第13話:愚者の罠

「弾けろ!」


 私は全身全霊を込めた一撃を放ちました。

 ですが単なる力業ではありません。

 込める魔力の指向性に細心の注意を払い、複数の魔法陣も組み込んでいます。


 私の一撃に対抗しようとした者は、私に絶対服従する呪いを受けるのです。

 魅了で思うままに操るのではなく、苦痛を与えて命じる呪いです。


 反抗してきた魔力には多数の個性がありました。

 防御魔法を展開している魔法使いと呪術師は、合計で百人を超えていました。

 よくこれだけの人数を集めたものだと、心底感心しました。


 ほとんどが下級の魔法使いと、魔法使いとも言えない呪術師ばかりでしたが、複数の魔法陣を上手く連携させて、魔力を効率的に使っていました。


「ウギャァァアァァァア!」


 彼らは私の一撃を受けて激痛にのたうち回り、その場で絶対服従を受け入れ、配下となる事を誓いました。


 そういう魔法陣を組み込んでいたので、自動的に全てが行われ完了したのです。


 敵の全体防御魔法陣が崩壊したので、手持ちも使い魔の半数、五十を送り配下に組み込んだ魔法使いや呪術師から情報を集めようとしました。


 偵察を送ったのは、全体防御に全員がかかりきりになっていたとは思えなかったからです。


 必ず反撃を担当する魔法使いがいるはずです。

 私が呪いをかけたギネビアとフローレンスを治療する魔法使いもいるはずです。

 全体的な指揮を執る優秀な魔法使いがいるはずなのです。


 これだけの人数を集める力があるのですから、上級はともかく、中級が一人もいないはずがないのです。


 案の定、私が送り込んだ使い魔に攻撃を仕掛けてくる中級魔法使いがいました。

 そのつもりで送り込んだ使い魔ですから、事前に色々な魔法陣を組み込んでいますので、中級程度の攻撃魔法は簡単に中和します。


 中和させるだけではなく、絶対服従する呪いの魔法を自動反撃する魔法陣も組み込んであります。


 結局都合十人の中級魔法使いを発見し、攻撃を受けるたびに反撃し、呪いをかけて私の配下に組み込みました。


 一応の安全を確認してから、不意討ちを受けにくい飛翔魔法を使って、敵の待ち受けるローレン城の本丸に乗り込みました。


「全てを話してもらいましょうか、母上に呪いをかけたのは誰ですか?

 呪いの魔法陣を教えなさい、解術の方式を教えるのです!」


 私が厳しく問い詰めると、次々と真実を白状してくれます。

 母上を呪った黒幕はペンブルック侯爵で、実行したのは私に受けた呪いを逆恨みしたギネビアとフローレンスでした。


 そもそも二人から攻撃してきたのに、身勝手も甚だしです。


 キッチリと落とし前をつけようと思いましたが、私がかけた呪いを解術するために、二人ともペンブルック城に行っているというのです。


 これはペンブルック侯爵にも落とし前をつけてもらわなければいけません。

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