第10話
ーーーー冒険者。
それはこの異世界において極めてポピュラーな職業である。
採取などの依頼もあるが、大半は魔物との戦闘を介するものが大半だ。場所によっては街の移動にすら護衛を必要とするらしい。
需要と供給を考えれば、冒険者とはつまるところ、現実世界のコンビニのバイトくらいの感覚だと思っている。
だがしかし、だがしかしだ。
わたしはそんな冒険者になる事は出来ない。
理由は極めて簡単だ。
転生した際に魔王グリードの魂と融合している都合上、抑え込んでいるがどうしても魔王としての片鱗が出てしまう。
「あの、悪い意味じゃないんですけど、少し邪な気を感じます」
出会ってすぐにハンナちゃんから言われたのだが、どう取っても悪い意味以外に聞こえなかったのは内緒。
僧侶と言えば聖職者、つまり魔王や魔物の敵である。他の職業に比べてそういうのに敏感なのだろうが、後から考えればハンナちゃんの言葉には助けられたと言えよう。
何でも、冒険者登録には適性テストらしいものが存在し、そこで悪しきオーラは察知されてしまうとの事だ。
街の入り口でも検問としてチェックは入るのだが、これは気合いで隠せるレベルであるのに対し、冒険者登録はそれとは一線を画すほど厳重だという。
グリ助曰く、漏れ出す魔王オーラの残滓すら掬い上げられ察知されるのは確実で、そうなった場合は捕縛からの処刑は避けられないそうな。
なにそれなんて魔女狩り?
つまりわたしは、この世界で冒険者になれない事が確定した瞬間だった。
閑話休題。
負け惜しみではないが別に冒険者にならなくとも金は稼げる。金が稼げるのなら異世界料理をたらふく食べられる。
依頼や換金の窓口はレック少年とハンナちゃんに任せれば問題ない。わたしは代わりと言ってはなんだが、魔物パゥワーを生かし彼らの成長をサポートする立場に回る。所謂プロデューサーだ。
「わたしの経験を活かせば、君達のステップアップは約束されたも同然だね」
「だからってーーーー」
わたしを先頭に、とある巨大な建物の前で仁王立ち。
「いきなり闘技場に参加とか馬鹿か!」
「初めて見たよコロッセオ」
賞金がとても良いので、モノローグもそこそこに、闘技場に急遽参加する事を決めた日の話でした。
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