第1章 暴走少女 33

 飛んできた斬撃を左右のステップで躱す。しかし、続けざまに斬撃が飛んでくる。

 その斬撃は、教会内にある木製の長椅子を軽々と粉砕していく。生身の人間が当たれば、縦に真っ二つだろう。


 黒入は少女を傷つけまい、と思っていたがどうもそうにはいかないらしい。攻撃を止めさせないと、サヤカに当たってしまう。いま彼女は無防備だ。


 黒入は次弾の斬撃を避け、少女目がけて跳躍する。身体を反り、右手を目いっぱい引き渾身の右ストレートを繰り出す。が、少女の周りには魔防壁がある。

 それは、物理的な攻撃をも防ぐ完璧な防壁だ。


 さすが智天使級ケルビムクラスと言わざるを得ない。


 ゴインッ!と打撃音が鳴り黒入は吹き飛ばされる。

 身を翻し、地面に着地する。


 呪術は、術師の呪力によって効果が変わる。

 黒入の呪力ならば、大の大人でも殴れば数メートルは吹き飛ばせる。更に、彼の身体強化ブーストには呪術に抵抗する力も付与されている。単純な呪術だが、その分強力な術式だ。

 しかし少女の魔防壁には、魔力も流れているため威力が半減されたのだろう。


 一応、全力で殴りつけた。

 が、やはり一筋縄ではいかないか。


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