第1章 暴走少女 6

「黒入さん?貴方聞いてますの?」

「えっ?あ、はい。聞いてませんでした」

「貴方ねぇ・・・」


 はぁ、と溜息が零れた。


 こっちは、朝まで活動していて実際に寝たのは2時間ほど前だぜ。二時間ぽっちの仮眠じゃ体力持ちませんて。


「で。何のお話でしたっけ・・・?」


 恐る恐る聞いてみる。このシスターの発言を無視できるほどの胆力を、僕は持ち合わせてはいない。


「お話の前に、部屋、掃除しましょう。ここは空気が淀んでいますわ」


 そう言われて、黒入は自分の周囲を見渡す。


 オフィスデスクの上は、乱雑に置かれた書類の山、黒猫の絵柄が入ったマグカップ。

 本棚に帰ることが出来なかった、雑誌や古書など。事務所中央にあるソファーには投げっぱなしのジャケット。ソファー前の長テーブルには、の雑誌や新聞。


 黒入本人が見ても、確かに雑多な感じだ。

 これはこれで落ち着くのだが、シスターはそう思わないだろう。


 目の前のシスターは、毅然とした態度で不動の姿勢だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る