4.忘却

「ふぁー……」


 6限の授業が終わり、そろそろ帰る時間……。

 ……そういえば、何かやらなきゃいけなあい事があった気がするんだけど、なんだっけ?

 何か忘れちゃいけないことのような気がするんだけど……ま、そのうち思い出すかな。


「ねぇねぇアリスさん! お家どこ?」

「あ、私……『鷺沼さぎぬま地区』デス……」

「あー惜しい、私隣町だよー」


 後ろでは、アリスさんの個人情報を聞き出そうとまたも群れが形成されていた。

 鷺沼か、私と同じじゃん……って、盗み聞きしちゃったけど、人の住んでるところ聞き出すってどうなんだ?


「はーい! 皆席についてー! ホームルームやるぞー」


 そうこうしているうちに、担任が入室し、帰りのホームルームが始まった。

 そして一通り話が終わり、解散となった。

 解散となったクラス、私の後ろは相変わらず群れが形成されていた。


「ねぇねぇ、帰りにスタラ行こうよ! スタラ!」

「す、スタラ……ってなんデスか?」

「コーヒーショップだよ! 一緒に行かない?」

「か、かーふぃー……デスか? 今日は……ちょっと……」

「えー……」


 ……なんか居心地悪いな、さっさと帰ろ。

 私は荷物を纏め、教室を出た。


 あの子、なんか可哀そうだな……話慣れていないのか、はたまた日本語が分からないからか、誰がどう見ても辛そうだった……話し掛けている集団にはそういう風に映っていないのだろうけど。

 私が彼女の立場だったら……嫌だな。

 考え事をしながら歩いていたため、気が付くと学校の最寄り駅についてしまった。


「全く……みんなして、アリスさんを見世物みたいに……」


 改札を通り、歩きながら、そんなことを口にした。

 まぁでも、これは私も人の事は言えないかもしれない。

 私は彼女を絵のモデルにして、しかもボロボロに……あっ。


「そ、そういえば! ノート!」


 そう言えばあのページ処分するんだった……えぇっと、ノートノート……。


「……やばい」


 ノートが……見当たらない。

 待合室に駆け込んで鞄をひっくり返したが、やはりなかった。


「ど、どうしよう……改札通っちゃったよ……」


 し、仕方がない……ここは駅員さんに事情を話して……あぁでも、なんか恥ずかしい……一じゃあ一旦家に帰って……でもあれなんとかしないと万が一見られたらまずい……。

 ど、どうしよう……。


『まもなく、1番線に……』


 やばい、電車来ちゃった……あぁもうしょうがない! ここはいったん帰宅して冷静になろう!

 電車の中で考えがまとまるかもしれないし!

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