配達する部屋を間違えて届けたら誘拐された美少女の監禁部屋だった。持ち前の格闘技で誘拐犯を撃退したら美少女は御礼がしたいと○○を差し出した。

タキテル

第1話 勘違いから始まる物語


 貧乏学生の俺、菊池桃矢きくちとうやは原付バイクを走らせていた。


「ふぅ。この宅配で今日のバイトは無事終わりだな」


 とあるマンションの敷地内に原付バイクを停める。

 ヘルメットから帽子に被り直して後ろに乗せたピザの箱を三つ取り出す。

 そう、俺はピザ屋の宅配を専門とするアルバイトをしている。

 時給が良いという理由ですぐに原付の免許を取って働かせてもらっている。


「宅配先はこのマンションの403号室か。げっ! ここエレベーターないじゃん。めんど! まぁ、筋トレになるからいいけど」


 文句を言いながら俺はピザの箱を片手にマンションの階段を登る。

 この時、俺はまだ気づいていなかった。

 とんでもない失態をおかしているということに。

 本日、最後の宅配という開放感と疲労のせいで普段では絶対にしないミスをしてしまったのだ。

 そう、俺は宅配する部屋のマンション名を間違えていた。

 横文字で紛らわしいというのもあったが、マンションの看板をしっかり見ればミスに気付く。

 しかし、俺は看板を見るには見たが、蔓延になってハッキリと見ていなかった。

 そして客先に着いてもそのミスには気付かない。


「すみません。ご注文のピザ三つをお届けに参りました」


 呼び鈴を押しながらそう叫んでいたが、反応がない。


「なんだよ。注文しておいて居留守はないんじゃないのか?」


 俺は連続で呼び鈴を鳴らした。

 勘違いしているのは俺の方であり、身に覚えのないピザの注文で中の住民は困惑していることだろう。

 そんな時だった。

 ようやく鍵が開き、扉がゆっくりと開く。


「どうも。ご注文のピザを……」


 笑顔で挨拶をする俺だったが、突如凄まじい殺気に俺は身を引いた。

 スキンヘッドにサングラス。それに顔には傷がある中年男性がガンを飛ばす。

 完全にあちら側の人だと悟った。あれ? 電話では若い女の人だったような?


「ピザだと?」


「はい。Lサイズのピザ三つでお会計8500円になります」


「そんなもん頼んでねぇよ」


「え? そんなはずは……」


 俺は注文を受けた伝票を確認するため、ハンドバックに手を伸ばした。


「まさかテメェ!」


 するとスキンヘッドにサングラスはナイフを取り出して俺に向けて突きつけた。


「ひっ!」

「テメェ。宅配ピザを装ったサツか?」


「はい? 違いますって。ここって佐藤さんのお宅ですよね?」


「佐藤? 知るか」


 明らかに身に覚えのない対応をされて俺はようやく自分のミスに気が付いた。

 そういえば店長が茶色のマンションって言っていた。

 ここは白いマンションだが、老朽化で茶色に見えるだけ。完全にマンションを間違えてしまったようだ。


「サツなら容赦しねぇぞ!」


 興奮したスキンヘッドにサングラスは殺気を放ったまま、俺に向けてナイフで刺そうと迫った。

 部屋間違えただけでそこまで怒ることか?

 だが、このまま刺される訳にはいかない。

 俺はピザの箱を捨ててナイフを手で弾いた。

 キンッと効果音を立てながらナイフは回転しながら廊下へ飛ぶ。

 片手を痛めたスキンヘッドにサングラスは怒りで身体を震わす。


「テメェ。ぶっ殺してやる!」


 俺に殴りかかってきたことでその勢いを利用してスキンヘッドにサングラスに一本背負いを決めた。


「グハァッ!」


 ドンッと廊下中に叩きつけられた時の衝撃音が伝わる。


「ふぅ。ナイフを人に向けたら危ないだろ。正当防衛ってことで許されるよな?」


 俺の一撃でスキンヘッドにサングラスは気絶していた。

 一本背負いを決めた先にサングラスのレンズが割れていた。

 正当防衛とはいえ、流石にやりすぎたかと俺は逆に心配になった。


「もしもーし。大丈夫ですか?」


 ツンツンと指で突いてみるが反応はない。これはしばらく起きそうにない。

 面倒ごとになる前にここは退散しようかと思ったそんな時である。

 部屋の奥からゾロゾロと二人の強面の中年男性が玄関にやってくる。


「おい。何の騒ぎだ」


 仲間が倒れて俺が呆然と立っていたことで強面の二人は怒りが込み上げていた。


「テメェ。何者だよ」


「おい。兄貴が倒れているぞ。まさかお前がやったのか!」


 興奮する強面の二人。


「いや、だからただのピザ屋の……」


 俺が答える前から既に二人は殴りかかろうと迫っていた。

 答えさせてもくれない。だったらこっちにも考えがある。


「死ね! クソガキが!」


 凄まじい殺気に俺はキッと目を光らせた。相手は本気で俺に襲いかかっている。

 タダでやられるつもりはない。俺は持ち前の格闘技で二人の強面を返り討ちにした。


 ガッ! ドカッ! ボコッ! ゴッ! ドンッ!


 瞬殺で強面の二人はその場に崩れ落ちた。


「やべ。正当防衛でも少しやりすぎたかな? 加減出来ないのが俺の悪い癖だよ。本当、嫌になっちまう」


 己の力加減が分からずついやりすぎてしまった。

 相手も怒った理由があるはずだが、流石にこれは俺が悪いかもしれない。ちょっと反省。とはいえ、この状況を誰かに見られたら間違いなく俺が悪く見えてしまう。


「あ、あ、あ……」


 そんな時だ。部屋の奥からか細い声で震える気配を感じた。

 まだ誰か部屋にいるようだ。

 ここまでボコボコにしてしまったのだ。せめて住民に謝罪を入れる必要がある。


「あの、すみません。これはちょっとした事故でして……。本当、面目ない。なんてお詫びをしたらいいか」


 中腰になりながら申し訳なさそうに俺は謝罪をするため、部屋の中へ入る。

 人がいるにしては真っ暗だ。カーテンを閉め切っており、完全に光を遮断している。

 リビングとなるところには誰もいない。その横には扉があり、別の部屋があった。

 俺はその部屋に続く扉に手を伸ばした。


「失礼します」


 一言そう言って扉を開けた。

 すると、部屋の奥には下着姿の美少女が手足を縛られた状態で横たわっていた。

 


■■■■■■■

新作開始!

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