6.No worries

「そ、それで……私の絵が……そんなに素晴らしかった?」

「YES! と、特に……この絵ガ!」

「あーえーっと……」


 アリスさんが見せた絵、それは……彼女がモデルの天使の絵だった。


「この絵……とてもCoolで、とてもCuteで、とてもSad……このFeeling……なんなんでしょうカ?」

「う、うーん……」


 ネットでよく反応を貰うけど、実際に目の前で感想を言われると……恥ずかしい。

 それにアリスさんは、この絵のモデルが自分だという事を分かっていないようだった。


「キズナ!」

「は、はい!?」


 私は突然名前を呼ばれてしまい、咄嗟に返事をしてしまった。

 すると、アリスさんは……私の手を取った。


「もっと、アナタの絵が見たいデス! 私、貴方のFunになりまシタ!」

「は、はい!?」


 あ、アリスさんが……私の、ファン?

 聞き間違いじゃなくて……本気で言ってる!?

 アリスさんは、続けざまに私に質問をしてきた。


「何故、このartを描いたのですか?」

「か、描いた理由? そ、そうだな……」


 な、なんて言えばいいんだろう? アリスさんがかわいいから? いやそれはどうなんだ……

 アリスさんが好きだから? ……なんだそれ?

 いや、そもそも、アリスさんはこの絵のモデルが自分だという事に気づいていない……ならば。


「ま、まぁ……いい素材が見つかったから……かな?」

「……なるほど、それはexcellentですね!」

「ちょ、ちょっと……アリスさん?」


 アリスさんは、私の手を取って、思いっきり振り回した。


「いや、アリスさん……」

「アリスと呼んでくだサイ!」

「あ、じゃあアリス、わ、私のファンって……そういうの、やめた方がいいよ」

「どうしてデスか?」

「いや、私の絵……傷ついた女の子ばかりでしょ? 私は……そういうのが好きなんだよ? もしかしたら、アリスの事……その……傷つけちゃう……かも」


 ……事実、私は彼女をモデルに絵を描いた。

 将来的に、私は誰かを傷つけてしまうかもしれない……それが怖かった。

 だから、ずっと一人で……。


「じゃあ……もしも、誰かにdamageを与えたくなったら、私にしてくだサイ!」

「は、はぁ!?」


 私はアリスの謎過ぎる提案に驚愕してしまった。


「そ、そんなことできるわけないでしょ!?」

「なら、No worriesデスね」

「……え?」

「キズナは誰にも傷ついてほしくナイ……そう考えているのではないデスか?」

「……」


 誰にも傷ついてほしくない……確かに、そうかもしれない……。

 誰にも傷ついてしまうかもしれないから、人を避けた……それはつまり、そういうことなのかな?


「例えキズナがどうFeelingしようとモ、私は貴方の絵がとても好きデス!」

「……」

「だから……もっと……絵を見せてくだサイ……ダメですカ?」


 アリスは悲しそうな表情で私を見つめる……あぁもう! そんな表情見せられたら拒否しようにもできないじゃん!


「わ、わかったよ……」

「Wow! とても嬉しいデス!」

「あ、アリス!?」


 アリスは私を思いっきり抱きしめた。

 アリスの体はとても暖かく、私はその暖かさに負け、抱きしめ返してしまった。


「私のHouse、この近くなのデ、そこでお茶Cuppaしましょう!」

「か、カッパ??」

「美味しい紅茶、入れマス! 美味しいビスケットbikkieもありマス! 行きましょウ!」

「ちょ、ちょっと……」


 アリスは私の腕を掴み、エスコートするように歩き始めた。

 きゅ、急にグイグイ来るんだけどこの子!? やっぱり外国の人だから?


「さぁ、そこのNoteとPencilを持っテ!」

「は、はい!」

「さぁ! Let‘s go!」


 私はほぼ連行されるように、彼女の家へと向かった。

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