第12話「導引の歴史」
『仙術学園高等学校おづぬ』第一回の入学生は三十六名。
才能があれば人数制限は無かったのだが、今回は、この人数だけだった。
学校の授業。
「今日の授業は『
生徒全員が知らないようだ。
「初めて聞く言葉です」
「そうよね、ほとんど知られてないからね、ヨガはこんなに普及したのに……導引とは東洋医学です。ヨガも漢方薬や鍼灸と同じ東洋医学です。では、西洋医学とどこが違うか?」
サトコ先生が生徒を見回す。
「あなた、どう? 」
「あたし、ですか……そうですね……なんとなく東洋医学は全身を治すような……」
「そう、それでいいです。西洋医学の薬はとても良く効くんですけど、病名が決まらないと薬が使えないんです。それに引き替え、東洋医学は病名がなくても治療ができるんです。全身の気の流れを整えるんですね」
「それでは、この学校では病気になったら東洋医学で治すんですか?」
静が質問をする。
「静ちゃん、安心して。病気になったら病院に連れていきます。西洋医学は特効薬で治る病気には良く効きます。それと、外科手術は西洋医学ですね。慢性的な病気や西洋医学で苦手な分野は東洋医学の方が優れているものがありますね」
サトコ先生は黒板に
「これは、最古の導引図として、中国の馬王堆漢墓の遺跡から、導引が書かれたシルクが出土されています。これにより、今から2,000年以上前に、すでに導引は行なわれていたと思われます」
生徒達は2,000年前の導引図を見ている。
「日本では、
「あたし、剣闘士のゲーム持ってます! 古代ローマのグラディエーター」
初雪が言う。
「初雪ちゃん、たぶん字が違います。日本から、当時は隋や唐と言われていた今の中国に渡った人達だから」
「えっ、中国なの?」
「導引は中国で5,000年くらい前から行われていたのではないかと言われていますが、その頃は、まだ文字はなかったようで、文字や図としては2,000年くらい前からです。有名な導引の書物は
「超ロングセラーじゃん!」
「そうね。後亀くんは三国志は知っている?」
「ゲームでやったよ」
「あ〜っ、ゲームね……それには
「……華佗は出てます。
「そう! 良いゲームね、それは。その五禽の戯れは踊りのようなものだったらしいけど、一種の導引なのよ。他にも現代でもお祭りなどで行なわれている踊りも導引と呼べます」
「盆踊りでもいいんですか?」
シザワ(男子)が言う。
「肩より上に腕を上げたり、腰をひねったりするのは導引と言ってもいいと思います。ただし、行とは言えませんけどね」
「先生、導引と気功は違うんですか?」
「気功と言うのは、わりと新しい言葉で体を動かす健康法を総称で気功と言っています。わかりやすい例で言うと素手で闘う技を格闘技と言うようなもので、その分類は非常に多くて数えきれないでしょう」
「それでは、導引というのはひとつなんですか?」
スギヤマ(男子)が言う。
「導引というのも総称で、個人で編み出した技や流派も合わせると無数になります。しかし、大きく分けると二つです。
「異性から精気を吸収するのいいね!」
役野がはしゃぐ。
「わが校は清浄派です。皆さんには三日月流導引を覚えてもらいます」
「なんだ、清浄派か……」
サトコ先生が役野の頭を軽くこぶしでグリグリとする。
「役野くん、栽接派は昔の皇帝や大金持ちがやっていたもので、しかも秘密主義のため、今はほとんど行われていません。しかし、男の子が女性に興奮するのが一種の栽接派かもね」
「先生、日本では導引は使われていたんですか?」
オクヤマ(男子)が言う。
「いい質問ね。江戸時代に
「それじゃ、中国には残っているんですか?」
ササキ(男子)が言う。
「それが、中国では戦乱や革命で、ほとんどが途絶えてしまい、多くの仙術家の人は台湾に居るという噂はあります」
「導引というのは、もうあまり残ってないんですか?」
初雪が言う。
「導引は昔から伝わっている家系もあり、人に伝えてる人もいます。形を変えて別の呼び名で広がっているものもあり、日本でも別の名前でいっぱい書籍化されています」
「導引というのは魔法のような物ではないんですか?」
静がたずねる。
「静ちゃん、この学校で教える仙術は魔法ですが、導引は誰にでもできる現実です。関節の動きをなめらかにして体を温める事でミトコンドリアや白血球に体を修復してもらうんです」
「ミトコンドリア?」
静は意味がわからなかった。
「そのうちわかるわよ。自分の体を守ってくれる神様、仏様よ」
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