第1章 暴走少女 34

 暴走の段階のせいなのか分からないが、少女の頭上には光球が生成されていた。


 まずい。


 魔力と呪力の塊だと思われる。それを一体どうするのか。もし放てば、単体でフランスが消え去るレベルだ。


「ァァァァァァアアアアアアッッッッ!!!」


 少女から悲鳴とも叫び声とも捉えられる音が発せられた。音圧により、周囲のステンド硝子や窓が共振する。


 正直限界だ。

 

 このまま僕が攻撃していても、あの魔防壁のせいで一撃たりともダメージを与えることなどできないだろう。注意を引くにしたって、あの光球は無差別攻撃だ。周囲が消えてなくなる。それにこのままだと完全覚醒してしまう。そうなれば、少女は

 

 その前に何とかしないと―――――。


「サヤカぁ!これ以上は持たない!」


 情けないが、ここはサヤカに頼るしかない。

 退魔の血を引くサヤカに――――!


「バカ野郎、よく耐えたな!お待っとさん!オラぁあ、術式展開!!」


 怒号交じりの声で、術式を展開した。この状況で詠唱を完了させる集中力と胆力は凄まじい。


 刹那、黒入とサヤカ、少女のいる空間がキューブ型の結界に閉じ込められた。三人は生暖かい空気に包まれる。


「ほらよ、おまけだ」


 彼女は、左目の眼帯をぐいっと持ち上げた。


「魔眼―――蒼ノ捕縛あおのほばく


 キィンと耳鳴りがしたと思えば、黒入と少女は身動きが取れなくなった。


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