第3話 Valentineにて③

「待てよ」「嫌です」

Valentine以降、このやりとりばっかりだ。僕のお礼が言いたいだけな気持ちを知らずか?彼女は毎日何時もするりと手の中の文鳥の様にするりとすりぬけてゆく。苛々した僕は教室から、ダチと逃げようとする彼女に大声で「待てよ」と叫んだ。クラスメートがザワザワざわつく。

「お礼が言いたいだけなんだ」弱腰になって大声を謝る僕に「ならホワイトデーに義理クッキーください」と彼女。だから「義理じゃない」「本命とでも」「いい加減にしろ」「じゃあ、なんなんですか?」と彼女も叫ぶ。「お礼だ」もう一度穏やかに言ってみると「はぁ?」と変顔をされた。だから「ホワイトデーを利用するならお礼のクッキーだ。君は僕の義理の相手じゃない。人間関係築けてないだろ」そう言って突き放すと、彼女はほたほた涙を垂らした。だから僕はこう付け加えた。「僕に関わりたいんだったら、普通のクラスメート以上になる事」妥協すると「ワケわからない。いったいなんなんですか?」ヒスる彼女に付け加えた。「僕らの友達になる気はないのか?」その言葉を聞いた彼女は「失恋ですか?それとも病気の克服を願ってる?」言い換えして押し黙った彼女に「病人なら病人って言えよ。ちゃんとそういう対応するから」と僕が怒ったところで、彼女のダチが「はいはい冷静にお二人さん」「少し距離をおこうな」と割り込んでくる。「わかった」僕は生徒手帳の1枚を破り、すらすらっと連絡先を書いて彼女の嫌がる右手に握らした。「アンタ卒業して、それっきりを狙ってるだろう?」「だから、余裕のある時に連絡してきな」病人になら、これくらい譲歩できると僕がまくしたてると、彼女は涙顔のままこくんと頷いた。その表情が小動物みたいで可愛らしかったというのは、少し鼓動が速くなった、僕だけの秘密だ。




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