ホシグライ2

 ホシグライという生物の始まりは、成体の姿から観察した方が良いだろう。

 宇宙空間を飛ぶ、一体の成体がいる。体長一千百十八メートル。ホシグライとしてはやや小振りな身体だ。表皮に目立った傷はなく、筋肉の発達もホシグライとしてはそこそこ程度。

 成体には違いないが、かなり若い個体だ。独り立ちして間もない年頃である。

 彼女をキユリと呼ぶ事にしよう。


【――――ピ、ッキャアアアアアッ!】


 キユリは宇宙空間を飛びながら、はしゃぐような大声を出す。正確には全身から放射された電磁波だが、それがホシグライにとっては声のようなものだ。

 そして事実、彼女は大はしゃぎしている。

 ホシグライの頭部には大きな脳がある。長い時間を掛けて少しずつ進化・発展させてきた中枢神経は、今では更なる肥大化を遂げていた。何しろホシグライの身体には呼吸器も骨もない。『頭』の中にある脳の肥大化を妨げる要素はなく、自由に広げる事が可能だ。更に骨格血管の存在により、本来軟組織である脳の巨大化に成功出来た。

 これらの形質は、進化の中で偶然に得たもの。役立つ仕組みが揃った事で、ホシグライは巨大な頭脳を会得出来たのだ。とても大きくなった脳は、今やヒトを上回る知性を持つ。感情もとても豊かだ。

 だから新しい餌場――――星系が近付けば、期待感からはしゃぎもする。

 キユリは遥か十光年彼方にある、一つの恒星系に狙いを定めた。尾の付け根にある噴射口から亜光速まで加速した粒子を放出し、その反作用により推進力を得る。祖先種ホシホロボシの時と同じ方法だが、その出力は過去の比ではない。キユリの身体はどんどん加速していく。

 得られる加速度は三十六キロメートル毎秒。

 抵抗がない宇宙空間と言っても、これほどの加速を得るには莫大なエネルギーが必要だ。このエネルギーを何処で得たのか? それは後ほど語るとしよう。

 ともあれ三十六キロ毎秒で加速していく身体は、一千秒も経てば秒速三万六千キロまで到達。ここまで加速したら亜光速粒子ジェットを止め、慣性飛行へと移行する。光速の十パーセント以上の速さであり、十光年彼方の星系に辿り着くのに百年と掛からない。無論百年という時間は、ヒトから見れば生涯にも匹敵する年月であるが……大昔の祖先であるスターイーターから脈々と引き継いだ不老不死の特性故に、彼女達からすれば些末な時間に過ぎない。

 やがて(勿論この間に百年ほどの時間が経っている)キユリは星系内へと侵入。星系の領域――――恒星から一・六光年離れた位置にある、無数の小惑星が浮かぶ領域へと入った。

 大きさ数メートル以上の小惑星が何億個もあれば、当然幾つかは行く手を阻む。秒速三万六千キロで飛ぶという事は、これら小惑星が秒速三万六千キロで迫るのと同義。ヒトに限らず大抵の生命体には認識すら出来ない速さだが、ホシグライであれば問題なく視認可能だ。彼女達は宇宙空間という環境に適応した結果、優れた動体視力を会得したのである。

 更に視力自体も優れ、数億キロ彼方の小惑星さえも識別可能だ。動体視力と視力の高さが合わされば、秒速三万キロ程度の速さに対応する事など造作もない。

 ……そう。認識は決して不可能ではなく、ましてや大変でもない。

 しかしキユリは、小惑星などの影に隠れるような素振りすら見せない。それどころか小惑星など見えていないかのように突き進んだ。当然行く手にある小惑星が自発的に躱してくれる事はなく、次々とキユリに激突する。

 大きさ数百メートルもの小惑星と秒速三万キロ以上で衝突すれば、その衝撃は凄まじいという表現さえも生温い。小惑星と激突したのが生命に溢れる惑星であれば、衝撃波と粉塵による気候変動で、大多数の生命体が絶滅するだろう。或いは、生命が一掃される可能性すらもあり得る。

 正に破滅的な一撃。だが小惑星がぶつかってもキユリは表情一つ変えない。それが痩せ我慢でない事は、激突した小惑星は粉微塵となったのに、彼女の身体は傷一つ付いていない事からも明らかだ。


【ピーキャッキャー♪ ピキャキャー♪】


 それどころか『鼻歌』まで歌い出す。文明を持たないホシグライに『歌』の概念はなく、ヒトで例えれば齢二歳ぐらいの幼体がきゃーきゃー騒ぐようなものであるが、生存上無意味な電磁波という意味では歌と呼んで良いだろう。

 一千百メートルを超える巨体が放つ電磁波は、最早兵器が如く出力。指向性のない、全く集束していないものだというのに、半径五百メートル以内で受ければヒト文明が用いる機械など一瞬で壊れるほどだ。ここまで高出力だと並の生命体にとっても有害な水準である。当然ここまで強力だと、ある程度の観測技術があれば捉える事は造作もない。

 更に衝突した小惑星も、彼女の存在を示す。秒速三万六千キロで激突すれば、ただの小惑星などその衝撃及び熱量(運動エネルギーの一部が変化したもの)によって盛大に吹き飛ぶ。小惑星の大きさ次第だが、数百メートルもあれば数億トンの質量がある。この莫大な量の粉塵や気体がばら撒かれれば、遥か数兆キロからでも観測は比較的容易だ。

 しかもキユリは今、時折亜光速粒子ジェットを噴射して推進力を得ている。度重なる小惑星との衝突により、急減速しているからだ。最高速度を維持するためとばかりに何度も何度もジェットを出す。無造作に放たれるジェットは周辺の小惑星を焼き払い、大量の粉塵を生み出す。仮に小惑星が気化せずとも、熱は赤外線など電磁波の形で辺りに放射され、強い存在感を示す。

 要するにキユリの行動は、隠密性が全くないという事だ。おまけに星系の中心部である恒星から僅か一・六光年という至近距離での出来事。ヒト文明程度の観測能力があれば、文明の本拠地である惑星からキユリが残した殆どの情報が観測出来るだろう。

 祖先であるホシホロボシが極めて慎重に星系内に侵入していたのとは対照的だ。どうしてこのような違いがあるのか、その理由は単純明快。

 気にする必要がないぐらい、ホシグライは強いのだ。


【ピキ?】


 傍若無人ぶりを発揮しながら進んでいたキユリは、ふと気付く。小惑星の陰に潜んでいた『何か』が、自分をじっと観察していると。しかも視線の数は一つではなく何百も、おまけにあちこちから向けられていた。

 とはいえ祖先種ホシホロボシと違い、ホシグライは見られている事自体にどうこう思うような種ではない。そのため視線を無視していたキユリだったが、彼女が更に星系の奥に向けて進むと、その『何か』が彼女に向けて物体を撃ち出す。

 放たれたものは長さ十メートルほどの、細長い筒状をした物体。

 キユリはその物体がなんであるかを知らない。中に液体燃料を詰め込み、衝突時の刺激またはセンサーにより『爆発』を起こして対象を攻撃する……ミサイルであるなど、文明など持たない立場であるが故に知識などないのだから。

 この星系には知的生命体がいたのだ。しかもその文明は星系外縁部に広がる小惑星帯、『雲』に無数の人工衛星を配置出来るほど発展している。ヒト文明を遥かに凌駕する、極めて高度な星間文明だ。

 人工衛星が発射したミサイルに搭載している爆薬も、内気式純粋水爆と呼ばれる極めて高度な技術の産物。莫大な熱を生み出す水爆などの核兵器は、空気がない宇宙空間ではあまり効果を発揮しない。このため爆風となる『大気』を詰め込み、内部で起こした水素の核融合反応の熱量で大気を吹き飛ばして対象を破壊する……という兵器だ。上手く起動すればヒト文明の一部、例えば日本という国の国土の半分ほど吹き飛ばす威力の爆発を起こす。

 直撃すれば、ヒト文明が持つどんな防壁も跡形もなく消え去るだろう。しかし若いキユリは経験が乏しく、ミサイル等というものを見た事がない。これが攻撃だという認識すら抱いていなかった。またキユリは秒速三万六千キロで飛翔しており、ミサイルの飛翔速度の秒速三千キロより遥かに速いが……前にいる人工衛星が放ったものなら、速度差など関係ない。キユリが避けない限りミサイルは直撃し、そして小惑星すら除けないキユリが高々十メートルの物体を躱す訳もない。

 ミサイルはキユリの顔面に直撃。巨大な爆発を起こす。

 宇宙空間で炸裂した大爆発、それと共に撒き散らされた熱風により、周辺に浮かぶ小惑星が数百と蒸発。そこまでの熱量を受けなかったものも、爆風の威力で粉微塵に吹き飛ぶ。ミサイルはなんの問題もなく起動し、文明が期待する通りの威力を発揮した。

 惑星にすら大きな傷跡を残す一撃だ。生半可な存在であれば、跡形も残らない。

 ――――だが。


【ピィィキキキャキャキャキャーッ!】


 爆風から出てきたキユリは、傷一つ負っていなかった。

 また彼女は極めて上機嫌だった。さながらヒトの幼体が、特撮番組に出てくる爆発シーンを楽しむような、他人事のようなはしゃぎ方である。危うく傷付くところだった、とはキユリ自身思ってもいない。

 彼女は惑星文明に致命的な打撃を与える攻撃を、難なく絶えきってみせたのだ。

 これを可能とするのが、キユリの体表面の細胞、ではない。ホシグライの表皮細胞は確かに特別なもので、それなりには頑強だ。しかし直径数キロの小惑星を跡形もなく吹き飛ばすほどの威力を無効化出来るほど、出鱈目な硬さを持っている訳ではない。

 この桁違いの防御性能を生んでいるのは、皮膚直下にある『電磁シールド』である。

 ホシグライの皮膚細胞には多くの鉄が含まれている。生体内で生み出された電気はこの鉄を電線代わりにし、体表面を循環。電気が流れると周辺には電磁波が生じるが、この電磁波は皮膚細胞表面の『鏡面膜』により反射され、ほぼ減衰なく細胞同士の間に蓄積する。無尽蔵に蓄積した電磁波は通常の宇宙空間であればあり得ない高密度に達し、生み出す放射圧(電磁波が物体に当たった際に与える圧力)の強さはほど。

 これが彼女達ホシグライの纏う電磁シールドの仕組みだ。表皮細胞が纏う鏡面膜は放射圧の影響を受けない(電磁波の反射効率がほぼ百パーセントのため、電磁波の一部が運動エネルギー放射圧となるのを防ぐ)ため表皮が吹き飛ぶ事はないが、なんらかの攻撃により皮膚細胞が破られると、蓄積していた電磁波が外へと放出。放射圧により全てを押し流し、熱も放射線も無効化してしまう。

 この防御能力は、本来は対小惑星のために発展した形質だ。超高速で飛ぶホシグライにとって、どんな小さな塵であっても、接触すれば危険な弾丸と化す。だからといって全てを躱すには、ホシグライ ― 厳密にはその祖先種 ― の巨体では不可能に近い。仮に避けるにしても、小刻みに向きを変えるには多くのエネルギーを使う。そもそもごく微細な、直径一センチ程度の塵ともなると、いくらホシグライの視力が優れていても確認するのは困難である。

 そして運悪く見落として命中すれば、たった一センチ五グラム程度の小石でも、その運動エネルギーは「重さ一トンの自動車が時速百キロで激突した場合」よりも八百四十万倍近く上である。宇宙空間で高速移動するには、どうしても優れた防御力が欠かせない。

 この優秀な防御能力が、文明が用いる兵器にも有効だった。おまけにこの電磁シールドは厚さ一メートルの皮膚に、総数三十万層も用意されている。一層だけでは開いた穴から塵などが侵入しかねないため、多層構造を持っていた方が適応的なのである。

 先のミサイル攻撃で破れた表皮は、たったの二層分だけ。あと十五万発受けない限り、キユリの体内まで攻撃を届かせる事は出来ない。いや、厳密に言うなら表皮細胞は常に再生されており、失われた分は即座に補充される。また表皮の下一メートルには、もう一メートル分予備の皮膚細胞が存在していた。今の表皮が完全に失われても、同じだけの厚みの細胞がまだ残っているのだ。一千メートルを超える巨体だからこそ、物量もまた絶大である。理論上あと三十万発のミサイルを受けても、キユリはぴんぴんしているだろう。

 強いて弱点を言うなら、表皮自体は然程強くなく、ヒト文明の銃器程度でも穴は開く事。つまり連続的な攻撃には比較的弱い。

 それを最も効果的に行えるレーザー攻撃は、この星系にある優れた文明にも可能だ。ミサイルが効かなかったと分かるや、人工衛星達は一斉にレーザー砲台を起動。キユリを焼き殺さんと撃ち込んでくる。

 光の速さとは、つまり情報の速さだ。光より速く伝わる情報は存在しない。キユリが光速の十パーセントで移動しようとも、光の速さで届くレーザーを視認する術はないのである。宇宙空間は極めて広大で、惑星間程度の距離でも光が横断に数秒〜数分掛かるため、小刻みに進路を変えれば躱す事も可能だが……キユリは一直線に進むため、進路を予測するのは容易い。

 人工衛星が放ったレーザーは全てキユリの身体に命中した。

 人工衛星が放ったレーザーの威力も、ヒト文明が開発した指向性エネルギー兵器とは比較にならないほど強い。全長数キロの小惑星も撃ち抜き、破壊するほどだ。しかも集束率(レーザーがどれだけ纏まっているかの指標。これが低いとレーザーは短距離で拡散し、攻撃と言えるほどの出力を保てなくなる)が極めて高く、一光年先の物体にも九十パーセント以上の威力で撃ち込める。もしもヒト文明がこの衛星兵器と戦ったなら、遥か一光年彼方から延々と都市部を焼かれ、反撃一つ出来ず滅亡するだろう。

 恐るべき攻撃だ。そう、間違いなく恐ろしい、生半可な文明では一方的に蹂躙されるだけの性能を有した攻撃である。

 だが、ホシグライには通じない。

 何故ならホシグライの表皮細胞には、電磁シールドを纏うための鏡面膜が存在する。鏡面膜は電磁波をほぼ百パーセントの効率で反射するもの。そしてレーザーとは光であり、光とは電磁波の一種に過ぎない。

 つまりホシグライの表皮は、レーザーを反射するのだ。反射自体は一般的な物質でも起きているが、ホシグライの皮膚はほぼ百パーセントの効率で反射する。これはレーザーのエネルギーが一部でも熱になったり、放射圧という運動エネルギーになったりしない事を意味する。つまり全く効かないという事だ。

 そしてキユリは、自分の体質を本能的によく理解していた。更に撃ち込まれたレーザーの照射角度から『相手』の居場所も把握する。


【ピキャキャキャ……キャピャアッ!】


 レーザー攻撃を浴びても余裕は崩さず、高笑い気味に鳴きながら、キユリがしたのは皮膚をうねらせる事。

 皮膚がうねれば、当然細胞が持つ鏡面膜の傾きも変化する。傾きが変われば、レーザーが方向も変わる。

 そしてレーザー電磁波は空間に沿って直進する事しか出来ない。勿論撃ち手である人工衛星も、レーザーが反射され、飛んでいく向きが変わった事は、。情報は光の速さで飛び、光が届くまで知りようがないのだから。

 跳ね返されたレーザーは、キユリの表皮の動きにより正確に人工衛星がいる位置を薙ぎ払った。何百と存在していた人工衛星達は、自らの放ったレーザーにより溶解・切断。内部の電子機器が破損し、次々と大爆発を起こす。大半が機能停止に追いやられた。


【ピキキキキィーッ!】


 人工衛星が壊れた事は、キユリには分からない。まだその『光』はキユリの下まで届いていないからだ。しかしヒト以上に優れた知能を持つホシグライは、ヒトのように想像を膨らませる事が出来る。自分を痛め付けようとした攻撃で自爆する何か人工衛星を考えて、ついつい笑ってしまう。

 それでも実際に人工衛星が破損する、その瞬間を目にするまで、油断はしない。またその後の動きも観察し、本当に機能停止したかも判断する。

 もしも僅かでも動いている人工衛星を見付ければ、見逃しはしない。


【キャッ】


 軽く、皮膚の一部に力を込める。

 この動作により表皮が裂け、中身が露出した。中身とは、つまり電磁シールドである電磁波。裂ければ中から多量の電磁波が溢れ出す。

 ここでごく少量の体液を、溢れる電磁波の中に放つ。

 この体液は電磁波に対し、なんの抵抗性も持たない。何万トンもある小惑星すら弾くエネルギーを受けた体液は、その組成が原子レベルで崩壊。中性子や陽子など、素粒子へと変わっていく。そしてこれら小さな粒は、放出される電磁波に押し出される形で飛んでいく。

 このように小さな粒が一定方向に並び、飛んでいく状態を『ビーム』と呼ぶ。

 これはホシグライが持つ技の一つ、高出力亜光速ビームだ。亜光速の名が付く通り、飛んでいく素粒子は光速の九十九・九八パーセントに到達している。素粒子は極めて小さく、故に質量も小さいが、光速に近い速さとなればそれなりの運動エネルギーを持つ。おまけに量だって豊富だ。

 高出力亜光速ビームは人工衛星の装甲を貫通。更に高エネルギーを有した素粒子は、接触した原子さえも破壊する。破壊された原子は周りに素粒子を飛び散らせ、この素粒子がまた他の原子を破壊していく。

 勿論この連鎖は無限には続かない。壊れて素粒子が飛び散るという事は、エネルギーも拡散するという事。いずれ素粒子のパワーは弱まり、原子を壊せなくなる。また原子の密度も高くなければ、破壊する原子がないため反応は止まってしまう。

 しかしある程度強力なエネルギーであれば、反応は長い間続き、壊れる原子も大量に生じる。大量の原子が壊れ、その時に発する膨大な熱が周囲を加熱、高熱によって気化した物質が膨張する過程で周りの物体を破壊する……

 所謂、爆発という現象だ。

 しかもこの爆発はメカニズムとしては『核爆発』である。本来ならば核分裂を起こしやすいウラン同位体でなければ起きないが、キユリは高エネルギー素粒子を当てる事でのだ。

 キユリの高出力亜光速ビームを受けた人工衛星達は爆発。気化した物質が炎として宇宙空間に広がり、完全に消滅した。


【キャキャキャピャーッ!】


 四方八方に広がる核爆発の炎を見て、キユリは大いにはしゃぐ。

 文明がないため、キユリは自分の撃ったビームで何が起きたのかは知らない。しかし打ち込んだ対象が爆発する事は知っている。そしてホシグライは、個体差はあるものの比較的『派手好き』だ。ミサイルをぼこぼこ撃つ人工衛星も、小惑星すら貫通するレーザーも、派手な大爆発も、大好きだから無視しない。

 それが文明という存在を叩き潰し、安定した生活・繁殖を行う基盤作りのための本能だとは思いもせずに。

 仮に教えたところで、彼女達は気にしない。知ったところで本能的思考は変化せず、そもそも変化させる意味が分からない。「好きなものは好き」なのだから、それを否定しても意味がないのだ。ヒトが重要な栄養を求める本能として甘味と脂肪を好むのと同じように、彼女達は派手な戦いを好む。本能と高度な思考は、切り離せるものではない。

 何よりキユリ達ホシグライは、知能はあっても理性はない。

 人工衛星部隊を壊滅させたキユリは思うがままに、星系中心で輝く恒星に向けて改めて進むのだった。

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