第1章 暴走少女 8
初夏の涼しげな風が事務所全体の空気を撫でる。
二人とも掃除が終わり、無言で飲み物を飲んでのんびりしている。穏やかな雰囲気。
「いい天気ですねぇ」
黒入が無言の空間を破る。
変哲もない会話の切り口。
意味もなく呟いてみる。
が、返答はなし。
つれない相方は、なにやら深刻そうな顔つきでテーブル先を見つめる。
同じ見出しが載った、雑誌と新聞。
掃除をしたはずなのに、この長テーブルの上は対象外で二人とも触らずじまいだった。
例の事件も彼女の耳には入っているだろう。連日のテレビ報道(彼女がテレビを見るかは分からないが)、雑誌、新聞、人から人への噂話、その筋からの情報提供。または、彼女は教会の人間なのだから迷える子羊からの相談もあるだろう。
知り得るには十分だ。
しかし、本筋はそこではない。
事件の内容が重要で、更に中身が重要で。今日、彼女がわざわざ町はずれから来たのもソレを問いただすためだろう。
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