第13話
凍てつく寒さーーーーを通り越して、瞬く間に辺り一面は氷の世界へと変貌した。
荒々しく切り出されつつも鏡面の様な美しい造形は、魔法という現象がいかに摩訶不思議なものかを説明するには充分過ぎるものだった。
他の参加者は衝撃で吹き飛ばされたらしく、巨大なコロシアムにら魔法使いの少女とわたしだけが取り残されている。
意図的に彼女がそうしたのだろうが、なんともわたし好みでアグレッシブで良き、とだけ言っておこうか。
はてさて上を見上げれば天を覆うはまさに氷のドーム。外からの光はほとんど遮断され、微かに差し込む細い光が乱反射しながら彼女の顔を照らした。
衝撃で帽子がズレたお陰で見える、あどけなさと暴虐さを織り交ぜた不思議なご尊顔がチラリ。
「わお、お姉さん驚いちゃったよ」
「……あなた、ナニモノ?」
抑揚を欠いたか細い声。それはまるで淡い雪を彷彿とさせる。
しかしわたしは、相反して元気よく答えた。
「食べる事が大好きな美人Aです!」
「……バカにしてる」
ヒュンと頬を何かが掠める。
ガツンと音がする方向を見ると、鋭利な氷柱が氷のドームに突き刺さっていた。
肌に触れるギリギリを狙った? わずかにチリチリとした感触だけが頬に残った。
「あぶねッ!」
「今度は当てる、ちゃんと答えて」
「何者かって言われたからちゃんと答えたぞ!」
「ダメ、もっと詳しく」
眠たそうな目が鈍い光を宿す。
とても年相応とは思えないが、グリ助の能力を抑え込んだ状態で対峙するには厳しいと判断した。
「ねえ、キミってもしかして強いヤツと戦いたい系のヒト?」
「…………」
返事は無い。けれど微かに青い瞳が揺らいだ。
「クーデレで戦闘マニア。なんとも好みだ、結婚してくれ!」
「……もしかしなくても、ばかなの?」
ピキピキと大気中の水分が凝縮し、やがて氷となって幾重にも連なる。先ほどの氷柱とは違うーーーートゲトゲの氷の鉄球と言えば分かりやすいだろうか。
そんな物騒なモノを五つほど具現化させた少女は、杖を器用に振り回して構えを取った。
「ーーーーボクの名前はヒスイ。ボクは……ボクより強い人間を求めている」
帽子の隙間から見える細長い耳と、そこに揺れる琥珀色のピアスが氷を背景にしてふわりと踊った。
転生フリーターの爆食ライフ 〜わたし女魔王ですが食べる事以外にありませんので〜 名無し@無名 @Lu-na
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