第8話 三種族長会議③
アイゼンは語る。
獣人族〈ボルボテア〉の都は攻め落とされた故、今後は森に潜みながら"火から還りし土人〈ベオ・ウールシ・ガンへ〉"を狩り、"暗黒の夜の王〈マハ・ガント〉"の動向を探りつつ、戦力を立て直そうかと思っていると。ミクステアである主らにとっては凶報であるが、現状の進行方向からすると、マハ・ガントは人間族〈ミクステア〉の都に向かっている。その"彗星の火"により森を焼き、動植物を殺しながら。ミクステアのみであれば、我らと同様に都は守りきれぬであろう。しかし、ミクステアには森で生きる術がないであろうから、必要であれば我らボルボテアもミクステアの都に入り、共に迎え撃っても良い。だが、それでもマハ・ガントの率いる軍団に対抗できないだろう。負ければ"人"の世は終わる。そのため、植物人族〈ナルマテア〉の協力が不可欠であり、三族協調し、マハ・ガントを討たないか、というものであった。
やはりティムは話を聞きながら、アイゼンの上から目線の提案に憤りを覚えたが心に秘めることとすると同時に、これが"人にとって最後の決戦になる"という予感に武者震いがした。そしてアイゼンは次のようにして話を結んだ。
「奴らがミクステアの都に辿り着く時、その軍勢は三万を超えよう。我らボルボテア、ナルマテア、ミクステア。それぞれを合わせたとて戦える者は一万強。籠城側の有利はあろうが、疲れを知らぬ不死身相手には些か心許ない。しかし、それでもそれしか手は無かろう。どうだ、乗るか?各族長よ」
ウォーディンはちらりと眼前の国王を見た。国王は彗星の落下以後、世界の終わりがやってきたという胡散臭い占星術師につけ込まれ、心身喪失し、最早喋ることもほとんどなくなっていた。憐れみの目を遣りつつも、アイゼンの話をより深く理解するため思考を巡らせた。リーチ家もバハムト家も戦場を知らず、この事態の深刻さを知らない。軍事を司るウォーディンだけがアイゼンの話の芯を捉えることができていた。
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