第2話:誤りの証明と陰謀の糸口
皇太子からの一方的な婚約破棄宣言です。
それも聞くに堪えない噓八百を並べ立てています。
私が父上や正室に少しでも愛されているのなら、異議を申し立てていたでしょう。
ですが私は忌み嫌われています。
まだ父上は、金もかからず楽に皇室と縁が結べると、役に立つ奴と多少は思ってくれているようです。
ですが正室は、私を殺してでも、莫大な工作資金が必要になってでも、姉のアフロディーテを皇太子の婚約者にしたいのです。
「カチュアは先帝陛下の威光を笠に着て、ロンデル男爵令嬢を貶め……」
まだ私を貶めるための嘘が続いています。
私が崩御された先帝陛下に寵愛されていたのをいい事に、ロンデル男爵家の令嬢を虐めて病気にしたと言うのです。
全くの嘘偽りです。
彼女を苛め抜き、心の病にまで追い込んだのは、妹のフローレンスです。
フローレンスは天使のように愛らしい容姿をしていますが、その性根は正室ギネビアの性格を受け継いでおり、陰険性悪なのです。
それにしても、皇太子は自分の言っている事が理解できているのでしょうか?
先帝陛下の御存命の時から、私が先帝陛下の威光を笠に悪行を重ねていたと言ってしまうと、先帝陛下が暗君だったと罵っているのと同じになるのです。
ちょうど皇帝陛下が席を離れたのに合わせて、私との婚約を破棄すると宣言して、悪口を言っていますが、これは皇帝陛下も御存知なのでしょうか?
「何と言っても許せないのは、不貞を働いた事だ。
しかも身分卑しき庭師と情を通じたと言うのだ。
何たる破廉恥!
何たる不行跡だ!
本来ならローレン侯爵家の存亡にも係わる裏切りだが、その不逞を暴いてくれたのもローレン侯爵家のアフロディーテなのだ。
よって余はその忠誠と勇気を評し、ローレン侯爵家に関しては不問とする」
やはりそう言う筋書きでしたか。
私の悪口雑言を垂れ流す皇太子の横に姉が立っていた時点で、こうなる可能性は考えていました。
いえ、確信していたといってもいいでしょう。
ですが、それでも、半ば壊れた心を抑えながら、その罵りを聞いているのは、先帝陛下と先代占星術師長様に恩義を感じているからです。
私と母上が生き延びられたのは、先帝陛下と先代占星術師長様のお陰です。
それが例え皇室や皇国の利益のためであったとしても、命の恩人なのは間違いありません。
皇室が望む限りは、皇室と皇国を護る義務があります。
母上がそう言い聞かせて私を育てたので、心身に沁みついてしまっています。
ですが、それは、皇室が望むのならの話しです。
皇太子は私をどうするつもりなのでしょう?
皇帝陛下はこの事に加担されているのでしょうか?
とても、そう、とても愉しみです。
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