第3話:冒険者ギルド



えーっと、確かこの道を真っ直ぐ進めば良いんだな。

よし!さっさと冒険者ギルドとやらに行って、冒険者になってみるか!


アグナレス、改めアレンはフロリアの街並みを眺めながら歩き出す。

武器屋に道具屋、他にも酒場に食材屋が並んでいる。

道は石畳で、とても歩きやすくなっていた。

他にも様々な出店や露店が出ていて、街は活気立っている。


人の波に飲まれそうになりながらも無事、冒険者ギルドに辿り着く事が出来た。

ドアを開けると、中は先程見た酒場のようになっていた。

真っ直ぐ進むとカウンターがあり、受付役の女性が3名立っている。

丁度1人の冒険者が、カウンターで対応してもらっているようだ。

入って右側には壁一面に依頼書が貼られていて、仕事を探してる冒険者で溢れていた。

左側はさっきも言ったように、酒場のようになっている。

テーブルや椅子が並び、角にはバーカウンターがある。

俺は真っ直ぐ空いてるカウンターへと向かった。


「あのー、冒険者登録したいんだけど」


「冒険者をご希望の方ですね!ようこそ!フロリア冒険者ギルドへ!私は受付けのエレナといいます!よろしくお願い致します!それではまず、この登録書に名前を記入してください!」


名前か。

下手に名前を増やし過ぎてもデメリットの方が多いからな。

とりあえずさっきと同じアレンで良いだろう。

名前を書いた後、登録書をエレナに渡す。


「アレンさんですね!では次にこの魔測水晶を握って魔力を注いでください!」


そう言いながらエレナが差し出してきたのは、透明で細長い水晶だった。


「魔測水晶...ってなんだ?」


「魔測水晶は、体内の魔力量と適性属性とその適性度、そして所有スキルの有無を測れるものです!つまりこれを使えば、アレンさんのステータスの一部を冒険者証にデータとして蓄積する事が出来るんです!」


「それが出来ると何かメリットでもあるの?」


「ご自身の成長度合いがわかるのと、個人情報になるので身分証としての価値が跳ね上がります!例えば国立の公的機関の使用料免除や、魔物の素材買取価格が10%高くなる等メリットがあります!」


よくわからないけど、やっておいて損は無いって事だよな!

ん?...でも待てよ。ステータスが表示されるって事は、下手したら竜ってバレるんじゃ。


言われた通りに魔測水晶を握って魔力を注いでみると、徐々に魔測水晶が光り始めた。


まずい!このままステータスを表示したら絶対竜だってバレる気がする!!


焦った俺は、思わず魔力を思い切り注いでしまった。


『パリィィィィィン!!!!』


....えーーーっと、割れちゃったね...魔測水晶。


あまりにも膨大な魔力が一度に注がれた事で、魔測水晶が割れてしまったのだ。

その光景を見ていたエレナは明らかに驚愕している。


「ど、どういう事!? 魔力水晶が割れるなんて!? 今までこんな事一度も無かったのに...」


エレナがあまりにも驚くもんだから、ギルド内に居た冒険者達の注目を集めてしまった。


あれ、これ逆に目立ってるんじゃ...


「あ、あのー。もう1つ魔測水晶ってあるかな...? た、たまたま魔測水晶が劣化してたのかもしれないじゃん!? だからもう1回測定すれば大丈夫なんじゃないかなぁ〜? なんて...あは、あはははは...」


これ以上目立つのはまずい!! 今度は慎重に魔力を注がなければ!!


新しい魔測水晶を受け取った俺は、極限まで押さえ込みながら魔力を注いでいく。


よし!今度は大丈夫そうだ!


「そのままこの冒険者カードに押し当ててください!」


「こ、こうかな?」


言われた通り冒険者証に魔測水晶を押し当てると、文字が浮かび上がってきた。



───────────────

│ 冒険者カード ⠀ │

│ │

│ 名前:アレン │

│ 冒険者ランク:Eランク │

│ 体内魔力:測定不能 │

│ 所有スキル:有り │

│ │

│ 【適正属性】 │

│ 火:SSS 水:SSS │

│ 雷:SSS 風:SSS │

│ 光:SSS 闇:SSS │

│ │

───────────────



「ぜ、全属性SSS!?1つの属性がSSSでも王宮宮廷魔術師の師団長レベルなのに、それが全属性ってありえないですよ!体内魔力も測定不能ですし。あなたは一体...!?」


取り乱すエレナ。

やばい、ここに来てまさかこんな事になるなんて。

ドラゴンだから使えるんですよ〜〜てへっなんて言えるわけないし。

さてどうしたものか。


「と、とりあえずギルドマスターを呼んできます!少し待っててください!」


そう言うと、エレナはギルドの2階に上がって行った。

しばらくすると、大柄の男とエレナが降りてきた。

筋骨隆々という表現がぴったりな男だ。

横に細身のエレナが居るから、余計に大きく見えるのかもしれない。


「よう兄ちゃん!俺はここのギルドマスター、ダイロンってもんだ。エレナから話は聞いたんだが本人から詳しく聞きたくてな。ちょっと上の応接室まで付いて来て貰えるか?」


どうする!?逃げるか!?

でもそんな事をしたら、ここまで来た苦労も水の泡だ。

一瞬悩んだが言われるがまま、俺はダイロンの後を付いていく事にした。



フロリア冒険者ギルド───2階



応接室に入った俺は、ソファーに腰掛けダイロンと対面している。

色々と事情聴取されたが、そこは衛兵に答えた事と同じ返答をした。

逆に、こっちも気になることがあったから色々質問させて貰ったんだが、どうやら全属性適性がある人間は今まで1人しか居なかったらしい。

というのも、大昔に現れた勇者が全属性使えたらしいんだが、それも今となっては伝承として残ってるだけみたいだ。


「お前さんのギルドカードに不備はなかった。つまり、本当に全属性に適性があるって事だ。まさかそんな人間が本当に居るなんてな。もしかして、勇者の生まれ変わりか?はっはっはっ!!」


いえ!ドラゴンです!!バチクソドラゴンです!!とも言えない俺は、愛想笑いを振り撒いておく事にした。


「まあ何にしてもだ。とりあえず、我がフロリア冒険者ギルドはお前さんを歓迎する。素性はわからん事が多いが、全属性を使える実力者を断る理由なんて無いからな。それにやましい事があるなら、声をかけられた時点で逃げ出す事だって出来たはずだ。お前さんの実力なら簡単にな。それをしなかった時点で信用して良いと思ったわけだ。」


あくまでも、合理的判断だと強調するダイロン。

ギルドとしてもある程度の実力がある者は、素性がわからなくても確保したいものなんだろう。

質の高い冒険者が多く所属するギルドほど、沢山の依頼が舞い込んでくる。

それによってランクの低い冒険者も仕事に困らず、ギルドも仲介手数料を安定して得る事が出来る上に、珍しい魔物の素材も買い取れるとあって、好循環が生まれるらしい。


斯して俺、アグナレスことアレンは冒険者になる事が出来たのであった。


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