第1章 暴走少女 19

 黒入事務所から歩いて十五分くらいだろうか。完全に陽は落ち、白熱灯がチカチカと点灯している。学生や、自転車の前カゴにスーパーの袋を入れている主婦や、サラリーマンが革靴をコツコツ鳴らして歩いている。これから、皆は帰宅だろうか。

 彼らを横目に、反対方向へと進んでいく。


 女子高生たちが襲われたのは、午後九時頃。


 現在の時間よりもう少し闇が深まったとき。


 しかし、どうだろうか。出現はランダム要素を含んでいるため、今晩犯人が現れるとは限らない。かと言って、探さなければ捕まえることもできないだろう。


 迅速に対応しなければ、被害者が増える。というのは建前であり、本音はバックに別の人間が関わっている可能性がある。


 その情報が欲しい。


 当たりはずれの運任せな部分はあるが、なんでもいい。喉から手が出るほど欲する。


 よって、カナリアが取れる選択肢は一択である。


 とは言っても、現在時刻からほど遠いので一度教会へ戻り、身支度をしなければ。

 直近で起こった事件周辺を巡回してみて、何か手がかりでも見つけなければと心に誓った。

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