第18話「仙術・縮空」
仙術学園のグランド。
今日も仙術の授業である。
「今日は、昨日の縮地に続いて、仙術の基本となる
サトコ先生が説明をする。
グランドにベニヤで出来た的が立てられている。
「縮空は空気を気で固めて撃つので、破壊力がある距離は20メートルくらいまでです」
サトコ先生が教師用と書かれたベニヤに向かって手の平を向ける。距離は20メートル。
「いいですか、しっかり見ててください」
サトコ先生の手のひらに青白い気が集まり玉となって縮空砲を撃った!
ベニヤの的は割れて穴が空いた。
オオオオォォォ……
生徒達から感嘆の声が出る。
「皆さんも各自の名前の書かれた的を狙って撃ってください」
グランドには36名分のベニヤ板が並べられ、それぞれの的に名前が書かれている。
「タケゾウ先生、気を手に溜めるって、どうやるんですか?」
初雪がたずねる。
「みんなは仙丹を食べているから、手の平から気が出せるだろ、それを内側に集めて固めるんだ」
初雪がやってみると手の平に青白い気が出るが、固まらない。どんどん気が手の平からこぼれていく。
「気の先端を動かして丸めるんだ」
タケゾウ先生は初雪に教えるが、なかなかできない。
男子生徒は、わりと気を固めるのはできるようだ。
「これを、どうやって飛ばすんだ?」
野球のボールのように投げるが、気で出来たボールはピンポン玉のように軽く5メートルも飛ばなかった。
仙丹を使い始めて二日目か……ぜんぜん使い方はわかってないが、やる気はありそうだな。
どれ、少し見てやろう。
「般若の目!」
タケゾウ先生には物事の真実を見抜く『般若の目』と言う能力があった。
……お父さんが引き裂かれた 孔雀明王の印 呪法 球電 天狗 恐怖 死……
……強い力 未来 仙術 人生を変える
右目を取られた 女の魔物……
家を壊された おやじは入院 全身打撲……
般若の目を使うと生徒達の思いが見える。
魔物に遭遇している者が多いな。
仙術を身につけることによって魔物を倒そとしているのか?
三年では難しいな……
タケゾウ先生の目から見ても生徒達の仙術を学ぼうとする気持ちに嘘偽りは見えなかった。
「どう、生徒達、真面目にやってるでしょう?」
サトコ先生がタケゾウ先生にたずねる。
「真面目と言うより、切実感? まるで身につけないと死んでしまうかのようだ……」
「さすがね、般若の目を使うと見えるのね。ここにいる生徒の多くは魔物によって死ぬような目にあっている者が多いの。役野くんなんかは早く仙術を身に着けないと本当に殺されちゃうかもね……」
❃
二年前。
「おじさんが亡くなったのは、病死と言っていたが、本当は魔物に殺されたらしい。遺体を見たが強い力で体が引き裂かれていた」
親戚の葬儀の帰り父親の運転する車に
「魔物ってなに? そんなものがいるの?」
「役野家は役小角の子孫だ。昔、役小角に封印された魔物が最近出てきて子孫を探して殺しているらしい」
「まさか、魔物なんて昔の作り話でしょ?」
「はははははっ、聡志はまだ魔物を見たことがないのか……もう車の上に来てるぞ!」
聡志が車の上を見ると車の天井からカラスのクチバシのような物が見えた。黒いクチバシから顔も出てきてキョロキョロと車の中を見回している。
クチバシのある人は車の天井をすり抜けてきて、聡志の父親の中にスルスルと入っていった。
「ケケケケケ、ドライブしようぜ! お前、役小角の子孫だろ! 役小角の子孫は、みんな殺せって言われてんだ」
カラス天狗は人に憑依することが上手で、聡志の父親は、体の中に入られて上手く運転ができない。このまま車を崖から落とすつもりのようだ。
聡志の父親は法力を使い、なんとかブレーキを踏んで車を停止させた。
「聡志、サバ缶を俺の口に入れるんだ!!」
聡志は車の中にあるサバ缶をあわてて取り、缶を開けると父親の口の中に入れた。
「そうだ、サバ缶の汁も入れてくれ! 天狗系の奴らはサバが苦手なんだ!」
聡志の父親から憑依していたカラス天狗が出て来た。
「この野郎、気持ちの悪い物を食べやがって! 臭くて体に入ってられないじゃないか」
天狗は、非常に鼻が効くらしく犬並みだと言われている。
何故か魚の
「孔雀明王の印! おん まゆらんてい そわか 球電!!」
聡志の父親は両手の間に青白く放電する丸い玉を作ってカラス天狗に投げると、カラス天狗の全身を丸い玉は包み込んだ。
カラス天狗は電気でしびれて動けないようだ。
「仏罰の矢!」
聡志の父親は、まるで弓と矢を持っているようなかっこをすると、青い矢が現れカラス天狗に向けて放たれた。
カラス天狗の胸に矢が刺ささるとカラス天狗は消滅した。
「お父さん、今のは……」
聡志がたずねる。
「役小角の子孫には法力を使える者が多い。殺されたおじさんもカラス天狗くらいは倒せる法力を持っていたんだか……おそらく、もっと強い魔物と戦ったんだろうな……」
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