第11話:凍りつく絶望の闇

「うっ、うぅぅぅぅ!」


「どうしたの、大丈夫!?」


 母上が急に苦しみだしました!

 今まで元気だった母上が急に病気になるなどありえません。

 だって私が毎日診察していたのです。


 呪われないように、呪い返しの魔法を幾種類も展開しているのです。

 長年かけて護りを高めてあった、あの塔の施していた以上の護りが展開できたからこそ、この城に移動してきたのに!


「直ぐに治すから、痛みを和らげるから、だから気を確かに持って!」


 何としてでも原因を究明して母上を治す!

 病気であろうと呪いであろうと、絶対に治してみせる!


 でも、母上が生きる気力を失ってしまったら、どうにもならない。

 どれほど苦しくても、どれほど痛くても、気を強く持ってもらわないと!


 病気の可能性よりも、呪いや魔法の可能性の方が強い。

 でも、私が展開した呪い返しや防御の魔法を越えて効果を現した。


 とても珍しく特殊な魔法だと思う。

 元の呪いや魔法が分からなければ、的確な治療や解術は不可能。


 でも、だからといって、何もしないわけにはいかない!

 せめて痛みや苦しみは軽減させてあげたい。


 いえ、駄目だわ。

 下手な魔法を使ったら、敵の魔法が強力になってしまうかもしれない。


 これだけ特殊で、呪いなのか魔法なのかも分からない秘術を使う相手です。

 恐ろしく凶悪で残虐な相手の可能性もあります。


 私が母上を助けようと、痛みや苦しみから解放しようと、魔法を使った途端母上が死んでしまうかもしれない!


 焦りからなのか、私が無能なのか、直ぐには何の手段も思い浮かびません。

 天才といわれ、思い上がっていました。


 私を敵にした時の場合を想定して、時間をかけて準備していたのでしょう。

 私もそれを想定しておくべきでした。


「石化!」


 あまり苦しむ母上を見て、このままでは母上の気力が持たないと感じました。

 もしかしたら、人間以外の何者かに変化させる呪いや魔法の可能性もあります。


 知らない魔法で変化させられたら、元の人間の姿に戻すのはほぼ不可能です。

 ですが、私が石化させておいたら、敵の呪いも魔法も一時停止します。


 母上の苦しみも痛みも停止します。

 私がかけた石化魔法ですから、解除するのも簡単です。

 その間に敵を探し出して解術方法を聞きだせばいいのです。


「よくもお母さんを苦しめてくれました。

 もう許しません、皇帝を敵に回そうとも、必ず殺します。

 いえ、簡単には殺しません。

 生まれてきたことを後悔するくらいの苦しみと痛みを与えてあげます!」

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