第5話 俺は、人生で始めてクラスの女子の家におじゃまする
読み聞かせボランティア当日になった。図書館で読み聞かせの本番の日だ。
——今日までに音読をして、どのように好きになってもらうかをとことん考えた。
二つのペースに分かれて、俺は低学年向けの「こんにちワン」を読み聞かせていた。俺の周りにはちらほら低学年の男の子と女の子がいる。周りは小学校一年生とか二年生の小さな子供ばかり。何とか問題無く読み聞かせを終えた。
「お兄ちゃん、楽しかったまた読んで! この犬のウ○コ面白い」
低学年の男の子は俺に無邪気に絡む。俺はこう言うのは苦手だ。次から次に子供が質問してくる。やはり俺コミュ障になっていたんだな。
「内野君、お疲れ様。読み方は面白かったわよ。子供達に受け入れられる読み方だったし、何とか思った通りの成果も得られたわ」
須々木先生のチェック。これでいい実験台になったんだろうか。
「こうして読み聞かせて、子供に面白さを伝えていく。人に本を教えること、理解してもらうように読むと言うことは受動的に問題を解くよりも勉強になるでしょ。これはある意味小学低学年相手でも、小学生の国語の先生出来るような技能に繋がるわ。来年は英会話とかに範囲を広げて英語を子供に教える能力とかつけさせるのもいいかもね」
また始まった。須々木先生の暴走が。というより江陽高校はどこまで暴走すれば良いんだろう。
「先生、もうそこまでつき合いきれません……」
これ以上須々木先生の暴走はゴメンだ。
「内野君、妥協はダメ。高い目標を常に持ち続けなさい」
今日は俺あの本でウ○コを通じて話の筋を楽しませることで精一杯だったぞ。子供はウ○コが好きだからな。目標エスカレートさせたら子供がパンクするぞ。そんな屁理屈を思ってしまった。
「消極的な内野君に対し、西原さんは本当に積極的だわね」
——西原さんの方を見る。西原さん担当していた高学年向けも終わったようだ。
「お姉さん、あの話の続きはどうなるの? 気になる」
「きっと、幸せなものを見つけていくんだよ」
高学年女子と友達絡みに近い関係になっている。西原さんは読み聞かせより小学生女子が好きなのがよく分る。本当に小学生との関わり合いは楽しそう。
「西原さんですが、あんな笑顔はクラスでは見ないです。私も正直驚いています。あれがクラスでの態度ならどれだけ学校生活が楽しいか私は思うところがあります——」
西原さんは同級生が苦手そう。俺と話してても分る。でも小学生相手が得意だと人はここまで変わるのかと感心している。
「とりあえず、今日は二人とも良い読み聞かせが出来ました。本当に人に教える力をつけたと思います。こう言うのを見たかったんです。今後の当校の生徒育成の参考資料として今日の件は考えていきたいです」
——俺たちは読み聞かせが終わると、副館長に会釈をして先生と共に夢の中に入り込んで現実から隔離されている西原さんと図書館を後にする。
一階図書館入口前でも西原さんの様子はどうにかしている。
「えへへ」
「本当に西原さんだらしない顔していますね。そんなに小学生女子が好きなようですね。本当に意外です。西原さんはまだ夢の中にいるようです。後は頼みましたよ内野君」
そう言って須々木先生が先に帰っていった。
「西原さん、帰るぞ」
「えへへ、本当に夢を見ているようだ。あの六年生女子の服装が可愛かった」
西原さんは小学生の服装までチェックしてるのか。もう小学生フ○チと言うところまで入り込んでるぞこれ。かなり重症だぞ。
「ほら、西原さん行くぞ、いい加減夢から出てきなさい!」
俺は怒ってしまった。まるで情けない妹に注意するように。その時だった。
西原さんが高校生女子に衝突した
「何処見てるのよ! しっかりして! もしかして貴方たち同じ江陽高校? 何であんたらカップルはこんな所で制服着て図書館でデートなんて生意気してるの、恥ずかしいったらありゃしない」
今日、俺たちは学校のボランティアと言うことなので二人して制服着ている。よく考えれば恥ずかしい。これからの行動はカップルとして見られる。でも西原さんが衝突した生徒は、受験参考書を手に取っている。だから高三だろう。受験で苛立ってるんだろう。
「今のちょっと嫌な感じだったね……同じ学校の先輩」
西原さんは我に返っていた。良かった。あのだらしない表情もなくなっていた。
「帰るぞ!」
俺は西原さんを先導し、図書館から出た。
「ううん、内野君、ちょっと、今日、時間ある? どうしても……」
「……どうした?」
西原さんから俺を積極的に誘う。何かあったのか?
「何時まで?」
「七時ぐらい。今日家で夕食食べていって欲しいの。この前、私を内野君の家に入れてくれたでしょ。だからどうしても私の家に案内したくて……」
今回は強引に俺を誘おうとする西原さん。何があったのか? でも今日は妹も家にいるし、両親も家にいるし、あまり日曜日に家族と合わせるのも億劫だ。だから今日ぐらいは他人の家で夕食も良いかもしれない。
「いいけど。何か特別なことでも?」
「やった! 内野君に、ちょっとしたお礼。良い事だから」
今日の読み聞かせが終わってしまえば西原さんと接点がなくなる。また西原さんは一人ぼっちになる。そんなのはあまりにも可哀想。だから延長戦してもいいか。
バスに乗ること十五分、俺の学区と逆の所、俺がたまに使うJRの郊外環状線と私鉄の交差する乗り換え駅、ここ僅かの間にタワマン街としてしまった地区、俺が幼稚園の時はまだここは開発途上だった。今となってはもの凄い通勤客でごった返すことで有名だが。
——駅の裏側の街区の所に、西原さんの住んでるタワマンがあった。
「これが、西原さんの住んでるマンション? ちょっとした城みたいだな」
五十階建てタワーマンション。通称タワマン。テレビで何時も出てくる地区。マダムとかサラリーマンの金持ちのフリした連中を欺してここに住ませようとする不動産のステマに完全に染まりきった地区。完全に格差社会のヒエラルキーを感じる。
「西原さんって、相当金持ちなんだね。こんな所相当年収ないと住めないぞ」
本当に金持ちだった。だからあんな喫茶店を利用できるんだな。
「入りましょう。案内するわ」
——タワマンの中に入っていった。玄関はまるで高級ホテルのロビーと同じ。セキリュティゲートをくぐり抜ける。凄い防犯意識。くぐり抜けると無数のエレベーター。低層行き、中層行き、高層行き。これらの階層にエレベーターが分かれる。西原さんが乗るのは中層階行きのもの。これでも中層階って、上には上がいるもんだ。それ以上の金持ちは皆高層階。格差社会はすごいもんだ。エレベーターもかなり速い。
二十九階まで上がった。このフロアで降りた。西原さんはこの階に住んでるのか。廊下は綺麗で怖いほど静寂。そんな不気味な通路を歩いて行くと西原さんの所に到着。
「さあ上がって」
——俺は西原さんの家の中に招き入れられた。
「やっぱ広いな……」
部屋の中は毅然としていた。部屋中が無駄なく整っている、俺の家のリビングみたいに色々なものが散在しているわけではない。
とにかくこのリビングは広い。ソファーとテレビの間隔も広くテーブルも広い。俺の家の倍以上の広さはある。こんな所で毎日一人過ごしているのか。とんでもない高校生なんだな、西原さんは。
奥にあるガラス窓の向こうには、日が暮れ始まるこの季節、少しずつ煌びやかになっていくんだろうな。夜になったらもっと綺麗になるんだろう。
「こんな凄い家に一人住んでるのか。恐ろしいな……」
「うん、私が小五の時にここを買ったが直ぐにアメリカ転勤になって何年も置き去りになってしまった。でもこの家は資産だし、今は価格上がってるからそれはそれでいいけど。何度か帰国してこの部屋の維持はしていた。昨年高校生になった時に戻ってきてまた今年両親がアメリカに呼び戻されて今はまた一人……」
こんな環境に一人で住んでたら西原さんは確かに静かな性格になるんだろう。不気味なほど整然としたキッチンとリビング。奥には家族の個室。両親の個室は今も使われていないのだろうな。全てピカピカだ。
「こんな所で寂しくないか? 風呂とか食事とか掃除は全部しているのか?」
幾ら高級タワマンと言えども、こんな綺麗な部屋は整理しないと維持できない。
「うん、私、両親がずっと忙しかった。子供の時から家事掃除とか全部家のことはやっていたからね……」
何という生活力。もう完全に専業主婦並み。さっきはあんな幼い言動取っていた西原さんには全然想像も出来ない。俺がここに住んでたら一週間もしない間に散らかしまくるな。それだけは絶対俺自身あり。それにしても親孝行すぎる西原さん。見直した。
「私は、夕食の準備をするから、内野君は好きな作品を、そこのDVDケースから取り出して見てていいよ」
俺は、大型テレビの横のDVDケースを見る。そこにはディズニーからハリウッドまで様々なジャンルのDVDがぎっしりと並んでいる。これ全部買ったらどれだけのお金かかるんだろうか。一資産だ。
「西原さんって、映画好きなんだ……」
「うん、私、パパの影響で、色々なアメリカ映画は見てきたわ。暇会ったら片っ端から見ていくのも私の趣味の一つ。アメリカでもブロードウェイにはよく行った」
あの子供っぽい西原さんでも大人向けの洋画とか好きなんだ。案外。それでも横の棚にはディズニー映画も幾つかあった。誰でも知ってるような作品のタイトルも数多い。まあ西原さんらしいチョイスだろうが。
俺は数ある洋画の中で「スターウォーズシリーズ」を選んだ。
「それ、完結編。スカイウォーカーザーガの最後、感動した」
選んでDVDを入れる。
とにかく大迫力、シネコンにいるみたい。ソファも柔らかい。家のちっぽけなテレビなんかとは大違い。何から何まで身分違い。
俺が大迫力の宇宙船の航行シーンを見とれてる時、西原さんは何かバタバタ忙しい。部屋の行き来をしたり、浴室に行ったり、キッチンで調理する音から、とにかく部屋中をバタバタしている。何だろうか気にはなる。
「料理、慣れてるんだね……」
「うん、本当に。小学校低学年の時からだからそこだけは自信ある」
慣れた手つきでドンドン調理していく。エプロン姿は本当にお似合い。外を見ると段々陽が落ちていくのが分る。
スターウォーズに夢中になっている間に、テーブルが賑やかになっていた。
「今かなり良いシーンだけど、そろそろ夕食が出来たので途中だけど食べましょう。そのDVDだったら貸してあげるわ。以前ラノベ貸してくれたお礼の意味もね」
俺はテーブルに腰掛けた。そこに並んでる料理は、照り焼きチキン、マカロニポテト、ミネストローネであった。
「これって、アメリカ料理なの?」
何で照り焼きがアメリカ料理なの? と思った。
「そうよ。私達アメリカに住んでる間にアメリカの味に慣れてしまった、今日は私達が慣れた味を教えてあげるわ、食べましょう」
「いただきます」
俺は先ず、照り焼きチキンから手をつけた。日本のとはどう違うのだろうか?
「何か普段食べてるのと比べて甘い感じがするけど、それはアメリカ風味なの?」
「うん、アメリカでは照り焼き大人気なんだよ。あっちでは日本のと違って、ソースかけたりしているの。アメリカのファーストフード店でも『Teriyaki』ってアルファベットで看板が書かれたのはかなり多かった」
「バーガーも日本のマ○ド○ルドとかが出しているテリヤキバーガーと同じスタイル?」
「そうそう、アメリカにも照り焼き料理の時は米が着くこともあるわ。アメリカの味付けはたまに濃い味付けのがあるから、大体米を食べれば味は薄まるからね。
やはりアメリカも日本も共通的な人気はあったんだ。
「日本食って、アメリカでも人気あるんだな、案外」
「寿司屋も多かったわ。ただアメリカの場合サーモン握りが人気あった」
ポテトとかミネストローネとかも手をつけてみる。チーズが割とこってりで典型的なアメリカ料理だな。こんなのばかり食べてたら確かに太る。でも西原さんは太っていないし、体の管理は問題無いか疑問に思った。
「日本食よりもこってりしているな。かなりボリウムがある」
「そうでしょ。私もアメリカ料理は好き。ケチャップとかポテトは私みたいなお子様の舌には向いてる味付け。でも食べ過ぎは注意していた。野菜も多く食べてたし、アメリカでは太ってたら出世は出来ない。最悪左遷やクビにされることもあるから。日本より厳しいのよ」
「だから、西原さんもアメリカでは野菜ばったり食べさせてたとか?」
「そう言うことだわ。アメリカでは野菜の摂取が大事で健康管理とかにも大きく影響するからね、だからミネストローネとかつけてカロリーコントロールもしたわ」
ミネストローネの酸味が利いてて旨い。おかわりしたくなる味だ。
「なんかこうして食卓を囲むのは久しぶり……懐かしい……」
西原さんは照れた表情をした。
「ずっと一人だったもんね、こんな感じで過ごしたんでしょ?」
「うん、孤食がずっと続いていたからね。こうやって話ながら食べるのは好き……」
俺もぼっちが多いから何となく気持ちが分る気がした。俺は好んでぼっちになってるけど西原さんは女性だ。やはり一人には出来ない。
「それを言うなら、夕食食べに来ようか?」
「本当に? やった! 夫婦ごっこのようだね。同棲しているとか。よかったらお泊まりとかしても良いんだよ」
「ち、ちょっと。夫婦は言い過ぎだよ。そんなことしたらクラスメートに何されるかわからない」
相変わらず空気読んだり出来ず、話したことについて過剰な想像をするのも西原さんらしい。でも何らかの優しい居心地を感じた。思ったことを直ぐに口にして疑問も持つことも多いが、家のことはしっかりしているし、先生の話も聞く。西原さんは本当は相当しっかりしてて、それだけ家のことを支えてるので色々あるんだろうな。西原さんの知らなかったことがまた一つ知り合えた。
——夕食を食べ終えた。
「ごちそうさま、美味しかった。俺のカロリーコントロールもしてくれ」
「嬉しいわ、今度弁当を作ってあげましょう」
「いいな、頼むよ」
西原さんは優しい。主婦力もある。俺の嫁もこんな人が良い。欲張りすぎだ俺。
「じゃあ、そろそろ帰るね……」
「まだ一つ残ってるよ。お願い、これが本番」
「何があるの?」
不思議に思った、何を強引に誘ってるのか? それともさっきの強引な態度はこれをやりたいからか? と思った。
「家の浴室を味わってほしい。タワマンの風呂を見せたいと思って。内野君も汗掻いてるでしょ。そんなベタベタな体はいけないよ。それを洗い流して。お願い」
さっきよりも強引さが目立つ。やはり西原さんだ。
「分ったよ。入るから。タワマン風呂は始めてだから経験してみる」
「嬉しいわ! 味わって欲しい! 綺麗に洗い流してね。浴室はあっちだから」
何でこんなに西原さん、嬉しそうなんだろう?
不可解ながらに、俺は浴室に向かった。
何でそんなにお風呂に入って欲しいんだろう? タワマンの風呂は最高だというおもてなしのつもりか? 疑問だらけだ。
脱衣所にはカゴがあった。何かトランクスみたいな履き物がカゴの中に入っている。そこに置きメモが入っていた。
「内野君へ、風呂に入るときはこのトランクスを履いて入浴してください。この風呂の決まりなのです、お願いします」
黒字に白いストライプのトランクス。水着みたい。これはプールでも使えそうだ。何でこんな要求をするんだろうと謎だらけ。これもアメリカの文化なのか? 西原さんが潔癖症なだけなのかも。家の中は綺麗だ。タワマンらしく夜景が見えるからその対策なのか?
「履き心地は良い」
適度にフィットするトランクス。俺はそのまま浴室に入った。
——浴室は流石に広い。流し場は大きく取っておりシャンプーからリンスまで一通り揃っている。スイートの風呂みたい。家の風呂なんかとは全然違う。
でも窓はなかったようだ。夜景は楽しめなさそうだ。それでも高級な風呂。こんなの毎日浸りたいと思う。
その時、脱衣所から何か音がした。泥棒などいるはずがない。ここには俺と西原さんしかいないから。
風呂の扉の方からわずかに人影がすけている。西原さんがいるのが分った。
「内野君、風呂気持ちいい?」
「うん、風呂最高」
「じゃあ、ちょっと開けていい?」
なんてこと言うんだ。まさか、トランクス一枚あったのはそういうことだったのか? 何で俺の裸姿が見たいんだ? 何でだ? まあいいや。俺はトランクスのズボンを上げて西原さんに返事をした。
「いいぞ、何?」
疑問に思う。こんなことのためにトランクスを履かせようとしたのか? 西原さんは恐る恐る浴室の扉を開けた。
——そこには水着姿の西原さんが立っていた。
着用しているのは、前回プールでみかけたあの時と同じ「6―2 西原」と胸元に名札が書かれたあのスクール水着。
「内野君、一緒に入って良い?」
なんと言うことを言うんだ。俺は理性が吹っ飛びそうになった。
「何でそう言うことを言うんだよ。ふざけないでよ。何でわざわざそんなきわどい姿に?」
西原さんはにやっとして前屈みにして俺の顔を見上げる。
「見てしまった。内野君、スク水の小学生女子、好きなんでしょ。あんな所にあの本隠してまで見ると言うことは好きということ。小学生女子、好きなんでしょ。嘘つかなくて良いよ。内野君のロリコン」
あの本のせいだ。あんなモノがバレてしまった。本当に罰が悪い。これなら妹にバレた方がマシだったか。出方を間違えた。もう遅かった。
「私、内野君にどうしてもお願いがあるの、それはこの水着を着用してお風呂に一緒に入らないと話せないことなの。だからお願い、良いでしょう。内野君がスク水小学生女子が好きなのは事実だし、最高でしょ……」
西原さんは子供のおねだりする目線で俺を見つめる。頬が赤くなっている。
胸部から腹部までの瑞々しい体つき、そして幼い幼児体型。低い身長にあどけない童顔だからこそ白い肩紐のついたワンピース型の、そして名札入りのスクール水着がとても似合う。しっかり太股や胸元などがしっかり食い込んで、名札の所が大きな山になっている。凄く嫌らしい。胸の成長がとても早い小学生に見えてしまう。
「内野君。じろじろ見すぎ。やっぱり好きなんでしょ。嘘つかなくて良いよ」
「すまない、西原さん、もの凄く似合ってるし、いいぞ」
西原さんの美しい、そして幼い体つきを見とれてしまった。
「内野君、正直だね。やっぱり小学校高学年の水着姿。あの年齢って大人でも子供でもない微妙なムズムズする体つきだもの。私、内野君に借りた本を読んでオタクが何が好きなのかを調べたの。オタクなら否定しないからね」
「うん、まあ。俺の心理にぴったり。西原さん」
そう言いながら西原さんは浴室に入っていった。
「いっぱい私を見てね」
——俺と西原さんは向き合う形で浴室に入った。浴室が広いので西原さんとはぶつかることはない。結婚したらこれが日常になるんだろうか。本来なら、道徳に反する。お互い水着で見つめ合う。俺の心臓の高まりは止まらない。本当に西原さんのこの姿、ヤバイ。
「……用件って、何?」
俺は顔を赤くしながら理性を抑制しつつ、質問した。
「きょう、ボランティア終わってしまえば、内野君との接点がなくなってしまう。まだ軽い友達の関係だけど。私、内野君とプールに行きたい。大型のレジャープールに」
「プールって、そんな姿で?」
「いいや、私、今日のボランティアで小学生と向き合って本当に楽しかった。でも、それは私が高校生で読み聞かせる立場。私どうしても小学生になり切りたい——」
謎だ。どうして小学生になりたいのか。
「小学生って、どう言うこと?」
「私、恥ずかしくて、誰も一緒にプール行ける友達いなくて……私、どうしても小学生の水着着てプールに行きたい……」
俺もこれに首をかしげた。
「小学生の水着って、スクール水着で十分だろ」
そのとき西原さんは、水しぶきをあげて立ち上がった。
そして、俺の方を前屈みで見つめる。西原さんのスクール水着は水で密着しているが、胸の谷間が強調され、そこだけは隙間から見える。ヤバイ。
「私、これでもこのスクール水着は前言った通り大好きな宝物。こんな野暮ったい、ダサイ、内野君のような幼女ロリコンオタクのような男しか好まない水着でも自分は変身できる、それぐらい今私の気持ちは重症なの……」
本当に西原さんの胸はヤバイ。高校生からしても大きい部類に入る西原さんの胸。それを小学生に変装したら、とんでもなくヤバイ巨乳になる計算。
「その内野君がじろじろ見ている胸だってこの大きさなら小六ならもう完全にグラビアレベル。それも5の数字を右に棒を足して6と書いたら尚更やらしいでしょ。5年生では余裕で着れた水着も6年生になったらキツいし。私もこれでも結構このサイズは胸のせいで相当キツい、そんな嫌らしい姿を見せてるんだから最高の喜びでしょ」
俺は愛しく思った。こんな水からロリコンの欲望を満たすような姿をわざわざ水から言い出すようなほど、こんなのどの風俗店行ってもこんな設定はないぞ。
「で、頼み事って何?」
西原さんは、再度お湯につかって俺の方を見る。
「一緒にレジャープールに連れて行って欲しいの。私、どうしても小学生向けのお洒落な可愛い水着を着てプールに行きたい。プールに行くときに、兄役として行って欲しいの。私が妹訳で小学生になり切ると言う演出で。そしたら小学生用の水着が着用できるから。どうしてもお願いしたい」
——寂しそうな表情になった。
「兄妹役って、そんな水着姿で?」
「その前に水着を購入したい、小学生向けの。それをショッピングセンターで。スクール水着ではなく小学生用の可愛いデザイン水着を着て泳ぎたい。ああ言う水着に憧れ、渡米してずっと悔しい思いをしている……」
「そんなに、プールに未練があるのか……」
「もの凄く。津村さんとかわいい水着着てプールに行く約束が叶わなかった。もう今更一緒に行くなど無理……」
「だから俺と一緒になのか。妹に変装って、そんなこと出来るのか?」
確かに西原さんは童顔だ。小学生で体の成長が止まってると。ランドセルを背負い小学生の服装を着せれば確かに小学六年生と見間違う。ヤバすぎる。
「内野君の大好きな、小学生の女の子のタイプは分った。だから、ああいう小学生を演じ切るから一生のお願い! 服なら小学生の服がまだあるし、それまだクローゼットの中に残っているから!」
ここまで強く要求されたらもう断るという選択肢はなかった。
「分ったよ。つき合うよ」
——俺は風呂から出て、風呂用の椅子に座った。
「……に、西原さん」
西原さんも風呂から出て俺の後ろにぴったりとくっつく。体が触れ合う。そんな過激な西原さんの姿を直視できない。
そして俺の背中を、全身でこすり始めた。西原さんの柔らかい大きな胸が背中にくっついた。ずぶ濡れの水着越しに。柔らかさが伝わってくる。体の力が抜ける。
「ダメだ、西原さん。上手すぎる。俺たちはつき合ってないんだし、もう少し理性的にしてよ、凄い過激だ……」
黙ったまま、西原さんは腕とか背中とか体を石鹸で洗い始める。
「内野君の体って、かなり硬い、魅力的だ……」
「昔は、陸上やってて、今でも自主トレしているからかなり体の硬さには自信ある」
西原さんの体は柔らかい。本当に気持ちいい、体のあちこちが限界まで覚醒する。もう股間が限界に近いところまでヤバイ状態になっている。苦しい。そういう状態を想定してトランクスを置いてたのか。なかったら、マジで死んでたな。
「どう、流してあげる……」
細い、柔らかい声で西原さんはささやく。
「楽しみでしょ。私と一緒に行くの。小学生の水着着て、それでプールで遊んで、もうあの本の世界やラノベの世界そのもの。それが現実に体験できる。内野君にとっても欲望は満たせるし、私も長年の欲望を果たせる。両者の願いが一致する。楽しみだよ——」
ドンドン俺の体への密着が激しくなる。背中はもう完全にすりついている。俺の体はこのスクール水着の生地と西原さんの柔らかい体で体中が激しい刺激に襲われている。
「もう……本当に……やめてくれ。俺、もう……ネジ外れそう。もう理性吹っ飛ぶ一歩手前・・・・・・」
「私、そんなに良い体ではない……津村さんのように大人っぽく身長も高くない。だからこんな水着でも似合う……」
「何で、津村……が」
「可愛いし、背も高いし、明るいし、凄く羨ましい……」
西原さんにも劣等感はあるのか。でもそんな西原さんの体が俺の体を限界まで刺激する。
そして体を洗い流すために西原さんは手を使って体を洗い流した。西原さんの手の柔らかさが別の部位を激しく刺激する。
「もういい加減にしろ。おれ、本当にトランクス脱ぐぞ。股間が限界なんだ。それとも西原さんの体を思いっきり触ってやろうか……大変だぞ。本当に俺西原さんの体とかにとんでもないことするぞ、そう言う状態なんだよ……」
そう言う言い方すると西原さんは、俺への接触をやめた。
「男の人って、限界があるの知らなかった。ロリコンの内野君でも程度ってあるんだね」
おいおい、お前が言うかよ。
「……でもね、私言いたいことが言えて良かった。内野君に私の言いたいこと言えて、かなり刺激的なことも言えた。どうしてものお願いだから……」
小悪魔的な目線で俺を見つめる西原さん。でも妹としてみると本当に可愛い。俺の妹なんかより全然妹らしい。本当にラノベのヒロインのようだ。そして愛しい。西原さんの愛しさに負けてしまった。これで俺はプールとそのための水着購入のショッピングに偽兄妹の兄役として行動することになった。
西原さんは笑顔になった。
「ありがとう。内野君が兄役、私が妹役ね。ショッピングセンターとプールは。私、内野君の理想の妹になるからね。妹として内野君の理想的な妹になるからね」
「うん、俺も楽しみ。ラノベの世界をリアル化なんてマジであり得ないほどだからね。ヤバイ。考えるだけでまた体が……」
これで週末の予定は決まった。
「私、先に出るね。私の姿で満足してくれて嬉しいよ。もっと可愛い理想的な水着を見つけられたら良いね。でもこれは言っておく。内野君のロリコン変態えっち」
そう言いながら、西原さんは浴室から出た。
——浴室に取り残された俺はその後、まだ体の刺激が止まらないのでトランクスを脱ぎ、一通りその周りを始末して体を洗い流した。体を完全に石鹸で綺麗に洗い、西原さんが着衣場から出たことを確認して浴室から出た。人の家ですみません。ちゃんと排水溝周りは綺麗にしました。
「西原さん、おつかれ。今日は楽しかった。週末楽しみだね。一緒に買い物行けるの」
「私もね。来週も頑張ろうね」
タワマン玄関まで見送ってくれた西原さんを後にして帰路についた。
「クラスにバレないように、西原さんを守らなくては——」
帰り道で、そんなことばかり考えていた。
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