第2話 救出
ある部屋に美少女が両手足を縛られている場面に俺は遭遇してしまった。
強面中年男性三人の同居人だろうか。
いや、そんな訳ないだろう。少なくとも家族でなければシェアハウスをする関係でもない。拉致監禁がすぐに浮かんだが、違う可能性も捨てきれない。
そういうプレイが好きでたまたまこの家に訪れているだけかもしれない。
念には念を。俺は確認のため、美少女に聞いた。
「えっと……君はここで何をしているの?」
「あなた、奴らの仲間? お願い何でも言うことを聞くから乱暴しないで」
息を荒げながら美少女は言う。
どうも話が噛み合わない。少なくとも特殊なプレイを楽しんでいるわけではないだろう。だったら話は早い。この子は故意でここにいるわけでも縛られているわけでもない。
全ては無理やりされていると言うわけだ。
俺はすぐに縛られているロープを紐解に掛かる。
「安心して。俺は奴らの仲間でもない。君、ここに連れてこられたの?」
「誘拐されました。もしかして警察の方ですか? 宅配員を装って」
「いや、装っているわけではなく本当にそうなんだけど。それにしても堅いな。何かナイフで切らないと」
切れそうなモノがないかと部屋を見渡すが、それらしきものはない。
そうだ。スキンヘッドにサングラスがナイフを持っていた。あれを借りればロープを切れる。
「ちょっと待っていて。切れそうなもの持ってくるから」
美少女にそう言って俺は玄関へ向かう。
思った通り、よく切れそうなナイフが外の廊下に転がっていた。
美少女の元へ向かおうとしたその時だ。ズボンの裾を掴まれた。
「テメェ。よくも」
フラフラの状態で強面の一人が最後の力を振り絞ってそう言った。
俺はその姿をジッと見つめた後、掴まれた反対の足で手を踏み潰した。
「ぐわわわっ!」
裾から手が離れたことで俺は美少女の元へ向かった。
「お待たせ。ナイフあったよ。すぐにロープを切るからジッとして」
「あの、早く逃げた方がいいです」
「大丈夫。例の三人は虫の息だよ」
「まさかやっつけたんですか?」
「まぁね。よし、切れた。次は脚のロープを切るから」
「ありがとうござい……危ない!」
「え?」
次の瞬間である。俺の後頭部に強い衝撃で激痛が走った。
振り返ると先ほど手を踏み潰した強面男がバッドで俺を殴りかかっていた。
「へへ。やったぜ」
「痛ぇな。なにしやがるんだよ」
「テメェ。何で気絶していないんだ」
「俺、石頭だからさ。それにあんたの手が負傷しているおかげで威力は大したことないのが災いしたな」
「くそ。テメェは俺たちの秘密を知られたんだ。生かして帰すわけにはいかねぇ」
もう一度、強面男はバットを振り上げた。
「きゃ!」と美少女は悲鳴を上げる。
「くたばれ!」
バッドが振り下ろされたその時だ。
俺は腕でバッドを受け止めた。ジーンと言う効果音が骨に伝わる。
「全く。部屋を間違えたばかりにここまで天罰が下るとは付いていないな」
「だ、大丈夫ですか?」
美少女は涙声になりながら言う。
「大人しく寝ていればよかったのにな」
「なっ!」
俺は脚に力を溜めてバネが伸びるように強面男の腹部に向けて放出した。
バコーンと数メートル吹き飛んで壁にぶち当てた。
「え?」と美少女は困惑していた。
何が起こったのか理解できない様子だった。
「とりあえず逃げるか」
「あ、はい。でも……」と美少女は手で身体を隠した。
そういえばこの子、ずっと下着のままだった。
「服は?」
「多分、ベランダに干されていると思います」
「ちょっと待っていろ」
俺はベランダに向かった。女物の服が一着干されていた。
「これを着て」
俺は少し生乾きの服を差し出した。
「ありがとう。あの、あなたは?」
「
「私は
「心か。よし、心! ここから脱出だ」
「はい」
俺は心の手を引いて監禁部屋の牢獄から外へと出た。
心は久しぶりの太陽の光だったのか。目が眩んでなかなか前を見られなかった。
俺が誘導して何とか一階まで降り切る。
「よし。まずは警察に連絡しないと」
スマホを取り出して警察に連絡しようとしたその時である。
心は俺に抱きついた。
「うえぇぇぇん。怖かった。怖かったよおぉぉぉ!」
ずっと我慢していたのか、心は警察が到着するまで喉が枯れるほど泣き叫んだ。
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