第14話:皇帝に挑む覚悟

 私は忌々しい思いで皇都を見下ろさねばなりませんでした。

 先ほどは楽々敗れた王都の魔法防御力が、目を見張るほど強力になっています。


 アルソン皇帝らしいと言うべきか、私を追い出した以上、私が敵に回ることも考えて、皇都の魔法防御力を上げる準備をしていたのです。


 まったくもって忌々しいことです!


 皇帝の権限で、魔力を持つ者を総動員したとしか思えない、余りにも強力な全体魔法防御です。


 この護りを突破してペンブルック侯爵の皇都屋敷を襲撃するのは、非常に難しいと判断するしかありません。


 絶対に不可能とは言いませんが、それをやるとアルソン皇帝に正面から喧嘩を売ることになります。


 この状況があったからこそ、ペンブルック侯爵は母上への攻撃を決断したのでしょうが、ベルドとは比較にもならない知恵者です。


 私がさっき皇都屋敷にいるベルドを叩きのめした時には、こんな全体防御魔法は発動していませんでした。


 ペンブルック侯爵は、母上を攻撃された私が激怒して最初に襲うのは、ベルドだと読んでいたのでしょう。


 最初にアルソン皇帝に私が皇都を攻撃してきた時の危険を説き、全体魔法防御を準備させておいて、それが完成してから母上に呪いをかけてきたのです。


 私がベルドを攻撃するのを待って、アルソン皇帝に私が謀反を起こしたと注進したのでしょう。


 腹が立つほど私の行動を読んでいます。

 忌々しくて無意識に地団駄を踏んでしまいました。


 こういう相手には力業は駄目です。

 先を読まれて罠が張られているに決まっているのです。


 どうやって罠をかいくぐるかですが、そう考えて行動することすら読まれている可能性が高いのです。


 さて、本気でアルソン皇帝と喧嘩しなければいけないのでしょうか?


 血みどろの戦いを引き起こし、皇国を大混乱させ、内戦状態にしたいわけではありません。


 城門の守備兵を通じて皇帝に事情を伝えるのが常道ですが、ペンブルック侯爵ならそれくらいの事は読んでいて、握り潰す準備をしていると考えるべきでしょう。


 まあ試すのは大した手間ではありませんし、皇帝にペンブルック侯爵の陰謀を証明するためにも、十三の城門全てから面会依頼を出す必要がありますね。


 どこか一つでもペンブルック侯爵に敵対する勢力が確保しているかもしれません。

 もう一つの策は、皇都外にいる者に手紙を託し、皇帝に届けてもらう方法ですが、これもペンブルック侯爵に敵対する貴族を通じて行わなければいけません。


 誰が誰と敵対し同盟しているか、全然わかりません。

 これまで魔力で全てを片付けてきた弊害ですね。

 ほんのちょっとだけ反省しました。


 いっそこの国や民のことなど考慮せず、力押しでペンブルック侯爵を叩いて、母上の呪いを解く方法を聞きだしましょうか?

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