第17話 協力者
教室を出ると心が廊下で待っていた。
「桃矢さん。どうでした?」
「ダメだ。惚けるだけでは飽き足らず挑発までされる始末だ」
「やはりそうですか。分かっていたことですが、話し合いなんて無謀ですよ」
「いや、こうやって接触できたおかげで良いものが得られたよ」
「良いもの?」
「心。少し面倒なことを頼むことになるけど、協力してくれるか?」
「勿論です。私だけではなく生徒会の力も借りることは出来ると思いますよ。何をするつもりですか?」
「少し強引な方法になるかもしれない」
そう言って俺は心にとある作戦を話した。
証拠を掴むためには現行犯か星を見つけるしかない。
基本、星というのは本人以外持っていても価値がないのだが、村上は星を隠し持っていると考えていた。
「相手を困らせるために星を盗んでいるのであれば盗んだ後は証拠が残るから捨てるのではないでしょうか?」
心のそんな疑問に俺は答えた。
「普通はそう思うよな。でも犯罪者の思考はまた違うんだ。勿論、証拠が残るというリスクはあるのだが、コレクションとして集める傾向が犯罪者には持ち合わせているものなんだ」
「どうしてそんなことをするんですか?」
「達成感を味わうためだ。犯人って実は勲章として集めたがる傾向がある。他人には理解できないけど、犯人にとってそれは快感を得るものだったりする。ほら、下着泥棒とか異性のゴミを集めたりとか他人に価値はなくても本人にとっては凄い価値があるっていうあれだよ」
俺がそう説明すると心は距離を置くように哀れな目で俺を見た。
「桃矢さん……もしかして」
「勘違いするな。俺はそんなことしないからな?」
「じょ、冗談ですよ。でも、どうしてそんなことを知っているんですか?」
「俺、何気なく生きているけど、事件に巻き込まれる体質なんだ。だから犯罪者に接触することがあったから段々、変な知識が付いてきたって感じかな」
「そうだったんですか。それで。もしその仮説が正しいとしたら星はどこに隠しているんでしょう。やっぱり自宅とか?」
「まぁ、大体見当は付くよ。俺は心見つけ出したくらいだ。星の一つや二つ、簡単に見つけて見せる」
「何か当てがあるんですか?」
俺はニコッと口元が笑っていた。
それから数日後のことである。こちらから動くというより向こうから動くこと目的とした作戦である。そして今回、一人協力者を用意した。
彼女は学校で最も信頼できる人物であり、その証拠によく教師から重要な案件を頼まれるほどだ。
そんな椎名さんは星持ちだ。しかも金の星を四つ所有しており、MAXの金の星までリーチときている。
現段階で盗まれる対象として最も有力な人物と言える。
「星を所有しいるかどうかは本人に聞く以外知るすべはないはずだ。その中でも持っていて当たり前と言えるのが椎名さん。あなたなんです」
「確かに星を持っていない方が不思議なくらい私には功績があります。それで今回私が協力することになったんですね」
「はい。勿論、俺が守り抜いてみせます」
「それはいいけど、私は何をすればいいの?」
「わざと村上の近くで星を落として下さい。勿論、態とらしくではなく自然にお願いします」
「なるほど。それで盗む意欲を高めるってことね」
「まぁ、そんなところです。しかし、今回は本当に盗まれて下さい」
「それじゃ私の星はどうなるのよ」
「安心して下さい。最後にはちゃんと取り返すので」
椎名さんは本当に大丈夫かと半信半疑であったが、最後には俺の作戦に従ってくれた。
椎名さんは作戦通り、村上の正面に向かって歩いた。
「桃矢さん。うまくいきますかね?」
「まぁ、なんとかなるさ」
俺と心は物陰に隠れて二人が接触する瞬間を見守った。
村上は歩きスマホ。椎名さんはやや早足で急いでいる様子を出していた。
そして次の瞬間、二人は派手にぶつかった。
「きゃっ!」
「わっ!」
村上は持っていたスマホを落とし、椎名さんはポケットの中身をぶち撒けた。
「す、すみません。急いでいたもので」
椎名さんは慌てて自分が落としたものを拾い集める。
「いえ、僕もよそ見をしていたばかりにすみません」
すると村上は自分の足元にあった金の星を拾った。
「桃矢さん。盗みますよ」
「静かに」
心は興奮したように言ったので俺は静止させた。
「あの、これ落としましたよ」
金の星を椎名さんに差し出した。
「すみません。ありがとうございます」
「気をつけて下さいよ。大事な星なんですから無くしたら大変だ」
村上はニヤリと微笑みながらそう言った。
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