第20話『ルビアが見たもの』
私は「理不尽の理」のパルパ様にお仕えするメイドのルビアと申します。先日まで、ペレス王城でメイドをしておりましたが、パルパ様に気に入って頂けたようで、自ら王様に掛け合って下さり、破格の条件で雇って頂く事になりました。
私には、長患いの母がいるのですが、お医者様と処方して頂くお薬は決して安くなく、給金の殆どを費やしていました。
パルパ様は、私を雇うに伴い、私を案じて色々と聞いて下さったのですが、そんな母の事をお話ししたところ、すぐに案内するように仰られ、たちどころに母を治してしまわれました。王様のお客様の魔法使いと伺っていましたが、魔法の達人であられたようです。
母の血色の良い顔に涙を堪えきれず、はしたなくもパルパ様の前で大声で叫びながら母と抱き合いました。
その声を聞いたご近所の方々が、母を案じて駆けつけて下さり、元気になった母を見て共に喜んで下さいました。
パルパ様はそんな私たちの事を優しい顔で静かに見ておられました。私がパルパ様に治して頂いた事をお話しすると、みんなは大変驚かれていました。そんな中に、母と同じく長患いをしている娘がいる方がいたのですが、パルパ様はその方の様子が気になられたようで、声をかけて病気の娘がいる話を聞き出されました。
そして、その方の家へと赴き、娘さんもたちどころに治してしまったのです。
喜びながらも治療代を心配しますと「そんなもの要らない」と仰られ、他に病気や怪我で辛い思いをしている者がいれば案内するようにと続けられました。
その日、目の前で次々に人々を救っていかれるパルパ様の姿は、私の目に焼き付き、生涯忘れることはないでしょう。
お礼を申し出た方もいたのですが、受け取らず、皆で分けて栄養を取るようにと食材まで出して下さいました。
その日、私は久しぶりに母と同じベッドで眠りました。パルパ様が「明日また迎えに来るから、今夜はお母さんとゆっくり過ごすといい」と、母との時間を下さったのです。
私は、パルパ様の為に出来る限りの事をしていこうと心に決めました。そ、その、まだ経験がないので少し怖いですが、パルパ様が求められるのであれば、喜んで夜も…。
叶わぬ事だとは分かっているつもりですが、パルパ様の妻となれたら、どんなに幸せでしょう。
私は今、ヨアナ湖にある理不尽の理の皆様の別荘にいます。新しい木の香りが漂う新築の別荘には、パルパ様の大切な仲間であるジュマ様とエミル様も居られます。
皆様お酒がお好きなようで、楽しそうにお飲みになられ、恐れ多くも私にも一緒に飲むようにと勧めて下さいました。
エミル様は「パルパに嫌な事されたら私に言いなよ」と案じて下さいましたが、パルパ様になら、変な事と言うのをされてみたく思います。
皆様、お休みになられましたので、後片付けをして私も休ませて頂いています。パルパ様に御一緒出来ないのは残念ですが、私ルビアはいつでもパルパ様をお慕いして…。
パルパ様……。
あぁ…パルパさ…ま…ぁん。
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