第5話『情報収集は存在を消す』

 理不尽の理の3人は、森の中にいた。森の中と言っても木々の隙間から森の外が伺え、その向こうには塀に囲まれた町らしきものが見えている。


(ジュマ)

「まずは、何をするにも情報が欲しいな」


(パルパ)

「情報収集といえば酒場と娼館だな」


 この台詞をジョークと断じられないのがパルパだ。


(ジュマ)

「酒場だけにしときや、衛生管理が行き届いてるとは思えんから、性病あるかもしれんし」


(パルパ)

「ヒール!キュア!!(ドヤ)」


 彼が何をアピールしているのかは分かっているが、そのアピールを拾ってあげると話が進まなくなる。

 こういう時、エミルのスルー能力は頼りになる。


(エミル)

「町を拠点にして、とりあえず数日生活してみるってとこかな」


(ジュマ)

「だな、さしあたってインベントリの金が使えるかを確認しよう」


 町の中に入ると、所々に露店が出ていた。近付いて、横目で買い物をする人の使う金と自分たちが持つ金が同じものであるかの確認をする。

 どうやら金銭的な問題はなさそうだ。ゲームの貨幣価値もそのままのようである。

そうなれば、3人はそれぞれが国を2つ3つ丸ごと買うほどの大金持ちである。


(パルパ)

「イージーモードだな」


(エミル)

「場合によっては家を買うか建てるかしてもいいかもね」


 続いての課題は、ギルド関係だ。ゲームと同じであるならば冒険者ギルドや鍛冶ギルドといった生業に応じたギルドが存在するはずだ。

 そこに所属するかどうかを含めて調べておきたい。


 所属しないという選択肢があるのは、ゲーム内ではそうしていたからである。彼らはギルドで依頼を受けなくても、好き勝手に討伐し素材を直接伝手に持ち込むことで、量や種類等の制限を受けることなく売買を行っていた。デメリットがないわけではないが、総じてその方が都合がよかったのだ。

 そしてそれは、この世界でも同じようだ。個人で伝手を作る方向で話はまとまった。

 国やギルド等の機関に利用されない事。このメリットは彼らのプレイスタイルにとっては他を諦めて余りある程に重要である。


 町での情報収集を始めてから1週間。理不尽の面々はゴノラル山脈を目指して町を出発した。

インベントリには、建築に必要な加工済みの材料が収納されている。


 人々を拒むゴノラル山脈と言うゲーム内での言葉の通り、ゴノラル山脈は人類未踏の地であった。

 一度訪れた場所であれば転移できる彼らにとって、人目を忍んだ最高の立地なのである。

 

 暫くはゴノラル山脈への移動、転移可能になったら建築というのを主軸に、夕方から町近くの森でのレベリング、夜は酒場という忙しい日々が続く。


 貴重な理不尽の面々の真面目な姿を今のうちに堪能…


(パルパ)「なぁ、ちょっと試したい事あるんやけど、こいつらってここ登れんよな?自動レベリングできん?」


(ジュマ)「ん?餌おいて壁で誘導して…うん、できるな」


(エミル)「串刺しに致しますか?それとも毒漬けに致しますか?あ、酸味の効いたマリネもオススメですよ」


 あぁ、こいつらが大人しくしてるはずがなかった!

 ゴノラル山脈の拠点が完成する頃、地形と物理障壁魔法とトラップスキルと餌を使い、多くの相手に有効な自動レベリング手段と大量の酒を手に入れた理不尽の連中は、毎晩酒盛りをし、揃ってレベル200を突破した。

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