第6話 三種族長会議①
その知らせが届いたのは、数日後のことだった。彗星落下から
場所は、獣人族〈ボルボテア〉と人間族〈ミクステア〉の国境にある植物人族〈ナルマテア〉の森の中で、非常に美しい場所であった。光を宿す木の葉がほのかな暖色の光を放ち、優しく足元を照らす。足元には紅い落ち葉が積もり絨毯のようで、森と共生する植物人族〈ナルマテア〉の衣装となる作りかけの絹布が枝にかけられ、レースのように風にそよぐ。大樹の木の実は金剛石や琥珀、柘榴石などの様々な宝石のようで、それが風で万華鏡のようにコロコロと様相を変えた。
ウォーディンとティムは感心しながら頭上を見上げていた。人間族〈ミクステア〉は国王と御三家の各代表者が参加することになっており、彼らは植物人族〈ナルマテア〉の案内役の背後について歩いている。
ナルマテアは、大樹が精霊の力を宿すときに、その幹から生まれる。彼らの見た目は人間族の白肌の幼児のようであり、その姿は何千年経とうが変わらない。ただ髪の代わりに青々とした自分が生まれた大樹の木の葉が生い茂っている。着衣は、古代ギリシャを思わせる白絹の一枚布を袈裟のように纏っていて、故に森で戯れるその姿はまるで天使か精霊に思われた。
ウォーディン達が会合の場所に着くと、既にミクステア以外は揃っているようだった。そこは樹径百メートルを超える大樹の根元で、周りの木々はその木を敬って離れているため、草原のような緑の広場に白い花がまばらに咲いた場所となっていた。ウォーディンは白い花に故郷を思い出した。しかし、慕情にかられる胸を押し留め目線を広場の中心に向ける。苔むした石椅子と石机があり、そこに十人程度が集っていた。着席しているのは二名だけで、他は立っている。ボルボテアの一人が「やっと来たのか」と言わんばかりの苛立ちの目をこちらに向けている。遊びに来たのではない。この会に人の未来がかかっていると改めてウォーディンは気を引き締めた。
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