12.それが私の覚悟

 おはようございます。

 あースッキリした。

 寝て起きたら沈んでた気分も復活。

 なんか嫌なことあったら寝ればいいんだよ。

 不貞寝最高。


 よーし、今日も元気に復讐していこう!

 まだ準備段階だけどね!


 とりあえず獲物確保してこようか。

 朝はしっかり食べないとやっていけない。

 昼とか晩はたまに抜くけどね。


 何故かって?

 朝抜くと太るって言うでしょ?

 気にしてないけど。


 まあ気分というかなんというか、何となくだ。

 朝ごはん抜いた日はなんか頭が働かないんだよねー。

 それは前世から変わらなかった。

 そんな訳で朝はきっちり食べる。


 飛んでイノシシを発見したので奇襲。

 もぐもぐ。

 からの骨髄も食べる。

 美ー味ー。


 ふと思った。

 お肉に骨髄かけて食べたら美味しいかな?

 今度やってみよう。


 人の食への探究は留まるところを知らないのだよ!

 私龍だけどな!


 さて、変な事言ってないで行きますか。

 地面を蹴り、翼を広げて羽ばたく。

 空飛ぶのも退屈なんだよなー。


 想像して欲しい。

 ひたすら目的地に向かって歩くのは楽しいだろうか?

 しかもあたりは森、森、森。

 これが街中だったらなにか変化があるかもしれないけど、何も無いからね。


 飛んでるとはいえそれは変わらない。

 むしろ広い範囲が見える分景色の変化が無くて退屈と言える。


 ま、森の上を飛ぶのももう終わりなんだけどね。

 下を見下ろせばそこはもう平原だ。

 今まで鬱蒼と茂る木に覆われていた大地が、次は背の低い雑草に覆われている。



 この森ともお別れかな。

 空中で留まったまま振り返って森を見る。

 ここからでも巣穴にしてた崖は見えるね。


 私、もしかしたらもう帰ってこないかもしれないんだよね。

 龍玉を取りに行って、それに失敗して他の龍に殺されたら終わり。

 生まれ育った森とは遠い土地で復讐も何もできないまま食べられるか、腐って土に還るか。


 震えそうだ。

 不安はある。

 躊躇いもある。

 ちょっとだけ怖い。


 でも、それ以上の怒りがある。

 憎しみがある。


 それで十分。

 私がこの森を出て同族である龍を殺し、お母さんの復讐をするには、それがあれば十分。

 そして、私は復讐をやり遂げる。

 途中で潰えたりはしない。

 お母さんが死ぬ原因を作ったやつは、誰であろうと皆殺しにする。

 運命がそう決めたというのなら神でさえ殺す。

 それだけの覚悟を持とう。


 そして全て終わったらまたこの森で暮らすのだ。

 お母さんと過ごした森。

 私が歩いた森。

 森は我が家。

 帰るべき場所。


 我が家に無事に帰ってこよう。

 帰りを待つ人は土の下で眠っているけど、それなら胸を張って話せるようにしよう。


 こんな事があったよ。

 こんなに強くなったよ。

 全部あなたのおかげです。


 それで最後にちゃんと言おう。

 私の秘密。

 中身は違う世界の人間関係だってこと。


 3年という短い期間しか一緒にいられなかったけど、お母さんは偉大な龍だった。

 そんなお母さんの娘だと胸を張って言えるようになろう。


 じゃあ行ってきます、お母さん。

 絶対に帰ってくるから。


 決意を新たに、今度こそ森から出る。

 あんまりいても名残惜しくなるだけだからね。

 結局出ないといけないならさっさと出た方がいいってもんでしょ。


 さー、目指すは北東。

 岩龍の元へ。

 ゆくゆくはイケおじとその先へ。


 道は長い。

 数年?

 数十年?

 あ、数十年も経ったら多分イケおじ寿命で死ぬわ。


 つまり私はあと数年のうちに、全く歯の立たなかったイケおじを打倒するレベルまで至らないといけないわけだ。

 マトモな方法なら、まあ無理だね。

 マトモな方法なら。


 私がやるのはマトモじゃない方法だ。

 同族を殺してその魔力を奪うなんて正気の沙汰じゃない。

 普通ならまずしないだろう。


 けど私は普通じゃない。

 そもそも何年かかるか分からない復讐を考えるやつが普通なはずがない。

 だから私はそのマトモじゃない方法を選べる。

 選んでしまえる。

 業の深すぎる道だ。


 人を殺す為に同族を殺す私にはどんな最期が待ってるんだろうね。

 バッドエンドはやめて欲しいもんだけど。

 ハッピーエンドがいいなー。


 親を殺された龍は復讐を果たし、生まれ育った森で穏やかに生活しました。


 うん、それがいい。

 私以外がハッピーじゃない辺りやっぱり業深すぎじゃね?


 あ、しまった!

 これフラグ臭い!


 あ〜。

 まあいいか。

 もうなんか絶対碌なことになる気がしないもん。

 復讐に走った物語って大概とんでもないエンドが待ってるもん。

 もうどうにでもな〜れ〜。


 ま、やめやめ。

 しんみりするとか私らしくもない。

 いつも通りお気楽に肩肘張らずにやっていこうや。


 よっし、じゃあ方角北東!

 まだ見ぬ岩龍へ!


 翼を力強く羽ばたかせ、加速する。

 しんみりした気分はここの置いていこう。

 また帰ってきた時存分にしんみりすればいいんだよ。

 どうせお母さんの墓参りするんだから。


 それじゃ、いってきまーす。

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