第7話『国が動いた日』
兵士はラキシア王城の中を息を切らせながら走っていた。
「バンッ!」
謁見の間の扉が勢いよく開かれ、兵士が飛び込んできた。
「騒がしいぞ!」
側近が声を荒げる。
「申し上げます!地竜の谷から地竜が消えました!」
その場にいた者が一斉にどよめいた。地竜の谷は王都から離れた場所にあるとはいえ、万が一1頭でも王都に迷い込むようなことがあれば、1時間と待たずに王都は壊滅すると言われている。
谷から少し離れた所に大きな遺跡があるのだが、かつて1頭の地竜によって壊滅した昔のラキシア国王都跡である。
「地竜共はどこに行ったのだ?まさか…」
王都への移動を心配する声があがる。
「現在調査を急がせていますが、谷の周辺にも地竜の姿はなく、その…報告によりますと…ただ消えたと…」
王都への移動が確認されていないのは一安心だが、あまりにも不可解な出来事に何らかの前触れではないかという不安に襲われる。王は立ち上がると真剣な面持ちのまま声を張り上げ勅令を下した。
「ラキシア国国王レミテスの名において命じる!直ちに関係各所に通達!急ぎ事の次第を調査報告させよ。各ギルドにも協力を要請。騎士団は念のため各部隊を指揮し、周辺の領主軍と連携して不測に備えよ!」
王命を受け、すぐに大規模な調査隊が組織された。各研究機関からは学者が集められ、商人ギルドは調査隊への協力の為、各所へ物資と輸送手段の確保に動き。Sランク以上の冒険者たちは、直ちに現任務を中断し帰還、調査任務への同行が指示された。
一方その頃、理不尽の面々は、数を大幅に増やし、範囲を狭めて密集させる事でより凶悪化した「理不尽な杖」をもって、各地の魔物の集落を滅ぼして回っていた。
(エミル)
「よぉ~し!もう一軒行こう!」
ノリが酔っ払いのそれである。
各地の冒険者ギルドから討伐や調査を手配されていたオークやゴブリン、オーガたちの集落は、下位種から上位種、キングや変異種、ネームドに至るまで酔っ払いによって蹂躙され、集落は次々と姿を消していった。
(エミル)
「よぉ~し!もう一軒いくぞ!」
(パルパ)
「お客さん、ちょっと飲み過ぎですよ?もうそのぐらいに」
酔っ払いのノリで蹂躙を楽しんでいるが、ふざけているだけで奴らはシラフである。一瞬で集落が消し飛んでしまう為、すぐに移動となり飲み始める隙すらないのだ。
(エミル)
「見ろ!魔物がゴミのようだ!」
(ジュマ)
「素晴らしい!君は英雄だ!」
キャラ設定に変更があったようだ。
(パルパ)
「僕の設置は親方よりも早いんだ♪」
(エミル)
「40秒で支度しな!」
(パルパ)
「ママ~待って~」
(エミル)
「設置は体で覚えな!」
設置を終えると、凶悪な無数の巨大な矢が所狭しと一斉に降り注ぐ。
(ジュマ)
「ババ様、オーガ死んじゃった…」
国をあげての大騒ぎになっている事など知りもせず、例え知っていたとしてもそんな事はどこ吹く風。シラフでも手の施しようがない奴らである。
あの日、運営責任者を名乗る男性は、彼らにこう告げていた。
[ (魔物や魔族が溢れ、争いが絶えず滅びを繰り返す) 世界を (君たちの世界のように、互いを尊重し助け合える世界に) 変えて欲しい ]
男性は言葉が足りていなかった。そして理不尽の悪童たちには言葉の意図を汲む洞察力が足りていなかった。
結果、世界は手始めに地形を変える事になった。
(エミル)
「オークさん!設置完了しました!受け取りに判子お願いします」
(パルパ)
「は~い、ここで良いですか?ペッタン♪♪」
─── ズドン!ゴゴゴゴゴ───
(ジュマ)
「はぁい確かに!毎度おおきに!」
一撃壊滅の快感にはまってしまった理不尽のサイコ共は、日々更なる改良を加えながら、大陸の端から順に理不尽な判子をついてまわり始めた。そして人里離れたところを蹂躙し尽くしたサイコ共の魔の手は、徐々に王都へと近付いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます