管理者からのコンタクト

第45話『子供からの産業革命依頼』

 お祭り騒ぎと混乱が同居した世界の平和記念日も遠い過去の話と皮肉れるような平凡な日常が戻って久しい頃、パルパは別荘で何やら作っていた。


 現場にはジュマも呼び出されていた。

2人が作業部屋に籠って、もう2日が経とうと言う頃、近所一帯に聞こえる程の興奮した歓声があがった。


 この時何が行われていたのか。話はエミルがパルパに頼み事をしたことに始まる。


(エミル)

「子供たちが遊びながら学べる知育玩具を作って欲しいんだけど」


 積み木やパズルや舟の模型といったものを、パルパは手慣れた手付きで数日のうちにいくつも作り上げると、エミルは大いに喜んだ。

 しかし、ある程度年齢が上がってくると、これでは役不足である。将棋のようなボードゲームならば問題ないのだが、エミルは動力を持ったものが作れないかと言ってきたのだ。


 地球のような文明の利器があるならばともかく、この世界にあるものや魔法やスキルでどうにかなる範囲での製作となると、なかなか困難である。

 そこでパルパはジュマにヘルプを出した。ジュマからは、バネやゼンマイならば作れるだろうとアドバイスし、協力してゼンマイ式の舟やバネ式の馬車の模型といったものを作った。


 そんな具合に玩具開発を進めていく中で、ジュマが「あ、ポンポン船があった」と言い出したのだ。

作るのも簡単でメカニズムもシンプルそのもの。このポンポン船が、子供たちに爆発的な人気となったのだ。

 仕組みが知りたいという要望に、ジュマが駆り出され、沸騰している鍋の水蒸気の説明からスタートして、蓋がパカパカ音を立てるのは何故か、といった具合に講義を行った。


 そして、子供たちとポンポン船を動かしている時

「これ、大きく作ったら乗れる?」

の一言が子供たちから発せられた。


 これが、パルパとジュマが作業場に籠ることになった経緯である。


 ジュマは、子供たちの問いに、正直答えに困った。実際、仕組みを考えれば実現可能なことではあるのだが、問題はこの世界であることだった。大型化することによる気圧の負荷に耐えられる強度、もしくは力を逃がす構造が求められる。

 子供が1人乗れるものならまだしも、恐らく子供たちの頭の中にあるのは最低でも漁船サイズの船。ある程度のスピードも求めていることだろう。力不足のローソクはエネルギーとして論外だし、火災を大敵とする船でどうやって熱源を確保するのか。


 これらを条件とした場合、恐らく実現は不可能なのではないか?

これがジュマの頭の中で行われた自問自答だったのだ。


 パルパがいくつか試作するも、タンク型では気圧により間もなくタンクが潰れ、コイル型では人を乗せて動かす程の推力を得られない。数を増やしても、納得して貰えるようなスピードには至らず。試作は船の形状で水の抵抗を減らすところにまで及んだ。


 取りあえず子供を乗せて動かす事には成功した為、それで不可能ではないと言うことを伝え、パルパとジュマは引き続き試行錯誤を続ける事にしたのだ。

 そして同時に、この世界で実現できる動力の確保を目標に動き始めた。

かつて地球で蒸気機関の発明から産業革命へと繋がったように、この世界における産業革命の礎を作る事を決意したのだ。


 そして、何度もアイデアを出し合いながら、失敗を繰り返す日々を送りながらも、理不尽の理としての活動もしていた。

 となれば、面々が顔を揃える事になるのだが、そうするとパルパが持ち前の助平力を発揮する事もある。

 以前、魔王から事情を聞いたエミルを捕らえた時の話を思い出してからかった。


(パルパ)

「後でたっぷり犯してやろう。その後はジュマにでもくれてやるか!」


 瞬時にエミルがパルパまでの距離を詰め攻撃態勢に入る。

パルパは逃げる。


(パルパ)

「加速!加速!ブースト!」


 その様子を呆れて見ていたジュマがふと閃いた。


(ジュマ)

「おーい、いいアイデア思い付いたんだけど…」


聞いていない。


(ジュマ)

「俺、後でエミル貰っていいの?」


(パルパ)

「おけ!」


(ジュマ)

「じゃあ、拘束プレイで美味しく頂くね!まずは、つんつんペロペロも~みもみして…」


 エミルがターゲットを変えた。


(ジュマ)

「おまえら止める為にやったのに、アイデア飛んだらどうするんだよ!」


(エミル)

「前世の記憶まで飛ばしてやろうか?」



 この時のアイデアを実現するべく、何度も試行錯誤をくりかえし、ジュマを呼び出して最後の調整とテストを行い、成功した時の歓声こそ、先の興奮した歓声なのであった。


 但し、この時2人が作り出した動力は、時代を飛び越えたとんでもないものであった事はお察しである。

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