第3話:王宮の陰謀
厳かな大理石の柱と美しく彫られた彫刻で飾られ、一目見るだけでその威厳に圧倒される舞踏会場が、息を吞んだように静まっています。
高い天井と豪華なシャンデリアが煌めき、華やかな光が室内に満ち溢れていますが、今はその光が冷たい肌を刺すくらい緊張感があります。
床は磨き上げられた大理石で舞台を作り、優雅なダンサーたちが美しい舞踊を奏でるためのスペースとなっていますが、時が凍り付いいたように止まっています。
会場の壁面に掲げられた戦勝画や英雄の肖像画が、舞踏会場にいる王国貴族がどのように振舞うのか、値踏みしているかのように見えます。
金箔で飾られた額縁に収められた絵は、厳かな表情や力強い姿勢で描かれ、現皇帝の武と恐怖の力を称えるものでしたが、今は王侯貴族の勇気を試してかのようです。
舞踏会場の奥には、広大な宴会場が広がっています。
豪華なテーブルが並び、銀製の食器と高貴なワインが供されていましたが、王侯貴族が料理や飲み物を持ったまま固まっています。
宴会場の目立つ場所に、皇帝が武勇で広げた地域が詳細に描かれた特大地図が掲げられているのですが、それが王侯貴族の言動を制限しています。
皇太子の発現を皇帝陛下が知っておられるかどうかが全てです。
響き渡る華やかな音楽と歓声で満たされていた舞踏会場は凍り付いたままです。
皇太子殿下ジキルファストと異母姉アフロディーテが、皇族用の高く造られた壇上から私を見下ろしています。
殿下は、贅沢な紫色のシルクのローブに身を包んでいます。
その華やかな色彩は、彼の高慢な性格と相まって、まるで自己中心的な支配欲を際立たせています。
ローブの生地は滑らかで光沢があり、その豪華な光景は人々を圧倒し、彼の存在感を一層引き立てていますが、普段の傍若無人な言動で逆効果です。
胸元には宝石で飾られたゴールドの飾りボタンが輝いていた。
その輝きはまるで星のようであり、高貴な身分と自負を示す象徴となっています。
ローブの袖口にも同様の装飾が施され、彼の威厳と優位性を際立たせていた。
腰にはゴージャスなゴールドの帯が締められています。
その幅広い帯は複雑な模様が刻まれ、まるで王冠を思わせるようなデザインが施されているのが、自己の権力と地位への執着を感じさせます。
靴には高価な皮革が使われ、ゴールドの装飾が施されています。
細く尖った靴先が、殿下の高慢さと蛇のような性格を表しています。
髪は洗練されたスタイルで整えられ、きらびやかな王冠が頭上に輝いています。
その王冠には宝石が散りばめられ、殿下の虚栄心を象徴しています。
メイクも皇太子にしては派手すぎです。
強調された眉毛や目の周りの輝きは、高慢さと虚飾を一層際立たせています。
全身から漂う自己陶酔の雰囲気が、まるで陽炎のように揺らめいています。
一方異母姉のアフロディーテは、堅い質感のシルク生地で織られた黒いフルスカートのドレスに身を包んでいます。
シンプルなデザインは、彼女の冷たく優雅な雰囲気と相まって、まるで鋼のような強さを醸し出しています。
ウエストにはゴールドの細いベルトが煌めき、姉の皇太子に対する優位性を際立たせていますが、皇室に対して不遜だとは思わないのでしょうか?
ベルトの生地は深紅に染められ、光に当たるたびに微かな輝きを放っているかのようです。
まさに高貴さと権力を象徴するものであり、まるで王室の一員であるかのような気品に満ちていますが、命が惜しくないのでしょうか?
首元には、ゴールドの装飾のあるペンダントネックレスが輝いています。
その模様は細かく緻密で、宝石のような輝きを放っています。
ドレスの襟元にはゴールドのブローチが留められ、威厳を一層引き立てています。
手首には幅広いゴールドのブレスレットが装着されています。
その重みを感じさせる装飾は、威圧感と共に彼女の力を象徴しています。
指先には細かなゴールドのリングが輝き、異母姉の優雅な手つきにより一層の華を添えています。
髪はきちんとまとめられ、凝ったアップスタイルが彼女の頭上に広がっています。
ゴールドのヘアピンやクリップが髪を華やかに飾り、堅苦しい印象を一層際立たせています。
メイクはシンプルでありながらも品格を備えており、自然なベースメイクに控えめなアイシャドウとリップカラーが彼女の顔立ちを引き立てています。
全身から漂う凛とした雰囲気は、異母姉の冷徹で陰険な本性と相まって、まるで冷たい氷の女王そのものです。
ある意味では、異母姉の魅力を引き出していますが、皇太子同様普段の言動が悪印象に繋がっているのを、御存じなのでしょうか?
「何事があった」
皇帝陛下が戻って来られました。
重々しい、自分の体重が一気に数倍に増えたような、圧倒的な重圧です。
信義と友愛で周辺国と友好関係を構築し、皇国史上最も繁栄をもたらした先代皇帝とは正反対の、武と恐怖で周辺諸国をひれふせさせる尚武の現皇帝陛下らしい、圧倒的な威圧感です。
「皇帝陛下、由々しき事態でございます。
皇室に対する許し難い裏切りが発覚致しました。
カチュアが私を裏切っていたのです。
事もあろうに庭師と不貞を働いていたのです。
ここにいるアフロディーテが知らせてくれました。
カチュアに厳罰を下してください。
不貞を知らせてくれたローレン侯爵家には御慈悲を願います」
馬鹿の一つ覚えとはこう事をいうのかもしれません。
この一つの筋書きを一生懸命覚えたのかもしれませんが、さっきから同じことの繰り返しです。
まあ、臨機応変に話を作ったりしたら、噓八百の設定がボロボロと崩れてしまうでしょうから、同じことを繰り返すしかないのでしょう。
皇太子の能力は、鈍感力なのでしょう。
恐ろしい皇帝陛下の威圧感を全く感じていません。
姉のアフロディーテは歯の根もあわないほどガタガタと震えています。
姉は大欲非道の人で、自らの欲望を満たすためなら、笑顔で嘘を並べ立て、どのような悪事も平気で行うのです。
そんな姉が、物心ついた時から、本来自分のモノだったはずの皇嫡孫の婚約者の地位を、私が奪ったと母親から聞かされて育ったのです。
奪い返そうとありとあらゆる悪質な方法を行使したのでしょう。
ですがそんな姉でも、皇帝陛下の殺意の塊とも言える視線を受けては、恐怖で耐えられないのでしょうね。
「ベルド、何か言う事はあるか」
「ございません、ただただ御詫びするだけでございます」
あら、あら、あら。
父上は皇室との繋がりを、私から姉に変えるつもりだったのですね。
ですが、こんなに簡単に私の不貞を認めては、普通ならローレン侯爵家も処罰対象になってしまいます。
そう、普通ならば処罰対象です。
皇帝陛下が事前にこの茶番を認めておられなければ処罰対象です。
皇帝陛下が、血も涙もない殺人鬼の眼を此方に向けられました。
分かってしまいました。
皇帝陛下自身がこの状況を望まれたのですね。
皇帝陛下は私が目障りなのでしょう。
自身の武勇と決断力に自信のある皇帝陛下は、先代皇帝の遺訓とも言える皇太子と私の婚約が、忌々しくて仕方がないのでしょう。
ですが、これでスッキリ致しました。
私を縛る先帝陛下と先代皇室占星術師長様の鎖が断ち切れました。
私は自由になれるのです。
皇室皇国からも、ローレン侯爵家からも解き放たれるのです!
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