第4話『BAN?いいえ、異世界行きです!』

 運営チームから責任者との面談を告げられた3人の前に大きなスクリーンが出現した。

 スクリーンには、スーツを着た若い男性が写し出されている。


[ あなた方が理不尽の理ですね? ]


 3人の反応を確認すると、男性は静かに話し始めた。


[ あなた方のこれまでの動向についての報告は受けています。なかなか面白いプレイをしておられるようで、ここだけの話、運営チームにもあなた方のファンがいるのですよ ]


 男性は、可笑しいのを堪えているかのように続けた。


[ 申し遅れました。私は運営チームの責任者…と言うのは間違いではないのですが、完全に正確でもありません。すぐに納得し難いとは思いますが、私は地球のあるこの銀河を運営するチームの責任者なのです]


 3人は狐につままれたような顔をしている。これまでのゲームプレイを考えると、通常ならばバグ利用でのBAN処置を一方的に通告されて然るべきである。それが、ファンがいると触れてからの、銀河の運営とくるのだから話が飛躍しすぎと言うものである。


(ジュマ)「それは、我々が言うところの神様という事ですか?」


[ いいえ、神様とはまた違います。例えば私たちはあなた方の人生に関与する事はありません。間接的に関与になってしまう事はありますけどね ]


 追い付かない頭の中の整理を要所優先で誤魔化しながらも対応する。


(ジュマ)「仰りたい事は何となく見えてきた気がしますが確信が…」


[ 例えばあなた方の1日は、24時間となっていますが、私たちはそれをあなた方が気付きもしないように、自然な感覚を維持したままで倍の時間をもって24時間とする事ができる…そのような感じで銀河の様々な尺度や法則を設定しバランスをとったりしていると理解して頂ければ ]


(パルパ)「物理法則を操作するって事で合ってる?」


(ジュマ)「多分合ってる。俺の理解とのすり合わせは後にして、とりあえず話を聞こうぜ」


 男性はにっこりと微笑みながら軽く頷いてから話を続けた。


[ 実はあのゲームは他の銀河の責任者からの依頼を受けて、人材を見付ける為に我々が地球の方々に合わせた形で、とある惑星をシミュレートした物です。あのゲームの中のダンジョンやレイドは、いわば試験のようなものだったとお考え下さい ]


 男性は3人が理解しているかを確かめるようにそれぞれ反応を順に確かめるように見た。


[ あのゲームの覇王の塔は、難易度をかなり上げてありまして、個々の能力の高さに加えて連携や互いの信頼関係、諦めずに研究して正解を見つけ出す力、そういったものを見る為に用意したので、攻略までに早くてもあなた方の時間で20年はかかる予定だったのですが…やり方はともかく、まさかいきなりラスボスに挑んで、初見で倒してしまうなんて… ]


  男性は怒っているでも呆れているでもなく、してやられた事を喜んでいるようにも見える。


[ 想定していた攻略ではありませんでしたが、もしかすると…あなた方は彼にとっても良い方向に裏切る結果を見せてくれそうですね ]


 男性は、そう言いながら手を顎にあて、自己解決したかのように頷くと


[ という事で、あなた方を推薦して送る事にしましょう ]


 3人は意思に関係なく決定が下った事を、理解だけはしているものの、疑問や意見の構築が追い付かずにいた。


[ あなた方には、10年間別の惑星に行って頂きます。

あっ、勿論帰ってこられますよ。

その間のあなた方に関わる全ての時間を伸ばしておきますので10年後にパソコンの前で起きる形で戻れますからご安心下さい ]


(エミル)「あ、えっとそれって断れますか?」


[ どうしてもと言うのはのであれば断って頂いても構いませんが、断らないでしょう?

今のあなた方の目を見る限りね ]


 3人は互いの様子を伺って同じ気持ちを察し、頷き合った。


(ジュマ)「いくつか確認させてもらっても?」


 それからの確認事項を簡潔にまとめると、向こうの人々のレベルは一般的な兵士で60程度。100を越えたのは歴史上6人だけ。

 理不尽の3人は、世界常識から浮かずに、且つ環境に慣れる為にも、レベル50からスタートする。


 ゲームでの職業やそのスキル、持ち物等はゲームキャラクターのものを大体引き継いで使用できるが、壁や物をすり抜ける等は物理的に不可能。

 また、蘇生魔法とアイテムは存在しない為、命は大切にする事。


 10年後、地球に戻る際には謝礼として好きなスキルとアイテムを1つずつプレゼントされる。

と、こんなところだろう。


 確認が終わったのを見定めると、男性は何やら操作するような仕草をみせた。

 すると空間の壁が徐々に光を放ち始め、スクリーンの向こうで手を振る男性に見送られるかのように、3人は眩い光に飲み込まれたのだった。

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