第2話 洗礼式へ行こう!

 わたちノエル5さい! むつかしいことはわかりません! はい、すいみませんでした。


 私自身さっきの質問はなかったと思います。言い訳させてもらうと、日本って知ってる? とか、ここは異世界? とか、仮に地球でも電気すら通ってないような国で日本なんて島国知ってるのか? とかごちゃ混ぜになって頭ぐるぐるになった結果があんな感じになりました!  ちなみに母の回答は、『また夢の話? ママにわかるわけないでしょう?』 でした。


 ノエルの記憶を思い返してみると、どうやら松浦瑞希としての記憶がはっきり甦る前からたまにハンバーガーが食べたいとか口に出していたようだ。


 少しずつ前世のことを思い出していって今朝、松浦瑞希としての意識が蘇ったと考えるとしっくりくる。


 それはつまり松浦瑞希は死んだわけだ。……結構心にくるねこれ。幸いかはわからないが死んだ理由はわからない。春休みだと浮かれながら眠りについて病気か何かで死んだのか、その先の記憶がまだ蘇ってないだけで、実は順風満帆な人生を送った後に老衰で亡くなった、なんて可能性だって残ってるだろう。


 ……でもまぁ考えたところでなんの慰めにもならないよ。例えどんな最後であろうと、今の私からすれば ‘’高校卒業した私‘’ と ‘’死んだ‘’ が直結してるのだ。


 結局どんなに考えたところで理解も納得もできないだろうからもうやめだ! 前世でお祖母ちゃんも言ってたよ。あんたは考えたってどうせわからないんだから力で押し通せって。なんか違う気もするけど、それより何故私がここ異世界じゃね?と思ったかである。それは至って単純で、おへそや心臓あたりに何かがあるのだ。


 自慢ではないが前世の私はお祖母ちゃんに影響されて脳筋だった。私自身の持って生まれた資質は恐らく知的好奇心に溢れ、知恵に溢れた、こう、なんか眼鏡の似合う知的な女性だったのだ! うん! ふっ、想定通りだ、とか、バカな! 私の計算を超えるだと……!! とか言いながら眼鏡あげたりズレたりするようなタイプだったのだ! だけど脳筋だったお祖母ちゃんによる脳筋の英才教育を受けた為に脳筋になってしまった悲しい過去がある。話がズレたね。


 お祖母ちゃんによって体を鍛えに鍛えさせられた私にはなかった筋肉とは違う力のような塊が胸からおへそにかけて感じられるのだ。前世腹筋が六つに割れていた私にはわかる。これは筋肉ではない。


 きっと魔力だ。それか何かの病気だ。……誰か医者を呼んでください!


 とにかくエマちゃん一家が迎えに来るまでの間に、この魔力(仮)をできるだけ調べたい。前世では成しえなかった力で押しとおる、がこの力さえあればできるかもしれないのだ! 俄然やる気出てきたわ。


 洗礼式でスキルとか魔力量とか見るのかな?


 ま、まさかこの力は……!! みたいになるのかな。想像したら興奮してきたよ!


 早速実験をしてみよう。椅子に座ったまま目を閉じて魔力に意識を集中させる。自分の中にある、自分自身の一部なのだから、きっと力を入れたり動かしたり何かしら干渉できるはずだ。


 集中だ、全身全霊で魔力を感じろ。魔力の輪郭、体のどこにあるのかを正確に、その形、色、動いているのかどうかなるべく多くを感じとるのだ。


 それから暫く魔力を調べていると、驚く事が起こった。私の体が揺れている……? どうやら魔力への干渉が体へも影響を与えているようだね。魔力を動かす力が大きければ大きい程、身体の揺れが大きくなっている気がする。不思議な力だ。魔力かどうかはさて置き、この未知の塊は多くの可能性を秘めているように思える。魔力を動かし、その形を変え、全身に行き渡らせるよう動かしていると、どんどん体を揺さぶるような力が大きく――


「そろそろ起きて? ノエルちゃん早く洗礼式行こう?」


 ……ずっとエマちゃんが揺らしてたのか。紛らわしいね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る