第1章 暴走少女 32

「切れねぇモンは仕方ねぇ。おい、黒入!を使うからよ、時間稼ぎ頼むわ!!」

「簡単に言ってくれるなぁ!」


そう言いながら、サヤカに代わって少女に向かって駆け出す。サヤカはすでに詠唱に取り掛かっている。

その詠唱自体に魔防壁が付与されており、本人にしか認識できない。

所謂、門外不出の術なのだ。


サヤカと交代で、黒入が戦闘態勢を取る。


「術式―――――展開ッ!」


ゴウッ、と黒入の身体に風が舞う。

その瞬間に全身に黒い霧が纏わりつく。


その術は至極単純だが強力な呪術。

身体強化ブーストによるものだ。

五感、腕力、脚力、タフネスが格段に上がり、近接戦に特化するもの。


本来、黒入は魔術や呪術を目視することが出来ない。

認識することはできるので、もし不意打ちなどされた場合は己の感を頼りに対応するしかない。


しかし、身体強化ブーストすることにより目視が可能になる。

更に、五感全てに強化が入るので一般人とはかけ離れた力を発揮することが出来る。


少女はしげちゃんによる斬撃で、防衛態勢に入っていた。

向かってくる黒入に、風圧による斬撃を飛ばす。

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