第11話


 戦いの儀。

 一般的な認識でいうと、古代ローマで行われていたというアレである。


 いやはや流石は冒険者が集まるイミナの街。

 屈強な人が多いなとは思っていたけれど、猛者中の猛者がウヨウヨしているには理由があったらしい。魔物も多いし必然ではあるかと、今更ながらに納得した。


「……勝てる訳ねぇよ」

「うう、さすがに少し怖いかも」

「弱気だねえ二人とも」


 相手が強ければ燃える派です。

 きっとわたしの前世は剣闘士だったのだろう。


「さっ、受け付けしよ」


 腰の重い二人の手を取り、わたし達は意気揚々とコロシアムに足を踏み入れた。


 ◆


「二十歳からです」

「は?」

「ですから、参加資格は二十歳からです」

「なんですとおおお!?」


 受け付け嬢さんの開口一番がコレ。

 颯爽とエントリーしに行った結果、残酷なまでの現実を突きつけられた。


「じゃあ二人は参加できないの!?」

「ええ、そうですね。あと五、六年待って下さい」

「やだよわたし老けちゃう!」

「諦めよろゴリッカー」

「お姉さま、少し恥ずかしいです」

「ぬあぉあああああ!」


 悲痛な叫びは惜しげもなく周りの視線を集めていた。

 わたしは大雑把に見えて意外と計画派だ。決めたプランが崩れる事が許せない。かーッ、A型のツラい所ねここ。

 じゃなくてーーーー


「この子らにサクッと戦闘経験を積んでもらって! ついでに賞金を得て! 晩御飯を豪遊するんだけど!! 彼らの人生設計に穴が空いちゃうじゃない!」

「えー、知らんがな」

「ぐぬぬぬぬぬ!」

「そんな出たいならゴリッカだけ出ればいいじゃん。俺ら応援してやるぜ?」

「私も精一杯がんばります……応援なら」

「んむむむむ!」


 年齢制限はどうにも出来ない。

 なら仕方がない、二人のレベリングは魔物で行うとして、資金稼ぎと豪遊ミッションだけでも遂行させてもらおう。


「大人ひとり参加で!」

「かしこまりました」


 ◆


「レディースアンドジェントルメーン! いよいよ始まりました第◯回目、イミナ名物大乱闘コロシアムの開催だぁぁあああ!」


 ワーワー、きゃーきゃー、ドンドンぱふぱふ。


「ほぉおおお」


 コロシアム内に響く大歓声。

 選手控室にもビリビリ響く司会者の声に、思わず血肉が湧き踊るざる。


『リッカよ』

(おう、グリ助もゾクゾクするよな? わたしはワックワクすっぞ!)

『あまり浮き足立つでない。冒険者登録とは違い適性検査は無いが、目立つ行動をすれば騎士団の目に留まる』

(騎士団?)

『王族直下の精鋭部隊だ。 所属する剣士全てがSクラスの実力を誇る強者揃いと聞く』

(ほぉ、それはぜひ勝負してみたいね)

『馬鹿が。流石に我らでも魔王の能力を全開放せねば相手は出来ぬ。どちらも無事では済まない』

(ふうん)

『故にこの戦いは最低限の解放すら許されない。魔王刃(ベリアルナイフ)と魔王槍(アモントライデント)は使えないものと考えておけ』

(刺すやつと切るやつね)

『……もうそれでよい。だが約束しろ、それらを使えば騎士達には勘付かれる』

(おっけおっけー。フィジカルも魔王クラスだし余裕でしょ)

『足元を掬われない様にな。我はしばし寝る』

(おやすみー)


 ふむ、己が身体ひとつで戦えと。


「にしし、面白いじゃん」


 ドンドンドン!!


「さあ選手の入場だぁぁああああ!」


 今、波乱の大乱闘が始まる。

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