第11話「赤鬼」

 仙術学園、校長室。

 校長先生とサトコ先生が話している。


「日本政府に日について連絡したが、日と言う者の動きが怪しいことは政府も気づいて、調べているらしい」

 校長先生は先日の日が大地震を起こすと言う予言が頭から離れなかった。


「日とは何者なんですか? やはり、魔物?」

 サトコ先生も入学式の爆発を忘れられなかった。

「何とも言えないな〜 二郎坊くんは何か知っているのかもしれないが」

「あの二郎坊ってのも学校に入れて大丈夫なんですか?」

「僕の予知では、彼が学校で問題を起こすことはないんだが、日との関係があって、二郎坊くんによって日本の未来が大きく変わるだろうな」


「何か大きな事件? このあいだの爆弾みたいな?」

「この間の爆弾は挨拶ていどだろう。我々仙人を殺そうとしたけどね……」

「仙人の敵なんですか?」

「まだわからないけど、二年前の愛知県の赤鬼事件と三年前の北海道の地震に関係しているようだ」


 ❃


 教室。

「ね〜前季まえき君、車椅子なのは事故なの?」

 役小角の子孫、役野が隣りの席の男の子にたずねる。役野は、元はえんのの姓だったが明治の改名の時に野をつけて役野えんのに変わったらしい。


「あ〜これはビルが崩れて下敷きになったんだ」

「えっ! ビルが崩れるって地震?」

「いや、二年前の愛知県に現れた赤鬼は知ってる?」

「あ〜っ、知ってる。あれって本当の話しなの? CGじゃないかって話しもあるけど……」

「あれは本当だよ。僕は、あの日、名古屋のデパートの中にいたんだ。そうしたら、いきなりビルが崩れだしてコンクリートの破片に挟まれて二日間そのままだった。もう駄目だと思ったよ。でも、デパートの壁が崩れる時に赤鬼は見たよ」

「ニュースでやっていたけど、身長二十メートルの顔の赤い怪物で愛知県で暴れまくったってやってた」


「あの怪物を退治したのは仙人で、この学校の先生だよ」

「本当かい、そんな凄い仙人がいるの!?」

「その人だけじゃないけど、何人かの仙人で退治したらしいんだ」

「ニュースでは怪物を退治したのは仙人だとは言ってなかったけど……」

「あ〜っ、それは、仙人の事はまだ国家機密でテレビなどでは報道されないんだって」


「君、やけに詳しいね」

「僕は、救助隊の人に救出されたんだけど、入院先の病院に赤鬼と戦った仙人がいて、僕と一緒に車椅子に乗ってリハビリを受けてたんだ」

「へ〜っ、車椅子の仙人?」

「その人は、もう回復してるよ。能除先生っていうんだ。その人から仙人の事を聞いて、この学校の事も聞いて受験したんだ」


 ❃


 二年前。

 名古屋市。

「このきしめん、お出汁が効いていて美味しいわ」

 日がきしめんを食べている。

「日様、そろそろ伯耆坊ほうきぼうが暴れ始める頃です」

 弟のトキもきしめんを食べながら言う。

「ここのきしめん屋さんは美味しいから壊れなければいいけど……もう、街に人が多すぎるのよね。この辺の街を全部ぶっ壊して、富士山に赤い爆弾を入れて噴火させれば、けっこうすっきりするんじゃない?」

「そうですね、北海道沖の海底で爆発させた赤い爆弾も成功しましたからね」

「日本の人口を半分くらいにしたいわ。何かいい方法はないかしら?」


 ❃


「三日月さん、この味噌煮込みうどん、麺が硬くないですか? 茹で方がたりないんじゃないかな?」

「能除さん、これは、こうゆうもので硬い麺なんですよ」

「そうなんですか?」

 日が名古屋できしめんを食べている時に、三日月勘蔵と能除も名古屋で味噌煮込みうどんを食べていた。


 店が揺れだした。

「地震かな? 変な揺れかただな……」

 急いで店の外に出ると、バカデカイ魔物がいた。

「三日月さん、魔物ですね」

「そうですね。また大惨事が起きるのか?」

 二人は以前に深海魔物クラッベと戦っていた。


 魔物は名古屋の街を壊しながら進んでいく。


「ノインさん、すいませんけど音叉の槍を持って来てもらえませんか?」

 能除が電話をかけている。

「魔物か!? テレビでやってるよ。俺も行ってやるよ」

 ノインもクラッベと戦った一人である。

 今は能除の奥さんである。


武蔵たけぞう、すぐに来れるか? あいつを倒すには、お前の般若の目が必要なんだ!」

 三日月も電話をかけている。

「わかった。すぐに行く」


 自衛隊の飛行機が魔物に対してミサイル攻撃を開始した。

 魔物は自分の体をおおうように風のバリアーを出した。まるで台風の目の中に居るようなものだ。

 ミサイルは風に阻まれ魔物には当たらない。


「あなた、音叉の槍!」

 ノインが縮空を使いやってきた。

「あ、ありがとう……ノインさんも戦うの?」

 ノインは黒いマントを羽織り、やる気満々である。

「ちょっとだけ手伝ってやるよ」


 三日月勘蔵が作戦の指揮を取る。

「まずノインさんが煙幕を張り、すかさず能除さんが音叉の槍で攻撃、その後に私が攻撃して、最後は武蔵が核を破壊するという手順で」

 作戦はできた。

 魔物は名古屋の街を破壊し、浜松、静岡と移動して富士山に登っている。

 よく見ると何かを持っている。

 魔物は富士山の火口にそれを投げ入れた。


 魔物は手を上げおたけびをあげている。

 しかし、何も起こらない。


 ノインが煙幕を張る。

「暗黒魔法、煙幕」

 ノインに煙幕を張られると目の前が真っ暗になり何も見えなくなる。

「右目、もらった!」

 能除が音叉の槍で魔物の頭から右目を斬った。

 魔物は右手で能除を振り払ったが、能除に受けたダメージは大きく隙だらけである。

 目の前に構えている三日月の姿に気づいていない。


「必殺! 半月!」

 三日月が魔物を真っ二つに切り裂いた。


「核はどこだ!? 般若の目!」

 切り裂かれた頭の部分を見る男、般若の目は真実の本質を見抜く力がある。これで隠されている魔物の核を見る。魔物は核を壊さなければ再生する。

「見つけた!」

 日本刀で核を斬る武蔵。三日月勘蔵の長男である。


 魔物は核を斬られガラスが割れていくように体が砕け、やがて消えていった。

 気で出来た体は核を斬られると消滅する。



「なんてこと! 八大天狗の伯耆坊がやられたじゃない! あの半分に切り裂く技は天仙の技のはず……富士山の火口に投げ入れた赤い爆弾も爆発しなかったし。なんなの、あいつら」

 日が怒っている。


 ❃


 能除は音叉の槍で一撃を入れた後に、魔物の反撃にあって吹き飛ばされ全身に怪我を負い、静岡も浜松の病院も怪我人でいっぱいで、重症の能除は、けっきょく名古屋の大きな病院に入院することになった。

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