第2話:とっ捕まりましたっ!



フロリアの街───正門前



「はぁ..はぁ...やっと着いたぞ!!」


空を飛べないのが、まさかこんなに不便だとは。

いや、飛ぼうと思えば魔法を駆使して飛べるのだけれど、それだと人の姿になった意味が無い気がしたのだ。

ティベリア火山からここまで約50km。

何度も休憩を挟んで、丸1日かけて歩いてきた。

人の姿になったばかりのアグナレスとしては、流石に遠い道程だったのである。


長い徒歩移動もこれで終わりだ!!この街に入れば新しい生活の始まりなのだから!!!

そう!俺はこれから人として生きて行くのだ。

その為には、絶対に自分が竜だとバレてはいけない。


ボロが出ないように気を付けないとな!


意気揚々と正門を通ろうとするアグナレス。

だがあと一歩で街に入れるというところで、衛兵に槍を向けられた。


「怪しいヤツ!そこで止まれ!!」


「えっ!?怪しいヤツって俺の事か!?」


なんで!? 俺何かしたか!?

普通に街に入ろうとしただけなのになんで止められるんだよ!!!

まさか...竜だってバレたとか!?


頭がパニックになるアグナレス。

もし自分が竜だとバレたのだとしたら、人に転生した意味が無くなるのである。


どうする!? この男一人なら殺ってしまおうか!?

そうすれば無かった事になるんじゃ...!?


そんな物攻な事を考えてるアグナレスに、衛兵は言い放った。


「当たり前だ!!森から全裸で現れて街に入ろうとする者が怪しく見えないわけないだろう!」


「....全裸?...あっ」


完全に服の事忘れてたぁぁぁあ!! てかドラゴンに服なんか着る風習なんてねぇっつーの!! どこの世界に服を着たドラゴンが居るんだよ!! 大概全裸だろ!! と思ったが、時既に遅かった。


「とりあえず事情聴取をさせてもらうぞ!着いて来い!!」


衛兵に捕まったアグナレスは、そのまま衛兵の屯所に連れて行かれ、事情聴取を受けることになるのであった。


アグナレス程の実力があれば、いつでも抵抗して逃げる事は出来る。だが、そんな事をしてしまうと御尋ね者となり、人の社会で生きていくには厳しい状況になってしまうのはわかりきっていた。

だから素直に捕まったのだが、さてここからどうするか。


「それで、お前の名前は?」


名前!? ここでアグナレスって答えたらマズイよな。

竜だってバレたら人間としてやっていけなくなる。

それだけは何としても避けねば!!


「えーっとア...アー..アレンだ!!」


「アレンね。どこから来た?それとどうして裸だったんだ?荷物も何も持ってないし。」


「ティベリアの方から来た。服は...えーっと。ティベリア火山に近付き過ぎて燃えてしまったり、道中で魔物にも襲われたんだ。荷物もその時に落としてしまって。」


「ふむ。まあここ最近、魔物の数も増えて来ているしな。でも裸で街に入ろうとするのはいかんぞ!」


「あー....はい...すみませんでした..」


ごもっとも過ぎて謝る事しか出来ない。


服か...本当に盲点だったな。


「それでこの街では何をするつもりだ?」


「えーと、それがまだ何も決めてなくて。とりあえず栄えてる街に向かって来たっていうだけなんだ。」


「はぁ、なるほどな。とりあえず事情はわかった。何もする事決めてないなら、冒険者なんてどうだ。ティベリアからここまで50kmくらいあるが、1人で歩いて来れたんだろ?なら多少腕は立つんだろうから丁度いいんじゃないか?服も手配してやるから、街の中で問題は起こすんじゃねーぞ。」


そう言われ服を受け取った後、俺は無事解放してもらえた。


思ったより簡単に解放されたな。

いやー、一時はどうなる事かと思った。

竜ってバレたかもって思った時は、心臓破裂するかと思ったぞ。

パッと思い付いた言い訳でも、意外と何とかなるものなんだな。


服も着たしこれでとっ捕まる事はないだろう。

とりあえず街にも入れた事だから、衛兵が言ってたように冒険者になってみるか。

人として生きるにしても、目標はあった方が良いだろう。

充実した人生を送るには目標、もしくは目的が必要不可欠だと思うんだ。

冒険者はそれらを見つける手段になるだろう。


そうと決まれば、いざ冒険者に!!.......えーっと...冒険者ってどうやってなるんだ?


冒険者のなり方がわからなかった俺は、さっきの衛兵になり方を聞きに行ったのだった。


「なあ、衛兵のおっさん。ちょっと聞きたいことあるんだけど良いか?」


「またお前か。なんだ?聞きたいことって。」


「冒険者ってどうやってなればいいんだ?」


「はぁ?お前そんな事も知らないのか。良いか?どの街にも冒険者ギルドっていうのがあってだな。そこで冒険者登録をすればなれる。この街だと、丁度この大通りを真っ直ぐ行けば突き当たりにあるから、そこで登録をするといい」


「あー、そうなのか!ありがとう!助かったよ!!」


衛兵のおっさんに心の底から感謝をしながら、冒険者ギルドに向かうアグナレスであった。


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