第13話 思わぬ方向性へ
エリーズさんと安全面についての問題などを話し合った。でも作るのはできる人に任せましょうって事になっちゃったから、行商人さんに売って、欲しい物を買うっていう目的は達成できないのでは?
まぁそのあたりもエリーズさんとお母さんで話し合う事になるのかな? 大人同士の話し合い? ほら私は五歳児ですから!
話し合いも無事に一段落付いたからか、何だか私も眠くなってしまった。流石は五歳児ボディ、寝る子はよく育つよ!
「フフッ、眠くなってきたのかしら? 後で起こしてあげるからベッドでお昼寝してて良いわよ?」
「そうしたいのは山々なんですけどね……」
そう、私の膝の上にはすやすやと眠るエマちゃんがいるのだ。動くに動けないし、起こすとなると少し可哀想だ。
「そうだったわね。エーマ、寝るならちゃんとベッドで寝ましょうねー。風邪を引いちゃうわよー」
そう言いながらエマちゃんを抱きかかえて寝室へ連れて行くエリーズさん。寝てる子供って何であんなにグニャグニャのデロデロって感じなんだろうね。
私も一緒に行こうと立ち上がろうとして悟った。これ絶対足痺れてるわ、ちょっとだけお待ちを……。
―――――――――――――――
「……ルちゃんノエルちゃんノエルちゃん」
何か声が聞こえる……。あと重い。まだ眠くてちゃんと目が開かないけど今何時だろう。
「ノエルちゃんノエルちゃんノエルちゃん」
お腹のあたりで何かがモゾモゾ動いてる気がする。重たい瞼を開いて周りを見渡すと、自分の家ではない事に気が付いた。
そうか、エマちゃん家でお昼寝をしてたんだ。体に掛かっていた布をめくるとお腹に顔を埋めてグリグリと動かすエマちゃんがいた。寝起きで甘えん坊モードかな?
「ノエルちゃんノエルちゃんノエルちゃん」
「おはよう、エマちゃん。そんなところでどうしたの?」
「ッ……おはようございます。寝相が悪かったみたいです! 気にしないでください!」
「そう? それなら良いんだけどね! さてと、起きた事だしエマちゃんママにおはようのあいさつしよっか!」
少し慌てた様子でベッドに座ったエマちゃんを引き連れて寝室を出ると、エリーズさんと精悍な顔立ちの男性がいた。ノエルの記憶を辿るとエマちゃんパパのジョエルさんだね。久し振りに会った気がするけど今だからこそわかる! この人も結構強いぞ! 細めに見えて結構引き締まったいい筋肉の付き方だ! やはり猟師さんだと魔物とかと戦うことがあったりするのかな? というかいつも貰ったりするお肉って何のお肉なんだろう? 魔物かな?
「お父さんおかえりなさい!」
「あぁ、ただいまエマ」
エマちゃんはお父さんも大好きみたいで駆け足で抱きついていた。
「エマちゃんパパ、お帰りなさい。お邪魔してます」
「ノエルちゃんいらっしゃい。大きくなったねー。毎日会うから気付かなかったけど、こうしてみるとエマも少しずつ大きくなってるんだなぁ。もう少しゆっくり大きくなってね」
「よくわからないけど、わかりました!」
「もう、あなたったら。エマもノエルちゃんもすくすく育っていいじゃないの」
お父さんに抱っこされて嬉しそうなエマちゃんと、エマちゃんが心底大切なんだろうなって感じさせる笑顔のエマちゃんパパ、そんな二人のやり取りを微笑ましそうに見ているエリーズさん。これがたぶん普通の子供がいる仲良し家族なんだろうなぁ。ペットに大型犬でもいれば理想の家族を体現したようなものだね。
私は今の両親とこんな風に接することができるだろうか? 瑞希の記憶が蘇ったことで一つの幸せな家庭を歪めてしまったのではないだろうか、そんなことが頭を過ぎった。
「……ルちゃん! 大丈夫? 少し顔色が悪いわよ?」
「あっ、いえ、大丈夫です。寝起きでまだ頭がはっきりしてなかったみたいですね。あはは」
寝る前にエリーズさんと話した事をまだ引きずっているみたい。ほとんどのことは寝ればリセットされるのに切り替えられないなんて、それだけ自分にとっては重大なことなのかもなぁ。
「そう? 大丈夫なら良いのだけど……。ジョエルも帰ってきたことだし、そろそろお家に送っていくわね。おもちゃ作りについてジゼルさんとお話したかったけど今日はやめておく?」
「いえ、面倒な話は早めに片付けちゃいたいので今日でいいですよ。それじゃあエマちゃんも今日はありがとねー! エマちゃんパパもお邪魔しました!」
「ノエルちゃんまた来てくださいね!」
「エマの言う通りいつでも来ていいからね。今日はエマと遊んでくれてありがとう」
お別れの挨拶を済ませてエリーズさんと一緒に自宅へ向かう。エマちゃんがもう少し寂しがるかと思ったけどエマちゃんパパに全部持ってかれたね、うん……。でもまぁ、今日やりたかった事の大半はできたよね? あとはエリーズさんとお母さんが話し合ってうまい事どうにかしてくれれば私としては万々歳です! 少し日が落ちて来て、もうそろそろ夕焼けかなといったくらいに家に着いた。街灯なんてないし、サクッと話してエリーズさんをお家に帰さなきゃね!
「ただいまー」
「ノエルようやく帰ってきたわね! 勝手にエマちゃんの家にお邪魔しちゃダメじゃない!」
「お母さんちょっと待って! エリーズさんがお話あるって来てるから!」
「あら! エリーズいらっしゃい、今日はごめんね? この子ったら人の話も聞かずに飛び出しちゃって……」
「いえいえ、うちとしてはいつ来ていただいても大丈夫ですよー。エマも喜びますしね」
「それで、話というのは? もう時間も遅いし良ければ明日でもいいわよ?」
何とかお説教は回避できたみたいだ。ここはもう大人に任せて玄関で立ち話をしてる間にしれっと寝室にでも避難しておこう。ノエルはにげだした!
「実はノエルちゃんに関係する話なのですけど、近いうちに行商人がやってくるから、お買い物をするためのお金が欲しくて商品になるようなものを考えたみたいなんです」
「あぁ、朝に買い物したいって言ってたわね。ちょっとノエル、どこ行くの? あなたの話なんだからここにいなさい」
しかしまわりこまれてしまった!
結局リビングに移って私は黙って椅子に座っている。話し合いの流れ的に、エリーズさんが商会を通して、木工職人に制作の依頼をするらしい。凄いね、やっぱりただの村人Aではないんじゃないかな? 具体的な話はその商会に許可を取ってからになるそうだが、取り敢えず売れそうだと判断されたら費用は商会側が払ってくれるだろうとのこと。お母さんはそれだと借金になるのではないか、と不安そうだったけどエリーズさん曰くそうはならないらしい。私が作る為に商会に依頼を出して作ってもらうのではなく、私からアイディアを借りて商会側が作って商売する形にするそうです。その後はアイディア料という形で売り上げに応じたお金が私に支払われるとかなんとか。前世で言う著作権料みたいな感じかな? 法律でどうなっているのかはわからないけど、エリーズさんが懇意にしている商会だし、ましてやエリーズさんが私たちを騙すとも考えにくいから平気かな? お父さんが帰ってきたらご夫婦で話し合ってみてください、と言ってエリーズさんは帰っていった。
何かを考えているお母さんを横目で見て、これ二人きりにされたらお説教再開されるのでは? と私はビクビクしている。そうなってしまう前に、話し合いは終わったわけだし私はそろそろ部屋をでようかな。戦略的撤退だ!
「はぁ。急に買い物がしたいなんて言い出したと思ったら、まさかこんな話になるなんてねぇ……。ねぇノエル」
それじゃあっしはこの辺で……って感じで椅子から降りて歩き出した途端呼び止められてしまった。あっ、まわりこまれてしまった!
「パパが帰ってきたら色々お話しよっか。本当はもう少し大きくなってからしたかったけど……」
いつになく真剣そうな顔をしてお母さんはそういった。
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