第44話『別荘:ジュマ&ボンテの場合』

 ジュマとボンテの別荘は、ボンテが元々暮らしていた海獣人たちの住みかにもなっている海獣島に建てられた。


 珊瑚礁の美しいこの海域は、かつての噂のせいか、手付かずの状態になっていた。島内には、鮮やかな淡水湖に滝もあり、ジュマは以前ボンテとの再会をした際に訪れた時から、再訪を決めていたのだ。


 自然に寄り添うように、気を遣いながら、島を丸々リゾート整備したジュマは、バカンスの楽しめる地として必要になるコテージ等を同時に建て、それまで漁船に頂戴と貰いにいっていた海獣人たちが、自ら物資を入手するためのインフラとしたのだ。


 海の怖い話として噂になっていたおかげで、魚だけに止まらず、時に酒や調理された食事などに加え、ロープや布、木箱といったものも入手することになるのだが、それらを自ら作る技術を持っていない。仮に技術を伝えても、海での生活に適応した彼らには器用に使える五指がなくヒレであり、陸上に上がって生活することはできるが、陸上で出来ることに限界があったのだ。


 そこで、各地に旅行会社のようなものを作り、そこで物資や金銭のやり取りを行い、海獣島でバカンスしてもらうという仕組みを考えたのである。


海の幸の入手は彼らにとって容易く、既製品の売買だけなら問題なく行える。

元々知能は、人間や獣人たちと大差がないのだ。

 勿論必要な場合に備えて、人間や獣人、魔人のスタッフを配置しておくことで、業務はスムーズに行うことが出来る。


 最初は、想定外な事にも多々遭遇したものの、軌道に乗り始めると、貴族や王族を中心に人気となり、毎年の予約までするどこかの双子王子のような者も珍しくなくなった。


 また、海獣人たちは、自分達で考え、バナナボートのようなものを開発して、一大人気アトラクションとしたり、漁師たちと協力して追い込み漁の手伝いをするなど活躍している。


 ジュマ&ボンテの別荘は、そんな海獣島の海沿いに建てられた。リゾート地から近いのだが、別荘を挟んだ反対側には海獣人たちの寝床となる入り江があるなど、リゾート客にはあまり近付いて貰いたくない場所がいくつかある。

 そこで大きな別荘を間に挟むことで近付きにくくなるようにする目的もあるのだ。


 別荘は、先の目的もあり、かなり広い平屋建てで、プライベートビーチや桟橋が設けられている。

 リゾートついでに訪ねてくる、各国の王族をもてなしたり、話し合いをしたりということもあり、各部屋も広く設計されている。


 どこかの双子王子ラキアとパキラに至っては、コテージに3泊の予約で来ておきながら、日程は10日間だったりと、泊まる気満々を隠す気もない始末である。


 更に、ある時パルパが悪ふざけで過激な水着をデザインしたところ、人気ブランド化するという想定外もあり、海獣島にブランドショップを出店したパルパは来訪ひんどが高いくせに基本的に泊まっていく。

 ボンテ大好きエミルもしょっちゅう遊びに来て、当たり前に泊まっていく行くので、ジュマとボンテの別荘として作ったはずのこの別荘は、実質共用別荘化しているのである。


 ある時、ペレス国王とラキシア国王に、そんな愚痴を溢したところ、揃って

「名分はともかくリゾート地だからな」

とのたまい、各々がちゃっかり連泊していったのであった。

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