第1章 暴走少女 18
そんなこんなで、夕方五時になっていた。陽はほとんど落ち、影が濃くなってくる。
時間も時間なので、今日はこの辺りで解散だ。
「カナリアさん送っていきますよ」
「まぁありがとうございます。けれど、大丈夫ですよ。私、夜の方が目が冴えますので平気です」
うふふ、と口元を手で隠しながらにこやかに笑った。心配ご無用みたいだ。
「でしたら、事務所前まではお見送りしますよ。事務所の階段結構急で怖いでしょう」
事務所部分は二階で、階段が少し急なのだ。オマケにビルが古く、手すりが無い。バリアフリーという言葉が似合わない、不親切な建物だ。
ありがとう、とカナリアは言いながらソファーから起立した。
コツコツと二人は階段を下っていく。階段を下り切ると、ふわっと珈琲の匂いがした。事務所の一階部分が喫茶店になっており、そこからいい香りが漂ってきた。
黒入お気に入りの豆が売っている。
カナリアは、スンスンと鼻を鳴らし珈琲の香りを感じ取った。
「良い珈琲豆を使っているみたいですね。次来た時は、ご馳走になろうかしら」
「えぇ僕のお気に入りですよ」
最後に少し談笑し、教会へ帰るカナリアの後姿を見送り、黒入は事務所へ戻った。
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