第9話「入学式」

 仙術学園高等学校おづぬ入学式。

 学校の体育館で入学式が行われる。

 ステージに校長先生が上がる。


「皆さん、入学おめでとうございます。皆さんは、これから三年間で仙術を学びます。仙術の修行は『舟行く道が道の道なり』と言われ道は有って無い物です。さらに自分がどこに進んでいるのかもわからなくなります。仙術というのは本来は長い修行が必要なものです。数ヶ月で咲く花ではなく何十年もかけて大きくなる大木のようなものです。あせらず一歩一歩進んでください」


「校長先生の祝辞でした。続きまして……えっ、あっ、ちょっとすいません」


 予定に無い、着物を着た小柄な女性がステージに登っていく。


「皆さん、ワタシはといいます。かつてヤマト国でこの国を支配していました。皆さんは、お日様と呼んで下さい。もっとも、皆さんと合う事も、もう無いと思いますが……」

 日は入学する生徒を見渡す。


「なるほどね〜 見たことのある顔がいっぱいあるわね。仙人は何度も生まれ変わると言うけど、本当ね。特にあなた!」

 日は一人の生徒を指刺した。

「あなた、ワタシを封印した憎たらしい役小角にそっくりよ。生まれ変わったの?」


 日に言われた生徒はキョトンとしている。

「ぼ、僕は役小角の子孫です……」

「そう、子孫なの、つまらないわね……あなたにこれをあげるわ」

 日は、そう言うと役小角の子孫の生徒に単三乾電池のような物を投げた。


「なんだこれ? 数字が出てる30…29…28…」

「では、皆さん、ご機嫌よう」

 そう言うと日は空間に消えた。


 縮空!?

 あれは、凄いエネルギー!

 爆弾!?

「Go-on! 超空間!」

 女性の職員が叫ぶと体育館の中に小さなブラックホールが現れた。

「君、それは爆弾! ブラックホールに投げ入れて!!」


 あせった生徒は爆弾を床に落とした。

 10…9…


 隣りにいた車椅子に座っている生徒が、自分の車椅子を倒して床に転がり、爆弾を拾いブラックホールに投げ入れた。

 3…2…1…


 爆弾はブラックホールに入った瞬間に爆発して、爆風で体育館の屋根が吹き飛んだ。


 ❃


「なんだ? 体育館が爆発したぞ」

 入学式をサボって学校の屋上にいる二郎坊。

 何をしてるんだ? 派手な入学式だな、行けばよかったかな? しかし、オレが人間に化けて一日を過ごすのは魔力の消耗が激しすぎるんだよな〜

 何かいい方法はないかな?

 幽体になって誰かに取り憑く方が楽なんだが……


 そういえば、あの女生徒、リスに『一緒に勉強をしましょう』って言ってたな……

 リスなら憑依しても魔力の消耗は少ないから楽だな……

 よし、あのリスを探すか。


 ❃


「あらっ、ずいぶん爆発が小さいわね。学校全部が灰になるはずだったのに……」

 縮空で移動した日は爆発の小ささに不満だった。


 日は日本国の女王だった。


 三国志の時代、しょくは対立していた。

 日は魏に使者を派遣し、魏と同盟を結んだ。

 魏からの贈り物の中に不老不死の薬、仙丹があり、それにより不老不死になった。

 また、派遣した使者に魏の道教どうきょうを学ばせ、道教の呪術を研究し、独自に鬼道きどうを完成させた。

 

 鬼道により、怨みをもつ者の魂を魔物とすることができ、自分の城を護る兵士とした。


 時は流れ西暦600年頃、夜空に流星が流れ、落下した。

 日は、落下した石を拾った。

 それは珍しい赤い石だった。

 その赤い石には宇宙に流れる赤い力を貯める性質があり、その力で赤い仮面を作ると、堕落した修行僧を天狗にすることに成功した。

 さらに八人の大天狗を作り日本を統治したが、役小角により封印された。


 ❃


「トキ、赤い爆弾の仕上がりはどう?」

「はっ、開発は順調に進んでいます。爆弾と潜水艦もまもなく試験段階になります」


 トキは日の弟。

 魏からの贈り物の仙丹は二つあり、最初に弟に食べさせた。以来、日とトキは不老不死となった。


 日は人の多くなり過ぎた今の日本を住みづらく思い。南海トラフの断層に赤い力の爆弾を使い人口的に地震を起こし、大津波で日本の人口を減らす計画をたてていた。



 








 




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