第1章 暴走少女 40

 しかしカナリアはふぅ、と溜息を漏らす。


「黒入さん、それは貴方のエゴです。助ける、救いたいという気持ちはわかりますが、現実はそうもいかない」

「・・・分かっています」


 分かってはいる。頭では理解している。

 でも、心は違う。どちらを優先しなければいけないのかもわかってはいる。しかし、一縷の望みに賭けてはいけないのだろうか。


 それでも僕は悩み続ける―――。


 悩み顔の黒入を横目に、カナリアは言う。


「この事件が解決しましたら、一度教会へお越しください。お悩みお聞きしますよ」

「ありがとうございます。寄らせていただきます」

「えぇ、お待ちしておりますよ」


 シスターカナリア。

 彼女は、迷える子羊たちを導く存在。しかし、時には現実の厳しさを突きつける。

 その慈母の気持ちを持って。


 そして、近づいてくる。ドロッとした嫌な空気感が肌を撫でる。すぐさまこの場から離れたい気持ちに駆られる。


「来ましたわね。しかし、この暑さ・・・。なんでしょう?呪力によるものでしょうか」

「恐らく。でも気温を操るなんて聞いたことありませんね。もしかすると、本命の副産物かも・・・。何にせよ警戒しましょう!」


 二人は警戒心を高め件の現場へ急ぐ。


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