第17話『異世界でドッキリ仕掛けてみた』
パキラとラキアの両王子が、帝国内の統治に着手した頃、大陸と海を隔てた魔国「デルスラド」は騒がしくなっていた。
理不尽の理の面々は、相変わらず別荘の建築に追われていた。職人に加工を頼んだ木材の出来たものを受け取って戻り、ジュマが組み、パルパが必要に応じて微修正していく。現場監督のエミルは、指示を出しながらサポートしていた。
しかしながら、、組み終えてしまうと、その日の作業はそれ以上進めようがなく、適当に狩りをしたり、早々に酒盛りを始めたりしていたのだが、そんな生活ルーティンにマンネリを感じてしまっていたのだ。
(パルパ)
「風竜でもしばきに行く?それとも、神になってみる?」
ジュマとエミルの耳がピクリと反応した。面白そうな気配には敏感なのだ。
(エミル)
「詳しく聞こうか」
(パルパ)
「ほら、帝国ってかなりきつい税とか取ってた上に、軍事優先しすぎてインフラろくにないとこもあるってラキアが言ってたやろ」
(ジュマ)
「そんな地に神が降臨して、魔法で井戸掘ったり、水路出現させたり、道作ったり?」
(パルパ)
「ご名答」
(エミル)
「どうせならドッキリにする?私眠らせるからその間にみたいな」
普通に支援活動出来ないのがこの面々がこの面々たる証。
こうして、理不尽の理によるドッキリ作戦が決行された。
3人は上空から見渡して、田畑がひび割れ、ボロボロの家が数件だけ、そんな村に狙いを付けた。
エミルが睡眠薬を用意し、ジュマが風魔法でそれを村に拡散させた。
(ジュマ)
「ここだけ見たらただのテロだな」
ごもっともである。
(エミル)
「なんか良い事してるって気がするわ」
(パルパ)
「偽善者!あなた偽善者って言うのね!」
(ジュマ)
「よ~く助けな、村が豊かになるまで~」
そして1時間後。
なんと言う事でしょう。ひび割れていた田には水が張られ、その水を供給する水路が出現。水門のおまけまでついているではないか。
殆ど枯れていた田畑は、エリクサーをふんだんに含んだ水が撒かれたことによって栄養豊かな土壌に変わり、まだ弱々しいながらも生命力を取り戻した作物が緑の葉を広げ始めている。
栄養失調で弱った村人は血色が良くなり、家族にも諦められた病人にも生気が宿っているではないか。
(エミル)
「こんなとこか?」
(ジュマ)
「あとは仕上げだね」
(パルパ)
「準備できたぞ」
パルパが豪快に地竜の肉を焼き、エミルが栄養たっぷりのスープを作った。そしてジュマは地下に魔法で穴を掘り、これまた魔法で凍らせた大量の氷を入れて巨大冷蔵庫を作り上げると、そこに当面の食材ストックを保存。
[ ドッキリ大成功! ]
そう書かれたこだわりの立て札を立てたら任務完了、上空へ!
パルパが状態異常回復魔法を村全体にかける。
目が覚めた村人たちの内、まずは病人がいた家から叫び声が上がり、それは泣き声へと変わった。そして、外へ出てきた者が言葉を失い、それを見た者が続けて言葉を失い、後に歓喜の声を次々に発し出した。
一方その頃理不尽の面々は、大騒ぎになった村を肴に、酒盛りを楽しんでいた。村人がいちいち驚くのを楽しそうに見ながら、美味しい酒を飲む面々。
これで終われば美談にもなろうが、残念ながら、その後酔っ払いへと退化した面々は、村の娘に点数を付けるという最低ぶりを発揮した。
ちなみに娯楽の殆どない世界の村人たちは、立て札の意味が理解できず首を傾げていた。
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