第10話:魔法の隠れ家、辺境の楽園
母上が私が造った城を見て息を呑んでいます。
石造りの壁は真っ白で、陽光が当たるとまるでダイヤモンドのように輝きます。
優雅なアーチが連なる廊下は、美しい彫刻や緻密な細工が施され、まるで歩くだけで芸術の世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。
中庭に広がる庭園は、鮮やかな花々で彩られています。
優雅なバラや一面に咲き誇るチューリップ、その美しさはまるで絵画のようです。
花壇の隅々まで丹精込めて手入れされた花々は、風に揺れながら色彩の饗宴を演出し、見る者を心地良い魅了に導きます。
城内は広々とした造りで、高い天井に掛けられたシャンデリアから降り注ぐ光は、部屋全体を優雅に照らし出し、壮麗な光景を作り出しています。
豪華な絨毯が敷かれた床は、足元に優雅な柔らかさを感じさせ、歩くたびに踏みしめる音が華麗な響きを奏でます。
図書室に足を踏み入れると、数多くの書物が並べられた棚が目に入ります。
魔術で写本された貴重な文献は、知識と智慧の宝庫としてそこに輝いています。
静寂の中で本を手に取り、古代の知識や物語の世界に浸ることができます。
ですが母上が心から驚かれたのは城の見た目ではありませんでした。
「まあ、この子達は何者なの?!」
私が城の維持のために召喚した精霊や聖獣たちに驚かれてのです。
「この子達はブラウニーという家事を助けてくれる精霊よ。
お母さんの御世話をしてくれるわ」
「まあ、まあ、まあ、カチュアは悪い子ね、お母さんを年寄り扱いするの?」
「ふふふふふ、そんなことはないわ、でも二人きりでは色々忙しいのよ。
山羊や羊、馬や牛、鶏や鴨の世話はしなければいけないし、田畑も耕さなければいけないもの」
「まあ、まあ、まあ、とても忙しいのね。
でもカチュアの事だから、それも手伝ってくれる子がいるのではなくて?」
「あら、なんでわかったの、お母さん」
「だって、カチュアは魔導書を読んだり魔道具を作ったりするのが大好きだもの。
家事や農作業なんてするわけがないわ」
「さすがお母さんね、私のことは何でもお見通しなのね」
「それはそうよ、私はカチュアのお母さんだもの」
本当に幸せです。
誰に邪魔されることなく、何の心配もせずに、母上と二人のんびりと暮らせます。
私に晴耕雨読はむりだけど、晴れた日には魔法の実験をして、雨の日には魔導書を読み魔道具を作る、そんな生活なら私にもできます。
ブラウニーは少々癖があって、付き合い方は難しいけれど、服が欲しいブラウニーは沢山いるから、入れ代わり立ち代わり来てくれればいいのです。
それに精霊はこの子に限らないのです。
この世界にはまだまだ人に知られていない精霊がいるのです。
今は母上が驚かないように人に近い容姿の精霊に手伝ってもらっているけれど、母上が精霊に慣れてくれたら、キキーモラのような獣に近い精霊に手伝ってもらうこともできます。
畑仕事や遊牧は、カッパやヤマワラワが手伝ってくれます。
でも母上が怖がられたり気味悪がれたりするなら、無理に極東の精霊を連れてこなくても、地風火水の精霊に手伝ってもらえば大抵のことは簡単に片づけてくれます。
五獣や五竜、五麟に頼むと大ごとになるけれど、やってやれないことはないの。
お母さんが許してくれるのなら、スケルトンやゴーレムを使ってもいいのです。
「それにしてもカチュア、ここは二人で暮らすには大きすぎるのではなくて?
いずれはカチュアの旦那様や子供達で増えるとは思うけれど、それにしても、ローレン侯爵家の屋敷より大きく広いのは、やりすぎだと思うのよ」
「お母さんの言うことはもっともだと思うのだけれど、ブラウニー達が広い方がいいと言ったのよ」
「まあ、嘘を言ってはいけないわ、カチュアの嘘は直ぐに分かるのよ」
「え、何故なの、何か癖でもあるの?」
「うふふふふ、それは内緒よ、正直に言いなさい」
「お母さんには敵わないわね。
正直に話すと、造っていたら面白くなっちゃって、ついついやりすぎちゃったの」
ああ、とても幸せ!
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