第1章 暴走少女 10

 確かにカナリアさんの言うことは一理ある。そもそも、犯人が男性か女性かすら分からないほど情報が少ない。世間一般的に見ても、女性が襲われている、しかもそれが高校生という未成年者が襲われていれば、想像するは力の強い男性像だろう。


「ここにある雑誌や新聞にも、記者、評論家達は予測的に犯人は男性と書いてありますが」


 黒入はおもむろに一冊の雑誌を持ち上げ、ペラペラとページをめくってみせる。


「黒入さん、申し訳ないけど内容を少し読んでくださるかしら?私、そこまで細かい文字は読めないの」


 ティーカップをカチャリと持ち、紅茶を啜りながら伝える。


 そう、カナリアは文字が読めない。その両目は重力に従い閉じ切っている。


 彼女の日常生活では、本当に目が見えていないのが不思議なくらい自然に生活をしている。曰く、感じ取ることが出来るらしく支障をきたさないとのこと。


 世間的にも、先天的や後天的に目や耳の機能が無くなった時、人体がそれ以上の感覚で補おうとすることがある。彼女の場合、それが人間の五感の中にある内のが著しく発達したのだ。

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