第6話『理不尽な杖』

(ジュマ)「なぁ、この世界での狩り手段少し増やさん?」


(エミル)「それ、私も思ってた!」


 拠点完成から少し経った頃、理不尽の面々はそれぞれがレベル230になっていた。しかし、ここまでレベリングしていた方法は、対処できる相手に条件があったのだ。

例えば、遠距離攻撃をしてこない事、空を飛べない事、地形を変える程の攻撃をしてこない事といったものであるのだが、条件に合致する敵は比較的弱いものが多く、数を倒しても現在の行動範囲内でのレベルが上がり辛くなってきたのだ。


(パルパ)「何かアイデアあるの?」


(ジュマ)「うん、出来そうだなって考えてる事はあるかな」


(エミル)「聞かせてもらいましょ」


(ジュマ)「神の杖って聞いたことある?」


 神の杖というのは、某国が開発していると言われる軍事衛星からの攻撃である。簡単に説明すると、人工衛星から頑丈で重い棒を地上の目標目掛けて自由落下させる。その破壊力は凄まじいものになると言う。


(エミル)「つまり、遠距離攻撃が届かないぐらいの高度に障壁で足場作って地上爆撃って事?」


(ジュマ)「そそ。ゲームでは天井に潜ってとかしてたけど、それができんから、障壁足場で、相手の手の出しようのないとこから狙う。見てた感じそこまでの射程ある攻撃持ってる奴も確認できてないし。

でも、いつもみたいに酒盛りしてる間にってのが出来んのだわ」


(パルパ)「却下!」


(エミル)「うん、却下だね」


(ジュマ)「だよねぇ」


 理不尽のアル中共の中では、酒盛りしながら楽して狩れるかは重要な問題であるらしい。


(ジュマ)「ん?…いや、行けるかも?ちょっと、準備だけ頼まれておくれ」


 さてアル中共、今度はどんな姑息な手を思い付いたのやら。



 『ジュマ先生の蹂躙レシピ~理不尽な杖~』


<用意するもの>

・オリハルコン製バリスタ用矢じり

・鉄の棒(直径100mm×長さ3000mm)

・パルパの障壁

・エミルのマップスキル

・地図


<作り方>

①鉄の棒にインベントリ回収用の刻印をする

②鉄の棒に矢じりを取り付ける

③地図に碁盤の目を書き込む

④碁盤の目の中央部に応じて上空高高度に②を障壁を用いて固定しておく

⑤マップスキルの敵反応を確認して、地図と照らし合わせ指示を出す。

⑥指示された場所の障壁を解除で攻撃

⑦落とした矢を遠隔回収


 とりあえず100の矢を仕掛けて全ての準備を終えた。

最初は準備が面倒と文句を言っていたパルパであったが、すぐにも慣れてくるとインベントリからの取り出しと同時に障壁固定をするようになり、毎秒1本ペースで設置していた。

 このあたりは流石と言うべきだろうか。


 理不尽の連中が実験に選んだのは、ラキシア王国にある地竜の谷に棲息している地竜である。

 地竜が碁盤の目に入ったところで実戦開始である。早速エミルが指示を出す。


(エミル)「フターサンかまーえー!ぅてー!」


(ジュマ)「号令に草だわ」


(パルパ)「弾ちゃーく…いまー!」


(ジュマ)「ちょ…そんなおまえらが好きだわ」


(パルパ)「で、倒した?」


(エミル)「倒れてはないけど、瀕死、ほっといても時間の問題みた…あ、倒れた」


 矢は硬い地竜の鱗どころか、体をも貫通し地面に深く突き刺さっていた。

 ちなみに、餌を置いて1ヵ所に誘き寄せる方が簡単で楽であるにもかかわらず、何故100もの矢を広範囲に仕掛けたのか?答えは理不尽の奴らを見れば単純明快である。

 そう、奴らはただ酒盛りしながらできる方法を選択しただけなのである。


 予想以上の結果に、改善点の話は後日にまわし、酒盛りに入った理不尽の面々は、飽きもせずにしょうもない話をしながら地竜を乱獲し、この日の狩りで揃ってレベル300を達成した。


 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る