第16話『5者会談の後はいつものやつで』
ペレス国王とパキラ・ラキア両王子は、ラキシア王国にいた。ジュマを含めた5名だけの会談の為である。
ラキアが上手く両国王を引っ張りだしてくれたようだが、緊張丸出しな2人の王様を見る限り、ラキアがどう伝えたか察しがつく。
(ジュマ)
「初めてお目にかかります。ラキシア国王陛下、ペレス国王陛下、この度はわざわざこのようなお時間を頂きましてありがとうございます。私は冒険者の個人ギルド、理不尽の理のジュマと申します。後2人おりますが、今回は私が代表してお話させて頂きます」
この世界の作法を知らないジュマは、かつてアニメで見た作法を真似てみたのだが、よく考えてみたら、これが合っていても間違っていても、正す者はこの場にいなかった。
挨拶を終えたところで、ジュマは本題に入った。
(ジュマ)
「まずは、今回の帝都の一件、私たちを含めヨアナ国とは関係がありません。ラキア王子の知恵をお借りし、作戦に至らぬ点が発覚した際に、周囲に迷惑がかからない、且つ帝国を攻めるに足る理由付けが出来るという理由から、かつて帝国の侵略によって滅んだヨアナ国の名を使わせてもらったというのが真相です」
両陛下は、ラキアを見た。視線を受けたラキアは、胸に手を当てて頭を下げた。
(ジュマ)
「今回の理由については、いくつかの理由がありますが、大きなものとしては、ペレス王国との領土問題に関する事。帝国の歴史から予想できる先の侵略に関する事。そして、私たちの個人的な報復の3点です」
(ラキア)
「ジュマ殿たちは、ラキシア・ペレス両国の事を案じ、平和的な解決を望んでおられましたが、それでは解決出来ない事を悟り、やむなく決断されたのです」
両国王は、「なるほど予想できる」と言いたげに小刻みに頷いた。
ペレスは勿論、両国共に、帝国からはそれ程のちょっかいをかけられていた。
(ジュマ)
「もうご存知かとは思いますが、帝国の皇帝一族、及び要職にある者、帝国内の貴族、帝国に忠誠があると判断出来た者は全て処刑させて頂きました。こういう言い換え方はおかしいかも知れませんが、抵抗勢力の心配なく直ぐにでも干渉可能です。私は、その任をパキラ・ラキア両王子主導の元、両国が協力して当たる事で、大陸内の永い平和が期待できるのではないかと考えています」
これは、一見すると後始末の押し付けともとれるが、2人の国王にとってはまだ不安要素であるジュマたちが、もうこれ以上でしゃばるつもりはないという意思を示した提示でもある。
(パキラ)
「ジュマ殿たちは、私たち兄弟に対して、変わらぬ友情を誓ってくれました。此度の件についても、本当に良いかと迷い確認されたジュマ殿に対して首を縦に振ったのは私たち兄弟です」
両国王は、互いに確認し会うように目線を合わせると、同時に「分かった」と声を発した。
(ジュマ)
「ところで、もう一つの件なのですが、やはり気になっておられますよね?」
(ラキシア国王)
「ジュマ殿は察しが良いお方のようじゃ。そして、本性を隠すのも上手いと見える」
(ペレス国王)
「うむ、そのようだの。此度の一切、我ら両国にとって、急ではあったが一切が朗報でもあった。まずは、例を言わんといかんようだ」
両国王は立ち上がり頭を下げた。ジュマが慌てて静止したが、両国王はケジメとばかりに頭を下げた後、ニヤリと笑いながらあたまを上げた。
(ラキシア国王)
「では、お話して頂けますかな?」
(ジュマ)
「はい。地竜グラノラスですが…」
ジュマの話によって、地竜の王の一件に関しての一連が明らかにされた。
(ラキシア国王)
「やはり地竜消滅と魔物集落の消失もジュマ殿たちであったか」
(ペレス国王)
「その力、我々に向けられない事を願うばかりじゃな」
(ジュマ)
「両陛下共に名君との評判も高く、どちらの国も、町を歩けば皆が元気で笑顔が溢れていました。何よりどちらの国も酒が美味しい。私としても、それらを失いたくないですからね。…と、言うわけで…」
「ドン!」
という音と共に、ジュマは酒樽を出した。驚く両国王の横では
「そう来ると思った」
と両王子がグラスを用意してニヤニヤさていた。
(ジュマ)
「流石親友、分かってますね。では、呼びますね」
この日、理不尽の面々は、両国王とも意気投合し、国王とも変わらぬ友情を誓い合った。
呼ばれたパルパとエミルが、両国王と肩を組んで歌い踊り始めた時は流石のジュマも両王子も絶句したが、両国王共に笑いながら一緒に踊り出したあたり、4人とも大物だったと諦めるしかなかった。
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