来世へ託す春夏秋冬

@Anri230502

第1話 来世へ託す春夏秋冬

1

似た人を同じ理由で傷つけて

満たされ乾く 春の夕暮れ

2

顔は顔 けれど単なる顔ではない

体もただの体ではない

3

目も鼻も 唇も頬も 手も足も

ただそこにあるものなどではない

4

心もそう 心も単なる心ではない

確かな意味がなければならない

5

君は水 私を満たす

君は風 私を乾かす

君はなにもの


6

似た人を探し求めて履きつぶす

シューズの怨念 夏の弔い

7

君を見て 心が跳ねる 心がしぼむ

次第に何も感じなくなり

8

君に触れ 心が躍る 心が沈む

次第に何も感じなくなり

9

繋がって絶たれ 絶たれてまた繋がり

次第に何も感じなくなり

10

伝う汗 塩気の濃さは 執着度

純なる愛なら きっと甘い


11

似た人に肌がざわめく残り香よ

鬼火のような 秋の命よ

12

平穏と混沌のはざまで私は今日も

息をしている 息をしている

13

顔は顔 体は体 目も鼻も

それ以上でもそれ以下でもない

14

否定したい 苦しいほどに否定したい

けれど今更どうでもいい

15

木枯らしよ どうか静かに去っていって

私の鬼火は とてもか弱い


16

似た人に抱(いだ)かれ眠るぬくもりは

誰のものでも 冬の雪解け

17

手も足も 唇も頬も 何もかも

君が言うからどうでもよかった

18

ぬくもりも 言葉も夢も 約束も

あの日の君も まだ「ここ」にある

19

来世には必ず会おう

それまではしばしの別れ

しばしの別れ

20

来世まで 私を忘れないのなら

それでいいから また会う日まで

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