は私を待ち構えていた。
その事から考えると、恐らくこの世界の人間はどこかしらに監視網を張っている。
森を出た時の監視塔とかまさにそれだったんじゃないかな。
その事から考えると、人類を余裕で滅ぼせる龍の居場所くらい把握しててもおかしくはない。
せっかく人化できるわけだし、それなら自分で探すよりも既に情報を持ってる人に聞いた方が早いんじゃないかって寸法。
うん、2だな。
1はもう却下って言ってるし。
3?
私の頭じゃ思いつかないから却下。
よし、そうと決まれば早速町へ下りよう。
前見つけた道を辿ってけばどっかには着くでしょう。
じゃあ目指すところはひとつ。
どこかの森へ行こう。
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