第1章 暴走少女 30

 勢いよく扉を蹴飛ばしたのは、相方のサヤカ・フランシスカ。


 フランス協会に属するシスターだ。

 フランス人の父と、日本人の母を持つハーフ。整った顔立ちはお嬢様を彷彿とさせるが、その性格は直情的で竹を割ったような女性だ。口調は荒く、着衣はメイド服で左目は黒の眼帯で覆われている。素っ頓狂な見た目はしているが、その実力は本物だ。


「黒入、電話出られなくてすまなかったなぁ。ちょっとヤボ用でよ。で、コイツぁなんだ?」

「野暮用って仕事でしょ。ほら、この前言ってた女の子だよ。さっき急に苦しみ始めてね・・・。暴走状態になってしまった」


 僕の落ち度だ、すまない―――と謝るがサヤカは食い気味に言い放った。


「バカ野郎が。謝ったってしょうがねぇ!ケリぃつけんぞ!」


 その瞬間その黒く長い髪の毛を翻し、少女に向かって駆けだす。同時に左手に持つ日本刀の鞘を抜き、白い刀身を現した。


 無銘伝則重むめいでんのりしげ

 彼女の持つ日本刀の名前だ。かつて日本にありながらも、その所在は不明とされていた名刀。なぜ、彼女が持っているかは置いておくがサヤカの魔力を存分に吸った魔を断ち切るまさに真打なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る